6. 年金の受給開始時期は選択できる!《繰上げ受給・繰下げ受給》とは?
老齢年金の受給開始年齢は通常65歳ですが、繰上げ受給や繰下げ受給の制度を利用すれば、60歳から75歳までの間で開始時期を調整できます。
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60歳~64歳で減額された年金を受け取る「繰上げ受給」
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減額率:繰り上げた月数×0.4%(最大24%)
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66歳~75歳で増額された年金を受け取る「繰下げ受給」
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増額率:繰り下げた月数×0.7%(最大84%)
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厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額は14万6429円ですが、ここでは本来の年金額を15万円と仮定し、受給開始年齢を60歳・65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳とした場合の累計受給額を比較していきます。
6.1 【各年齢での累計受給額例】60歳・65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳
【各年齢での累計受給額例】60歳・65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳

出所:日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成(「keisan 生活や実務に役立つ計算サイト」を使用)
70歳・75歳時点での累計受給額は、繰上げ受給のほうが有利ですが、80歳時点では65歳からの受給が優位となり、85歳以降は繰下げ受給が最も多くなります。
なお、一度決定した繰上げ・繰下げの減額率や増額率は、生涯にわたり固定されるため、繰上げ受給を選ぶと、65歳以降も減額された金額のまま受給が続く点は理解しておく必要があります。
また、繰下げ受給によって年金額が増えると、税金や社会保険料の負担が増加する可能性がある点も見落とせません。
資産状況や健康状態を踏まえ、自分にとって最適な受給開始時期を慎重に検討することが大切です。
※特別支給の老齢厚生年金には繰下げ受給の制度はありません。
7. 公的制度について正しく理解し「老後への備え」を検討しましょう
今回は、年金制度の概要や、平均受給月額について詳しく見ていきました。
公的制度について正しく理解したうえで、老後への備えを検討することはとても大切です。
しかし、現役世代の方達が年金を受け取る頃には、制度が改正されている可能性もあります。
公的年金に頼った生活設計をするのではなく、ある程度自助努力で資産形成していく必要があるといえるでしょう。
長らく物価高が続いているため、今後生活費の負担が増していくことも考えられます。
安心して老後を迎えられるよう、安定した収入がある現役世代のうちから、計画的に対策しておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- カシオ計算機「keisan 生活や実務に役立つ計算サイト」
橋本 優理