高齢期の暮らしは、年金収入を中心とした限られた収入で成り立っています。

年金暮らしになれば、支出も落ち着き、収入の範囲でゆとりある生活ができる。そんなイメージを持っている方は少なくありません。

しかし現実は、定年後の生活費は思ったほど減らず、多くのシニア世帯が毎月3万円以上の赤字を抱えています。

最近は、食料品や光熱費の値上げが家計を直撃。外食や旅行を控えても、生活必需品の価格は下がらず、節約だけでは赤字を埋めるのが難しい状況です。

この記事では、シニア世帯の家計の収入と支出の実態を詳しく見ながら、赤字の原因を3つの視点(固定費、医療費、物価上昇)から掘り下げていきます。

老後の家計管理に悩む方や、これから定年を迎える方にとって、今後の備えを考えるヒントになれば幸いです。

1. 【シニア夫婦】月々の家計収支の現状とは

まずは、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均収支を見ていきましょう。

総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年」によれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の平均は以下の通りです。

1.1 収入:25万2818円

■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円

1.2 支出:28万6877円

■うち消費支出:25万6521円

  • 食料:7万6352円
  • 住居:1万6432円
  • 光熱・水道:2万1919円
  • 家具・家事用品:1万2265円
  • 被服及び履物:5590円
  • 保健医療:1万8383円
  • 交通・通信:2万7768円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万5377円
  • その他の消費支出:5万2433円

(うち諸雑費:2万2125円)

(うち交際費:2万3888円)

(うち仕送り金:1040円)

■うち非消費支出:3万356円

  • 直接税:1万1162円
  • 社会保険料:1万9171円

1.3 家計収支

  • ひと月の赤字:3万4058円

つまり、多くのシニア夫婦は毎月3万円以上を貯蓄などから取り崩して生活している計算になります。

支出の内訳では、

  • 食料:7万6352円
  • 光熱・水道:2万1919円
  • 保健医療:1万8383円
  • 交通・通信:2万7768円
  • 教養娯楽:2万5377円

などの項目が支出が多いことがわかるでしょう。

住居費は平均で1万6432円と比較的低めですが、これは持ち家率が高いためで、賃貸暮らしの場合はさらに負担が増します。