5. 75歳以上の医療費負担は世帯単位で決まる、その考え方とは
後期高齢者医療制度では、窓口負担割合を判定する際に、個人の収入だけでなく、同じ世帯に属する後期高齢者全員の所得を合算して判断する仕組みが採用されています。
このため、「本人の収入が少ないから負担も軽いはず」とは一概にいえない点に注意が必要です。
例えば、本人の年金収入がそれほど多くなくても、同居する配偶者などに一定以上の所得がある場合、世帯全体としては「現役並み所得者」と判定されるケースがあります。
この場合、医療機関での自己負担割合は3割となります。
判断の重要なポイントは、世帯内に課税所得が145万円以上の後期高齢者がいるかどうかです。
該当する人がいる場合、その世帯は原則として現役並み所得者と見なされ、3割負担となる可能性が高まります。
特に、夫婦の一方に収入や年金が偏っている世帯では、単身世帯と比較して世帯合算による基準額を超えやすい傾向が見られます。
個人の所得だけでなく、配偶者を含めた世帯全体の所得水準によって負担割合が決定されるという制度の仕組みを、あらかじめ理解しておくことが大切です。
6. 75歳以上で注意したい「一度増えると減りにくい」医療費の特性
6.1 医療費は増加しやすく元に戻りにくい支出
老後の支出の中でも、医療費には特有の性質があります。
それは、一度増加し始めると、以前の水準にはなかなか戻りにくいという点です。
趣味や交際費であれば調整することも可能ですが、医療費は本人の体調や治療内容に依存するため、自分の意思だけでコントロールすることが難しい支出といえます。
厚生労働省の「令和5年度 国民医療費の概況」によると、2023年時点における65歳以上の1人あたりの医療費は、年間で79万7200円にのぼります。
75歳を超えるとさらに増加傾向にあり、1人あたりの医療費は年間約95万円まで上昇しています。
6.2 加齢に伴い受診する診療科が増える傾向
75歳以降になると、一つの病気だけでなく、複数の症状や慢性的な不調を抱える人が増えていきます。
その結果、内科に加えて整形外科や眼科、歯科など、複数の診療科を並行して受診するケースも珍しくありません。
通院回数や処方される薬代が積み重なることで、医療費は一時的な出費ではなく、毎月発生する継続的な支出へと性質を変えていきます。
6.3 治療後も続く「定期的な医療費」の存在
治療が完了した後も、再発防止や経過観察を目的とした通院や検査が長期間にわたって続くことがあります。
こうした費用は突発的なものではなく、むしろ固定費に近い性質を持ち、家計に継続的な負担としてのしかかります。
6.4 自己負担割合の差が将来の支出総額に影響
医療費の支払いが長期化するほど、窓口での負担割合の違いは大きな意味を持つようになります。
1割・2割・3割という差は、1回あたりの金額では小さく感じられるかもしれませんが、長期間にわたると支払総額に大きな違いを生み出します。
負担割合が高いほど生活費への圧迫も大きくなり、結果として貯蓄を取り崩すペースにも影響をおよぼすことになります。
6.5 数年後の家計を左右する「見えにくい」医療費という要因
医療費は短期的には目立たないかもしれませんが、時間をかけて着実に家計に影響を与える支出です。
表面上は問題がないように見えても、医療費の増加が続けば、資産への影響は確実に大きくなっていきます。
老後の家計を計画する際には、現在の支出状況だけでなく、「医療費は増え続ける可能性がある」という前提に立ち、長期的な視点で備えを考えておくことが重要です。
