日本を代表するメガバンクとして、巨大な金融ネットワークを構築している三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)。

株式市場においては、足元でAI銘柄や半導体関連銘柄が総崩れとなる調整局面を迎える中、同社の株価はTOPIX(東証株価指数)を大きく上回る右肩上がりの上昇トレンドを形成しています。

一般的に、金利が上昇すると株式市場全体には逆風になると言われていますが、なぜMUFGの株価はこれほどまでに力強い動きを見せているのでしょうか。

この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏がMUFGの最新決算を読み解き、株価の動きと会社からのメッセージを解説します。

この記事のポイント

  • AI・半導体株が苦戦する中、MUFGの株価は金利上昇を追い風に上昇トレンドを形成
  • 貸出金利と預金金利の差(スプレッド)の拡大が銀行の収益を押し上げる最大の要因
  • 2026年3月期決算は当期純利益2兆4,272億円(前期比+30.3%)の大幅な増益を達成
  • 国内の中堅中小企業向け貸出利ざやがじりじりと上昇し、業績に大きく貢献している
  • 金利上昇は追い風だが、上がりすぎによる不良債権リスクや利下げ局面には注意が必要

1. 半導体・AI株が下落する中、なぜMUFGの株価は強いのか

株式投資において、特定の銘柄が市場全体の動きと異なる値動きをする場合、そこには必ず構造的な理由が存在します。まずは、MUFGの直近の株価推移を確認してみましょう。

MUFGの直近の株価推移1/4

MUFGの直近の株価推移

出所:TradingView(三菱UFJフィナンシャル・グループ 8306 週足チャート)

2016年からのMUFGの株価チャートとTOPIXの比較を見ながら、「足元でAI銘柄や半導体銘柄が総崩れする中でも、銀行株は折れずに右肩上がりになっている」という指摘に対し、泉田氏は銀行株の特性について次のように解説を始めました。

「銀行って基本的に時価総額も大きいですし、TOPIXの中の代表的な銘柄なんで基本連動はしてますけれども、特にこの辺から急にパフォーマンスが良くなってる気はしますね」

泉田氏が指摘するように、長らくTOPIXと同水準の動きをしていたMUFGの株価は、直近になって明確に市場平均をアウトパフォーム(上回るパフォーマンスを出すこと)し始めています。

これまで株式市場を牽引してきたハイテク株が金利上昇への警戒感から売られる中、なぜ銀行株だけが独自の強さを発揮しているのでしょうか。

その答えは、銀行というビジネスモデルそのものと、現在のマクロ経済環境(金利の動向)の組み合わせにあります。

2. 銀行の儲けの仕組み「スプレッド」とは何か

MUFGの株価が上昇している理由を理解するためには、銀行がどのようにして利益を生み出しているのか、その基本的な構造を知る必要があります。

泉田氏は、銀行のビジネスモデルを極めてシンプルに表現します。

「一言で言っちゃうと金利。もっと言うと貸し出し金利と預金金利の差、このスプレッド。これが大きければ大きいほど儲かります」

銀行の主な業務は、一般の個人や企業からお金を預かり(預金)、その資金を資金が必要な企業や個人に貸し出す(融資)ことです。

この時、預金者に対して支払う金利(預金金利)よりも、貸し出し先から受け取る金利(貸出金利)を高く設定することで、その「差額」が銀行の利益となります。この差額のことを金融用語で「スプレッド(利ざや)」と呼びます。

銀行の儲けの仕組み「スプレッド」2/4

銀行の儲けの仕組み「スプレッド」

出所:イズミダイズム作成

現在、日本銀行の政策変更に伴い、国内の金利は上昇局面にあります。金利が上がると、銀行のビジネスにはどのような影響があるのでしょうか。泉田氏は、資金の調達側と貸し出し側の両面からそのメカニズムを紐解きます。

「資金調達コストって言うんだけど、みんなの預金金利ももちろん上がるんだけど、そこまで上がってないじゃない。そうするとスプレッドって言うんだけど、鞘は拡大してるから、基本的に金利が上がる時には銀行儲かるんだよね」

金利が上昇する環境下では、住宅ローンや企業向けの貸出金利は比較的早く引き上げられます。

一方で、私たちが銀行にお金を預けている普通預金の金利は、上がったとはいえ依然として非常に低い水準に留まっています。結果として、銀行が受け取る利息と支払う利息の差(スプレッド)が大きく広がり、利益が急増する構造になっているのです。

「今までずっとゼロ金利だから銀行株ってあんまり注目されなかったんだけど、この金利上昇局面、金利が低いところから上がる時に銀行株のパフォーマンスっていうのはすごい良くなる。そういうもの」(泉田氏)

つまり、ハイテク株にとって逆風となる「金利上昇」が、銀行にとっては直接的な「増益要因」となるため、市場の資金が銀行株へと向かっているのです。

3. 2026年3月期決算ハイライト:純利益は驚異の2.4兆円超

金利上昇の恩恵は、実際の決算数値にどれほど表れているのでしょうか。泉田氏は、MUFGが発表した2026年3月期(2025年度)の決算短信を基に、その驚異的な業績を解説します。

決算短信によると、MUFGの「経常収益(一般企業の売上高に相当)」は14兆6,208億円(前期比+7.3%)に達しました。

さらに本業の儲けを示す「経常利益」は3兆4,102億円で前期比+27.7%、最終的な利益である「親会社株主に帰属する当期純利益」は2兆4,272億円となり、前期比で+30.3%という大幅な増収増益を達成しています。

当期純利益 増減ウォーターフォール3/4

当期純利益 増減ウォーターフォール

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度 決算説明会資料」(2026年5月15日)p.5

泉田氏はこの大幅増益の要因について、決算説明会資料の「ウォーターフォールチャート(増減の要因を滝のように階段状で示したグラフ)」を用いて分析します。

前期の純利益約1兆8,600億円から、当期の約2兆4,200億円へと利益が押し上げられた背景には、複数の要因があります。

一つは、本業である顧客部門の利益が順調に伸びたこと(+2,500億円)です。これに加えて泉田氏が注目するのが、「持分法投資損益」という項目の大きなプラス(+2,100億円)です。

MUFGは、リーマンショック時にアメリカの大手投資銀行であるモルガン・スタンレーに出資し、現在も持分法適用関連会社としています。

このモルガン・スタンレーの業績好調による利益の取り込みが、MUFG全体の純利益を大きく押し上げる要因となっているのです。

さらに泉田氏は、銀行ならではの「次期業績予想」の出し方についても言及します。通常の企業であれば、来期の売上高や営業利益、純利益などを詳細な表形式で発表しますが、MUFGの決算短信には次のように記載されていました。

「今年の予想、会社の予想どうなっているかっていうところなんですけども、これ超シンプルであるんですが、この1行ですね。『27年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は2.7兆円を目標としております』っていうので」(泉田氏)

終わった期の2.4兆円という莫大な利益から、さらに来期は2.7兆円を目指すという力強いメッセージが、たった1行でシンプルに提示されている点に、現在の事業環境に対する銀行側の自信が窺えます。

4. 国内の「預貸金利回り」が示す業績好調の裏側

MUFGの業績好調を支える「スプレッド(利ざや)の拡大」は、実際のデータとしてどのように表れているのでしょうか。

泉田氏は、決算説明会資料の中から「国内預貸金利回りの推移」というグラフを取り上げ、具体的な数値をもとに解説を進めます。

国内預貸金利回りの推移4/4

国内預貸金利回りの推移

出所:三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度 決算ハイライト資料」(2026年5月15日)p.15

資料によると、MUFGの国内における「貸出金利回り(企業などに貸し出す際の金利)」は、過去の約1.0%から直近では約1.3%台へと明確な上昇トレンドを描いています。

一方で、資金の調達コストである「預金等利回り(預金者に支払う金利)」は、約0.26%という極めて低い水準でほぼ横ばい(わずかな上昇)に留まっています。

この「貸し出しの金利は上がるが、預金の金利は上がらない」という状況が、まさに先ほど泉田氏が解説した「スプレッドの拡大」をデータで裏付けているのです。

さらに泉田氏は、国内の法人向け貸出における「利ざや」の内訳にも注目します。

大企業向けの貸出利ざやはほぼ横ばいで推移しているのに対し、中堅・中小企業向けの貸出利ざやはじりじりと右肩上がりに上昇していることが資料から読み取れます。

「(以前は)高い金利を銀行が要求できなかったっていうところはあると思うんですけども、それがもう大企業も中小企業も変わらなくなってきてるというのがこの国内の状況かな」(泉田氏)

これまで金利交渉力が弱かったとされる中堅・中小企業に対しても、適切な金利水準への引き上げが進んでおり、これが銀行全体の収益性を底上げしていることがわかります。

一方で、MUFGはグローバルに事業を展開しており、インドネシアやタイなどにも銀行を保有しています。しかし、海外の貸出金利回り差のグラフを見ると、赤い線は横ばいで推移しています。

「海外の貸出金の利ざやも横ばいなので、どっちかというと今変化が起きてるのは日本っていうことになりますね」(泉田氏)

長らくゼロ金利政策が続いていた日本国内において、ついに「金利のある世界」が復活しつつあること。この大きなマクロ環境の変化こそが、MUFGの業績と株価を力強く押し上げている最大の原動力なのです。

5. 投資家が知っておくべき今後のリスクとまとめ

ここまで見てきたように、金利上昇局面において銀行株は非常に強い味方となります。

しかし、元機関投資家である泉田氏は、手放しで楽観視するのではなく、プロの視点から今後のリスク要因についても警鐘を鳴らします。

「金利が上がれば上がるほど儲かるんだけど、上がりすぎちゃうと企業の資金繰りって行き詰まっちゃって、本当に景気を冷ましちゃうんで。今度不良債権とか貸倒先みたいな話が出てきちゃうので」(泉田氏)

適度な金利上昇は銀行の利ざやを拡大させますが、金利が急激に上がりすぎた場合、お金を借りている企業の利払い負担が限界を超えてしまいます。

その結果、企業が倒産して貸したお金が返ってこなくなる「不良債権リスク」が高まるのです。そうなれば、銀行は多額の損失を計上することになり、株価にとっても大きなマイナス要因となります。

また、逆に景気が悪化して中央銀行が「利下げ(金利を引き下げること)」に転じた場合、これまで恩恵を受けていたスプレッドが縮小するため、銀行株にとっては逆風となります。

利下げ局面は一般的にハイテク株などにはプラスに働きますが、銀行にとっては厳しい環境となるのです。

とはいえ、現在の日本の状況を俯瞰すると、長きにわたるゼロ金利からようやく抜け出し始めた初期段階にあります。

MUFGの決算から読み解けるのは、「お金を預かり、金利を乗せて貸し出す」という銀行の伝統的なビジネスモデルが、金利上昇という追い風を受けて再び強力な利益創出エンジンとして機能し始めているという事実です。

株式市場で半導体やAI関連銘柄が調整色を強める中、金利上昇を味方につけることができる銀行株は、投資家のポートフォリオ(資産配分)において重要な役割を果たすかもしれません。

MUFGの今後の業績動向、そして日本銀行の金利政策の行方に、引き続き注目が集まります。

参考資料

  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ「2026年3月期 決算短信」(2026年5月15日)
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度 決算説明会資料」(2026年5月15日)
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度 決算ハイライト資料」(2026年5月15日)
  • Youtubeチャンネル「イズミダイズム」