4. なぜ介護保険料は上がり続けるのか

介護保険料の上昇は、単なる値上げではなく、社会構造そのものの変化が背景にあります。主な要因は3つあります。

4.1 高齢化の進行による介護サービス利用者の増加

日本では、75歳以上の後期高齢者人口が急増しており、介護が必要な人の割合も高まっています。

介護保険サービスの利用者数の推移

介護保険サービスの利用者数の推移

出所:厚生労働省「介護保険制度をめぐる状況について(令和6年12月)」

令和4年度の介護サービス利用者は2000年の制度開始時と比べて約3.3倍に増加。

利用者の増加に伴い、介護サービス全体にかかる費用(介護給付費)が膨らみ、その財源を支えるために保険料も上がっています。

4.2 介護職員の人件費上昇

慢性的な人手不足が続く介護現場では、職員の確保・定着が大きな課題です。

介護職員の賃金の推移

介護職員の賃金の推移

出所:厚生労働省「介護職員の処遇改善について」

国は「介護職員処遇改善加算」などの制度を設け、賃金引き上げを後押ししており、その通り少しずつではありますが介護職員の賃金は上がっています。

しかし、その原資の一部は介護保険財政から賄われています。

つまり、介護サービスの質を維持・向上するための費用が、保険料にも反映されているのです。

4.3 介護施設や在宅支援の整備拡充

地域包括ケアの推進により、在宅介護を支える訪問介護・デイサービスなどの整備が全国で進んでいます。

施設やサービス拡充に伴う運営費・建設費なども介護保険制度の支出に含まれ、結果的に保険料上昇の要因となっています。

このように、介護保険料の上昇は「介護を支える社会のコスト」が増していることを示しています。

今後も高齢化の進展が続く中で、保険料負担をどのように分かち合うかが大きな課題となっています。