3. PBR1倍割れの正体は「ROE」にあり
こうした厳しい業績見通しを受けて、トヨタ自動車の株価は下落し、株式市場で一つの異常事態と受け止められる現象が起きました。それが「PBR(株価純資産倍率)の1倍割れ」です。
PBRが1倍を割るということは、極端に言えば「会社が事業を続けるよりも、今すぐ会社を解散して資産を株主に分けた方が価値が高い」と市場から評価されている状態を意味します。
日本を代表する企業でなぜこのようなことが起こるのでしょうか。
3.1 投資家が意識する「8%」のボーダーライン
泉田氏はこの謎を解く鍵として「ROE(自己資本利益率)」という指標に注目します。ROEは、株主から集めた資本(純資産)を使って、企業がどれだけ効率的に利益を稼いでいるかを示す指標です。
終わった期(2026年3月期)の実績では、トヨタのROEは10.1%でした。
しかし、今期(2027年3月期)の最終利益予想である3兆円を、前期末の株主資本(資本合計ベース・約41兆円)で割り戻して泉田氏が概算すると、今期の予想ROEは約7.3%にまで低下してしまいます。
ここで泉田氏が指摘するのが、機関投資家が重視する「8%」という基準です。これは経済産業省が公表した「伊藤レポート」などで提唱され、日本企業が最低限目指すべき資本効率のボーダーラインとされています。
「8%あってPBR1倍でいいよねみたいな感覚もあるんですよ。ってなると、やっぱ8%以下になってくると1倍割れしてもしょうがないみたいな、そんな期待値になります」
つまり、市場は単に利益の額が減ったことだけでなく、稼ぐ「効率」が投資家の求める最低水準(8%)を下回る見通しになったことを重く見て、株価を純資産以下の価値(PBR1倍割れ)にまで売り込んでいるのです。
