老後の生活設計を考えるうえで、多くの人が気になるのが「実際に年金はいくら受け取れるのか」という点ではないでしょうか。

近年は物価上昇が続き、年金生活に不安を感じるシニア世代も少なくない状況です。

中本 智恵

銀行員時代、窓口では、「自分の年金が平均と比べてどうなのか」「本当にこの金額で生活していけるのか」という不安の声を数多くいただいてきました。物価上昇が続くいま、年金額だけでなく、実際の家計収支やシニア世代のリアルな声もあわせて確認しておくことが、老後の備えを考えるうえで欠かせないと感じています。特に単身世帯やこれから年金を受け取り始める世代にとっては、平均額だけでなく、実際にどのくらいの人がどの程度の年金を受け取っているのかを具体的に知っておくことが、将来への備えを考える手がかりになります。

本記事では、国民年金と厚生年金の違いや2026年度の年金額を確認するとともに、厚生年金を月15万円以上受け取っている人の割合や、シニア世代の生活実態に関する調査結果をもとに、現在の年金事情を見ていきます。

1. この記事の3つのポイント

  •  2026年度は国民年金1.9%・厚生年金2.0%の引き上げも、国民年金は満額でも月7万円程度
  •  厚生年金で月15万円以上受け取っている人は全体の49.8%で、半数には届かない
  •  シニア世代の多く、特に単身世帯は「年金だけでは生活費を賄えない」と感じている

2. 公的年金の2つの制度(国民年金・厚生年金)を確認

日本の公的年金制度は、土台となる「国民年金(基礎年金)」と、それに上乗せされる「厚生年金」の2つで構成されています。

この仕組みは「2階建て」と表現されることが一般的です。

まずは、それぞれの制度の特徴を整理してみましょう。

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厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

【1階部分】国民年金(基礎年金)

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円

【2階部分】厚生年金

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなど、特定適用事業所(※3)で働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金に加えて加入する制度です。

国民年金と厚生年金では、加入対象や保険料の仕組み、受給額の計算方法が異なるため、老後に受け取る年金額にも差が生じます。

また、公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金の変化を踏まえて毎年度改定される仕組みとなっています。

※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

中本 智恵

シニア世代からも「厚生年金と国民年金の違いがよく分からない」というご質問はよくあります。ご自身がどちらの制度に、どのくらいの期間加入してきたかによって将来の受給額は大きく変わるため、まずは自分がどちらに該当するのかを正しく理解しておくことが、老後の資金計画の第一歩になります。特に転職や退職を経験されている方は、厚生年金への加入期間が途中で途切れている場合があり、ご自身が思っているよりも受給額が少なくなっているケースも見受けられます。

3. 【厚生年金・国民年金】2026年度の年金支給額の目安を見る

公的年金は毎年度見直しが行われており、2026年1月23日に厚生労働省が2026年度(令和8年度)の年金額を公表しました。

4月分から適用される改定率は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなっています。

2026年度(4月分以降)の年金額は次のとおりです。

  • 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1
  • 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。

国民年金だけを受給する場合、40年間すべて保険料を納付して満額(※3)となっても、受給額は月およそ7万円です。

さらに、75歳まで受給開始を遅らせる「繰下げ受給」(※4)を利用しても、受給額は月13万円には届きません。

※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。

なお、これらはあくまでもモデルケースです。

実際の受給額は、現役時代の収入や加入期間などによって異なるため、「ねんきんネット」などで自身の見込み額を確認しておくことが重要です。

中本 智恵

モデルケースの金額はあくまで平均的な条件をもとにした一例です。ご自身の年金見込み額は、毎年届く「ねんきん定期便」や、ねんきんネットで確認できます。特に厚生年金は加入期間や収入によって差が大きいため、早いうちに一度目を通しておくことをおすすめします。また、繰下げ受給を利用すれば受給額を増やすことができますが、受け取り始める年齢が遅くなる分、健康状態や生活資金とのバランスも踏まえて判断する必要があります。