3.2 生活費の見直し(固定費・保険料・通信費など)
収入を増やすのが難しい場合、支出を減らすことが赤字解消の近道です。特に、毎月かかる固定費は、一度見直せば継続的に節約効果が得られます。
- 保険料:不要な保障がないか、より安価な保険に乗り換えられないか検討しましょう。
- 通信費:高齢層では契約変更に不安を感じる人も多く、結果的に高いプランを継続してしまうケースもあります。大手キャリアから格安SIMに切り替える、不要なオプションを解約するなどを検討しましょう。
- 住居費:住宅ローンを借り換える、より家賃の安い住居へ引っ越すなども選択肢となります。
3.3 資産運用による補完
貯蓄をただ銀行に預けておくだけでは、お金はほとんど増えません。
一部の資金をNISAやiDeCoといった制度を利用して資産運用に回すことで、資金を増やすことを目指せます。
これらの制度は、税制上の優遇措置があるため、効率的に資産形成を進めることができます。
ただし、元本割れのリスクもあるため、無理のない範囲で、必要に応じて専門家にも相談しながら始めるのが良いでしょう。
3.4 公的制度の活用(高額療養費制度や介護保険など)
老後は通院や入院が必要な病気や介護により、まとまったお金が必要になることがあります。そうした時に利用できる公的な制度を知っておくことで、突然の出費による家計への打撃を軽減できます。
- 高額療養費制度:医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
- 介護保険:要介護認定を受けることで、介護サービス費用の自己負担額が原則1割に抑えられます。
- 年金制度:老齢年金だけでなく、障害を負った場合は障害年金、配偶者を亡くした場合は遺族年金が支給されることもあります。
ただし、これらの公的制度は改正される場合もあります。最新の情報を注視するようにしましょう。
3.5 一部就労による収入確保(シニア雇用やパート)
退職後も体調や生活スタイルに合わせて働くことで、安定的な収入源を確保できます。
- シニア雇用制度:多くの企業が、定年後も希望する社員を再雇用する制度を導入しています。これまでの経験を活かせるのが大きなメリットです。
- パート・アルバイト:スーパー、コンビニ、清掃業など、短時間から始められる仕事も多くあります。
- 専門性を活かした仕事:これまでのキャリアで培ったスキルを活かし、コンサルタントやフリーランスとして働く方法もあります。
働くことは収入を得るだけでなく、社会との繋がりを保ち、生活に張りをもたらす効果も期待できます。
4. 老後資金は「生活費の赤字+医療・介護費」を考慮
老後の家計は、年金収入だけでは赤字になるケースが少なくありません。
その背景には、年金水準の伸び悩みだけでなく、住居費や光熱費、保険料といった固定費の重さ、年齢とともに増える医療・介護費、そして近年の物価上昇が重なっている現状があります。
赤字を補うためには、退職金や貯蓄を計画的に取り崩すことや、生活費の見直し、資産運用による補完、公的制度の活用など複数の手段を組み合わせることが重要です。
さらに、健康状態が許す限り、シニア雇用やパート勤務といった一部就労で収入源を確保することも、家計の安定に大きく寄与します。
大切なのは、赤字が出るのは珍しいことではないという現実を受け止め、早い段階から対策を講じることです。
老後の生活を「なんとかなる」ではなく「なんとかする」ために、資金計画と生活設計をセットで考えることが、これからの時代の必須条件と言えるでしょう。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和4年度 生涯医療費」
- 総務省統計局「調査結果の最近の動向等」
- J-FREC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
和田 直子