秋も深まり、肌寒くなるこの季節。年金収入で暮らす高齢者にとって、毎月の介護保険料は見過ごせない負担のひとつです。
厚生労働省の調査によると、第9期(2024年~2026年度)の65歳以上の介護保険料の全国平均は「月額6225円」。
この数字の背後には、少子高齢化の進行と介護サービスの需要拡大があります。
「年金だけで生活しているのに、保険料が高い」と感じる人も少なくありません。
本記事では、介護保険料の仕組みや地域差、負担が増える理由、そして軽減のための制度までをわかりやすく解説します。
1. 介護保険料の全国平均は?
現在の介護保険料(第9期:2024~2026年度)の全国平均は、前期よりも211円増の「月額6225円」となりました。
介護保険料は、3年ごとに見直される仕組みです。
見直しの背景には、高齢化の進展と介護サービスの需要増があります。
65歳以上の高齢者人口は増え続けており要介護・要支援認定者の数も年々増加。これにより、介護サービスにかかる費用(介護給付費)が膨らみ、結果的に保険料の引き上げにつながっています。
一方で、全国平均6225円といっても、実際には地域や所得区分によって負担額は異なります。
たとえば、所得の低い人は軽減措置が適用される場合もあり、一律ではありません。平均値はあくまで「65歳以上全体の目安」であり、実際の負担額は世帯の所得状況や居住地によってかなり差がある点に注意が必要です。
2. 自治体によって2倍以上の差がある
介護保険料は、全国共通の金額ではなく、各市区町村が独自に設定しています。
そのため、地域によっては2倍以上の開きがあるのが現実です。
以下は現在(9期)の介護保険料基準額が低い/高い自治体の上位を紹介したものです。
2.1 低額保険者(第9期基準額/月額)
- 東京都 小笠原村 3374円
- 北海道 音威子府村 3600円
- 群馬県 草津町 3600円
- 宮城県 大河原町 4000円
- 北海道 根室市 4300円
- 北海道 深川市 4300円
- 北海道 登別市 4300円
- 埼玉県 鳩山町 4300円
- 千葉県 栄町 4300円
- 北海道 広尾町 4400円
- 高知県 津野町 4450円
- 北海道 芦別市 4500円
- 北海道 奥尻町 4500円
- 北海道 置戸町 4500円
- 北海道 佐呂間町 4500円
- 山形県 大江町 4500円
- 岐阜県 八百津町 4500円
- 北海道 室蘭市 4584円
- 北海道 沼田町 4600円
- 北海道 様似町 4600円
- 秋田県 大潟村 4600円
- 茨城県 結城市 4600円
- 愛知県 美浜町 4600円
- 宮崎県 五ヶ瀬町 4600円
2.2 高額保険者(第9期基準額/月額)
- 大阪府 大阪市 9249円
- 大阪府 守口市 8970円
- 大阪府 門真市 8749円
- 岩手県 西和賀町 8100円
- 青森県 七戸町 7900円
- 東京都 檜原村 7900円
- 大阪府 松原市 7900円
- 青森県 東北町 7880円
- 青森県 東通村 7800円
- 秋田県 藤里町 7800円
- 千葉県 鋸南町 7800円
- 東京都 青ヶ島村 7800円
- 奈良県 天川村 7800円
- 和歌山県 御坊市 7800円
- 高知県 芸西村 7800円
- 青森県 六ヶ所村 7700円
- 福島県 三島町 7700円
- 福島県 双葉町 7633円
- 群馬県 川場村 7600円
- 三重県 大台町 7600円
最も高い自治体では月額9000円を超える一方、最も低い自治体では3000円台前半にとどまります。
同じ制度でありながら、地域によってここまで差が生じるのは、主に以下のような理由によります。
2.3 高齢化率の違い
高齢者の割合が高い地域では、介護サービスの利用者が多く、給付費が膨らみやすくなります。結果として、保険料も高く設定されやすい傾向にあります。
特に、地方の小規模自治体では、若年層の流出により高齢化が加速しており、支え手が少なくなる分、1人あたりの負担が増える構造になっています。
2.4 介護サービスの供給体制の違い
介護施設や事業所の整備状況も地域差を生みます。
都市部は事業者が多く競争原理が働きやすいのに対し、地方はサービスの確保自体が難しいため、コストが高くつく傾向があります。
2.5 自治体財政の健全度
自治体によっては、介護保険事業特別会計への繰り入れ(一般財源からの補助)が十分に行えず、その分を保険料に上乗せして賄うケースもあります。
つまり、地域の財政力によっても介護保険料の高低が左右されるのです。
このように、介護保険料の地域差は単なる「格差」ではなく、地域の人口構造・財政状況・サービス体制が複雑に絡み合った結果といえます。
今後も地方では上昇傾向が続くとみられ、自治体間の差はさらに拡大する可能性があります。
3. 年金からの天引きで実感しにくい「負担感」
65歳以上の多くの人は、介護保険料が年金から自動的に天引きされています。
具体的には、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金など)を受け取る際に、介護保険料や国民健康保険料などが差し引かれたうえで「手取り額」として振り込まれます。
この仕組みは便利な反面、実際に自分がいくら介護保険料を支払っているのかを把握しにくいという問題があります。
介護保険料は、所得に応じて標準13段階に区分されています。ただし、具体的な段階数や各段階の保険料額は、お住まいの市区町村によって異なります。
収入の少ない人には軽減措置が設けられていますが、年金収入が少ない高齢者にとっては月数千円でも大きな出費です。
たとえば、月6000円の介護保険料は、年間にすると7万円を超えます。
年金が月10万円前後の人にとっては、可処分所得の約6%にあたる計算になり、生活費への影響は小さくありません。
特に単身世帯や低年金の人では、家計全体に占める固定費の割合が高く、「じわじわと生活を圧迫する負担」として感じられています。
また、所得が低いほど「食費・光熱費などの変動費を削って調整する余地」が限られているため、社会保険料の上昇がそのまま家計の圧迫につながります。
「毎月の年金振込額が少しずつ減っている気がする」「でも理由がよく分からない」と感じている高齢者も少なくありません。このような状況が続くと、介護サービスの利用控えや健康面への悪影響が懸念されることから、社会的な支援の充実が求められています。
介護保険料は、年金天引き(特別徴収)の場合でも、「介護保険料額決定通知書」により毎年通知されています。
手元の通知書を確認し、前年からどの程度変化しているのかをチェックしておくことが、家計を守る第一歩といえるでしょう。
4. なぜ介護保険料は上がり続けるのか
介護保険料の上昇は、単なる値上げではなく、社会構造そのものの変化が背景にあります。主な要因は3つあります。
4.1 高齢化の進行による介護サービス利用者の増加
日本では、75歳以上の後期高齢者人口が急増しており、介護が必要な人の割合も高まっています。
令和4年度の介護サービス利用者は2000年の制度開始時と比べて約3.3倍に増加。
利用者の増加に伴い、介護サービス全体にかかる費用(介護給付費)が膨らみ、その財源を支えるために保険料も上がっています。
4.2 介護職員の人件費上昇
慢性的な人手不足が続く介護現場では、職員の確保・定着が大きな課題です。
国は「介護職員処遇改善加算」などの制度を設け、賃金引き上げを後押ししており、その通り少しずつではありますが介護職員の賃金は上がっています。
しかし、その原資の一部は介護保険財政から賄われています。
つまり、介護サービスの質を維持・向上するための費用が、保険料にも反映されているのです。
4.3 介護施設や在宅支援の整備拡充
地域包括ケアの推進により、在宅介護を支える訪問介護・デイサービスなどの整備が全国で進んでいます。
施設やサービス拡充に伴う運営費・建設費なども介護保険制度の支出に含まれ、結果的に保険料上昇の要因となっています。
このように、介護保険料の上昇は「介護を支える社会のコスト」が増していることを示しています。
今後も高齢化の進展が続く中で、保険料負担をどのように分かち合うかが大きな課題となっています。
5. 軽減制度や支援策を活用しよう
介護保険料や介護サービスの費用負担を軽減するために、自治体や国にはさまざまな支援制度が設けられています。
まず、介護保険料そのものに対しては、所得が一定以下の人や生活保護を受けている人向けに「保険料の減免制度」が用意されています。
この制度を利用すると、保険料の一部または全額が免除される場合があります。ただし、申請が必要なケースが多く、放置していると本来受けられるはずの軽減措置を逃してしまうこともあります。
また、介護サービス利用時には、自己負担を軽減できる制度も複数あるので、当てはまる方はぜひチェックしてみて下さい。代表的なものに、以下のような制度があります。
高額介護サービス費制度
1か月あたりの自己負担額が所得区分に応じた上限を超えた場合、その超過分が払い戻されます。
社会福祉法人による利用者負担軽減制度
低所得の人が特定の介護サービスを利用する際、自己負担額を軽減できる制度です。
補足給付(特定入所者介護サービス費)
介護施設入所時の食費や居住費を軽減する仕組みで、所得や資産の状況によって対象が決まります。
いずれの制度も申請が必要です。「自分は対象外」と決めつけず、自治体の介護保険窓口で確認しておくことが大切です。わずかな手続きで、年間の負担が大きく減る場合もあります。
少しの手続きで、年間の負担を大きく減らせるケースも少なくありません。
6. まとめにかえて:「避けられない負担」とどう向き合うか
介護保険料は、高齢化社会の中で誰もが負担を分かち合う仕組みとして導入されました。しかし、年金収入が限られる高齢者にとっては決して小さくない負担です。
今後も介護ニーズが増える中で、保険料の上昇は続くと見込まれます。だからこそ、制度の仕組みを理解し、利用できる軽減策を上手に活用することが大切です。
「知らないうちに払いすぎていた」とならないよう、毎年の見直しを怠らないようにしましょう。
参考資料
和田 直子