6月に入り、ご自宅に届いた税金の決定通知書や医療保険の更新案内を見て、「これからの生活費や医療費の負担は大丈夫だろうか」と、改めて老後のやり繰りに危機感を抱く方も多いのではないでしょうか。

総務省の消費者物価指数が高止まりを続けるなか、公的年金を中心に生活を送るシニア世帯にとって、日々の家計管理は一段と厳しさを増しています。

「これからの長いセカンドライフ、少しでも手元に残るお金を増やしたい」

そんな不安を抱えるなか、実は国や自治体が用意している制度のなかには、60歳や65歳以上の一定条件を満たした方が申請することで、まとまった現金を受け取れる給付金が複数存在することをご存じでしょうか。

しかし、これらの公的な支援には共通する最大の落とし穴があります。それは「自ら窓口へ出向いて申請、あるいは書類を郵送しないと0円のまま」という点です。

役所が親切に自動で振り込んでくれることはありません。さらに、私たちの健康を守る医療費の負担軽減ルールも、2026年中に大きな見直しの時期を迎えています。

本記事では、もらい損ねると大損してしまう5つの公的給付金について、年金・雇用保険・介護の窓口別にわかりやすく解説します。

ご自身やご家族が対象になっていないか、一緒にチェックしていきましょう。

1. 役所は自動で処理してくれない?60歳・65歳以上が対象になりやすい5つの制度

ここからは、シニア世代が対象になりやすい5つの給付を、ひとつずつ詳しく見ていきます。自分が該当しそうな制度から確認してみてください。

1.1 再就職手当

再就職手当は、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)を受け取れる人が、給付日数を多く残して安定した仕事に就いたときに支給されます。支給の残り日数が3分の2以上あれば残日数の70%、3分の1以上なら60%が、基本手当日額をもとに計算されて支払われます。

早く再就職するほど、受け取れる額が大きくなる仕組みです。60歳の定年後に再び働き始めるシニアでも、条件を満たせば対象になります。

1.2 高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で働き続ける雇用保険の加入者を支える給付です。60歳の時点と比べて、賃金が一定の割合まで下がった場合に支給されます。定年後に再雇用され、給与が大きく減ったケースなどが典型例です。

ただし、この給付は見直しが進んでおり、60歳に達した日などが2025年4月1日以降の人は、各月に支払われた賃金の10%が支給率の上限になります。2025年3月31日以前に60歳に達している人などは従来の15%上限が適用される場合もあるため、最新の支給率や条件はハローワークで確認しておきましょう。

1.3 介護保険の住宅改修費

要支援1・2、または要介護1〜5の認定を受けている方は、バリアフリー改修にかかる費用について、上限20万円まで介護保険に申請できます。自己負担割合に応じて、その7〜9割が支給されるため、実質の自己負担は2〜6万円程度に抑えられます。

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介護保険の住宅改修費

出所:厚生労働省「介護保険における住宅改修」

住宅改修費の支給を受けるには、着工前に市区町村への申請が原則です。工事を始めてしまうと給付を受けられなくなる場合があるため、まずはケアマネジャーや担当の自治体窓口に相談してから進めましょう。

例外として、「やむを得ない事情がある場合」に限っては、工事完成後に事前の提出書類(支給申請書や理由書)を提出することも可能)

1.4 年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は、所得の低い年金受給者へ、年金に上乗せして支給される給付です。老齢の場合、65歳以上であること、世帯全員の住民税が非課税であることなどが要件になります。

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年金生活者支援給付金

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金特設サイト」

2026年度は、老齢年金生活者支援給付金の基準額が月額5,620円となっています。ただし、実際の給付額は保険料を納めた期間や免除期間、前年の年金収入・その他所得などによって変わります。新たに対象となる人には請求書が届くため、内容を確認し、必要な手続きを忘れずに行いましょう。

1.5 加給年金

加給年金は、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったとき、生計を維持する65歳未満の配偶者や子がいる場合に上乗せされる制度です。いわば、家族手当のような役割を持つ年金といえます。

配偶者が対象の場合、2026年度の加給年金額は年額24万3800円で、老齢厚生年金を受ける人の生年月日に応じた特別加算が上乗せされます。特別加算を含めると、配偶者分は最大で年額約42.4万円となります。ただし、老齢厚生年金を繰下げている期間中は加給年金も受け取れないため、受給開始時期との関係に注意しましょう。

2. 見落としやすい「高額療養費制度」も要チェック

医療費が高額になったとき、自己負担に上限を設ける仕組みが高額療養費制度です。1カ月の負担が一定額を超えると、超過分があとから払い戻されます。70歳以上では、所得区分に応じて外来の自己負担上限などが設けられており、医療機関にかかる機会が増えても家計への負担を抑えやすい仕組みになっています。

一方で、制度の見直しも進んでいます。2026年8月からは、月ごとの自己負担限度額の見直しに加え、長く治療が続く人に配慮するための年間上限が新設されます。

高額療養費の年間上限の新設5/5

高額療養費の年間上限の新設

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

所得や年齢によって影響は異なるため、加入している健康保険からの通知や厚生労働省など公的機関の案内で、自分の区分を確認しておきましょう

3. 申請期限切れで後悔しないために。年に一度の書類総点検と、働き方が変わる家族への声かけを

6月は、住民税の決定通知書や年金額改定通知書など、お金に関する重要な書類が一斉に届くタイミングです。

つい「よくわからないから後で読もう」と引き出しの奥にしまい込んでしまいがちですが、そのわずかな開封の手間を惜しむことが、結果として生涯で数十万円単位の「もらい損ね」という最も大きな損失に繋がってしまいます。

今回ご紹介した各給付金や医療費の減免ルールは、複雑でわかりにくいからこそ、当事者であるシニア層が見落としてしまいがちな制度ばかりです。

国や役所は自動的に振り込んでくれないため、手続きを後回しにしていると受給権利を逃してしまうリスクがあります。

冷房代など夏の出費が本格化する前に、まずは申請漏れがないか確認し合う時間を作ってみてください。

また、まもなく定年を迎えるご友人や、離れて暮らす親御さんなど、周囲に「もらえるはずなのに手続きをしていない人」がいないか、この機会にぜひ一度声をかけて一緒に確認してみてはいかがでしょうか。

参考資料

柴田 充輝