2026年度の年金額改定にともない、6月15日の振込分から障害年金の支給額が変わります。障害年金をもらっている方で、そろそろ65歳を迎えるという方は、今年度の支給額をチェックすると同時に「老齢年金(国から一律でもらえる年金や、現役時代に会社員として納めてきた年金)」との選び方にも注目しておく必要があります。
この記事では、2026年度の最新の障害年金額と、65歳以降に必要となる「障害年金と老齢年金の選び方」について分かりやすく解説します。
1. 【障害年金】2026年度は1.9%引上げ「障害基礎年金1級105.9万円、2級84.7万円」
2026年度(令和8年度)は、物価や賃金の上昇を反映して障害基礎年金が前年度から1.9%引き上げられて次の通りとなります。
- 障害基礎年金1級:105万9125円 (月8万8260円)
- 障害基礎年金2級:84万7300円 (月7万608円)
障害厚生年金の報酬比例部分(加算部分を除く基本部分)は2.0%の引き上げとなります。
新しい年金額は2026年4月分から適用され、実際の振込みは6月15日です。なお、要件を満たす家族などがいる場合、障害基礎年金に加算される「子の加算額」と障害厚生年金に加算される「配偶者の加給年金額」は次の通りです。
- 子の加算額(1人目・2人目):24万3800円
- 子の加算額(3人目以降):8万1300円
- 配偶者の加給年金額:24万3800円
2. 【65歳からの特例】障害年金と老齢年金の組み合わせ3つの併給パターンをみる
公的年金には「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があり、原則として支給事由の異なる年金は1つしか受給できません。これが「1人1年金」の原則です。複数の年金受給権を有する場合はどちらか一方を選択して受給する一方、選択しなかった年金は支給停止となります。
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 遺族基礎年金+遺族厚生年金
しかし、65歳以降はこの原則に特例が設けられており、支給事由の異なる年金を同時に受給(併給)できるようになります。ただし、障害年金と老齢年金の両方の受給権を持つ場合、65歳以降は次の3パターンから1つを選択しなければなりません。
- 障害基礎年金+障害厚生年金
- 老齢基礎年金+老齢厚生年金
- 障害基礎年金+老齢厚生年金
65歳の老齢年金手続き時に、「年金受給選択申出書」を年金事務所に提出することで、年金の組み合わせを決定します。また、組み合わせ決定後も、新たに選択申出書を提出して受給パターンの変更は可能です。選択申出書の提出翌月から組み合わせが変更されます。
ここまで、2026年度の障害年金額や「1人1年金」の原則、65歳以降の特例について解説しました。次章では、年金選択で「損しないための判断基準」とケース別の有利な選択方法を紹介します。
3. 【65歳からの年金選択】税金や加算を含めた3つの選択基準をみる
65歳以降の年金選択でスムーズに判断するためには、額面の年金額だけで判断しないことです。税金や加算を含めた3つの視点から総合的に判断することが重要です。
3.1 選択基準①:額面の年金額
最初に確認するのが、各パターン(障害基礎年金+障害厚生年金、老齢基礎年金+老齢厚生年金、障害基礎年金+老齢厚生年金)の年金総額です。年金総額の多いパターンを選択するのが一般的です。
重要な選択となるため、各年金額については年金事務所で確認することをおすすめします。なお、老齢厚生年金額については、企業年金連合会などから支給される「厚生年金基金(企業年金)」を加算することに注意しましょう。
3.2 選択基準②:年金に対する課税
額面の年金額を確認したら、次に年金に対する課税について確認しましょう。障害年金は非課税であるのに対し老齢年金は課税対象となるため、老齢年金の手取り収入は額面の年金額から減ることもあるからです。
老齢年金にかかる税額については、公的年金等控除(65歳以上110万円)や基礎控除(所得135万円以下は95万円)、所得税の各種控除、その他の所得などを考慮して概算します。
また、老齢年金を選択した場合、所得が増えることにより国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)や介護保険料などが高くなり、手取り額が減ることもあります。
3.3 選択基準③:配偶者や子の加算の有無
所定の要件を満たす配偶者や子どもがいる場合、障害年金や老齢厚生年金の基本額に加算があります。以下に注意して、加算を含めた手取りの受給総額を確認して最適な選択をしましょう。
- 子どもに対する加算は、老齢厚生年金や障害基礎年金に加算される(金額は同額)
- 配偶者に対する加算額は、老齢厚生年金は42万3700円、障害厚生年金は24万3800円
4. 【65歳からの年金選択】ケース別の有利な選択方法
これまでの働き方や今の収入状況によって、どのパターンが選びやすいかの目安を見ていきましょう。
4.1 厚生年金の加入期間がないケース
厚生年金に加入したことがない場合、障害基礎年金か老齢基礎年金のどちらかを選択することになります。
年金の未納期間や免除期間がある場合、老齢基礎年金より障害基礎年金の方が受給額が大きくなります。ただし、付加年金などが上乗せされている場合には、老齢基礎年金の方が多くなるケースもあります。
障害基礎年金と老齢基礎年金が同額の場合、非課税の障害基礎年金を選ぶのが一般的です。
4.2 厚生年金の加入期間が長いケース
厚生年金の加入期間が長い場合、老齢基礎年金の方が高額になる可能性があります。障害厚生年金は「障害認定日まで」の加入実績を基に年金額を計算するのに対し、老齢厚生年金は「65歳まで」の加入実績で計算するためです。
障害認定日以降の厚生年金期間は、老齢厚生年金にしか反映しません。ただし、計算基礎となる厚生年金加入期間が同じで、障害等級1級(受給額は2級の1.25倍)の場合は障害厚生年金の方が年金額は大きくなります。
4.3 年金以外の収入が多いケース
給与所得や事業所得などがある場合、老齢年金を受給することで課税所得が高くなる可能性があります。老齢年金の方が受給額が多い場合でも、その他所得を含めた税金や社会保険料の負担を考慮して、障害年金の選択が有利になることもあるでしょう。
5. おわりに
2026年度の障害基礎年金は、1級が105万9125円 (月8万8260円)、2級が84万7300円 (月7万608円)に改定されました。障害厚生年金の報酬比例部分は2.0%の引き上げです。
65歳以降に障害年金と老齢年金の両方の受給権がある場合、最適な選択は年金加入歴や家族構成、課税状況によって異なります。額面の金額だけでなく、非課税メリットや加算の有無など含めて総合的に判断することが大切です。
年金事務所で正確な金額を確認した上で手続きすることをおすすめします。
参考資料
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「年金の併給または選択」
- 日本年金機構「2つ以上の年金を受ける権利ができたとき」
- 日本年金機構「厚生年金基金加入期間がある方の年金」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 国税庁「基礎控除」
西岡 秀泰