「年金は難しい」そう感じる方も少なくないでしょう。
公的年金には国民年金と厚生年金があり、働き方によって加入状況が異なります。
そして受給要件を満たせば、老齢年金・遺族年金・障害年金などが受け取れるという仕組みです。
ここで気になるのが「いくらもらえるのか?」ということです。
支払った保険料や加入期間によって決まるものの、金額が少ないと感じる方もいるでしょう。
金額が一定以下の人には、「年金生活者支援給付金」が支給されます。
実は、2025年6月13日支給分より、「年金生活者支援給付金」は2.7%増えることが決まっています。
詳しくみていきましょう。
1. 「年金生活者支援給付金」の制度をわかりやすく解説
「年金生活者支援給付金」とは、公的年金を含めてもなお所得の低い世帯を対象とする給付金です。2カ月に一度の年金支給日に、公的年金に上乗せして支給されます。
近年しばしば実施されている「住民税非課税世帯への給付金」などの一時的な支援とは異なり、要件を満たす限り継続して受け取ることができる恒久的な支援制度です。
年金生活者支援給付金には、受給している年金に応じて以下の3つの種類があります。
1.1 年金生活者支援給付金の種類
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金)
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2. 【6月13日から2.7%増える】低年金者を支える「年金生活者支援給付金」とは?
公的年金と同じく、年金生活者支援給付金制度の給付額は年度ごとに見直しがおこなわれます。2025年度は、前年の物価変動率にもとづき2.7%の増額となりました。
2.1 【2025年度】年金生活者支援給付金の給付額
年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 老齢年金生活者支援給付金:基準額:月額5450円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級6813円・2級5450円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円
なお、老齢年金生活者支援給付金のみ、上記の基準額をもとに保険料納付状況に応じて計算されます。
保険料納付済期間や免除期間によって、実際の給付額には個人差があります。
次章では、それぞれの支給対象者を確認していきます。
3. 「年金生活者支援給付金」の支給要件(種類ごと)
3種類ある年金生活者支援給付金について、それぞれの支給要件を整理しましょう。
3.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となる要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)である。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金(※3)」が支給されます。
※3「補足的老齢年金生活者支援給付金」とは?
老齢年金生活者支援給付金は、一定の所得以下の人を対象とした制度ですが、基準額をわずかに超えると給付を受けられず、基準額ギリギリで支給対象となる人よりも総所得が低くなるという問題がありました。
この不公平を解決するために設けられているのが「補足的老齢年金生活者支援給付金」です。この給付金は、所得が基準額を超えても一定範囲内であれば受給でき、所得が増えるにつれて給付額は減ります。
3.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給対象となる要件
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 障害年金等の非課税収入は除く
3.3 「遺族年金生活者支援給付金」の対象者となる要件
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 遺族年金等の非課税収入は除く
それぞれの給付金において、上記の要件をすべてを満たす場合に支給対象となります。
4. 年金生活者支援給付金の申請方法
年金生活者支援給付金の受給には、申請手続きが必要です。対象となる人にはお知らせを兼ねた請求書が届きますが、これを提出しないと「1円ももらえない」ので気をつけましょう。
年金受給の状態によって、日本年金機構から届く書類は異なります。今回は「新規に年金を受給する人」と「既に年金を受給中の人」の2パターンを解説します。
※なお、繰上げ受給の人には下記とは異なる様式の書類が届きます。
4.1 パターン1:新規に老齢年金を受給する人
これから年金を受給開始する人が、年金生活者支援給付金の支給対象となった場合は、老齢基礎年金の請求書に給付金請求書が同封されます。
給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書と一緒に提出しましょう。
4.2 パターン2:既に年金を受給中の人
既に年金を受給中で、新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、 毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送付されます。
請求書の指定部分に必要事項を記入し、切手を貼って返送しましょう。
それぞれ、一度申請手続きをおこなえば、基本的に毎年の手続きは不要です。 また支給要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送され支給されなくなります。
「自分は支給対象か分からない」「支給対象のはずだが請求書が届かない」といった疑問点があれば、年金事務所などに相談しましょう。
5. 年金について気がかりなこと
日本労働組合総連合会が5月に公表した「社会保障に関する意識調査2025」によると、年金について気がかりなことの1位は「将来の老齢年金受給額の見通し」でした。
- 1位:将来の老齢年金受給額の見通し(将来、自分が受け取ることができる年金の支給額)
- 2位:年金制度の長期的な持続性や課題(これから先、年金制度はなくならないのか)
- 3位:年金保険料の見通し(年金保険料の負担額が今後上がるかどうか)
- 4位:第3号被保険者制度のあり方(第3号被保険者制度はこれからどうなっていくのか)
では、今のシニアが受給する老齢年金は平均でどれほどなのでしょうか。
6. 【老齢年金】シニア世代の「国民年金・厚生年金」平均額
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、国民年金と厚生年金(※)の受給額を「60歳~90歳以上の5歳刻みの平均月額」で紹介します。
※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
6.1 国民年金の受給額
- 60~64歳:4万4836円
- 65~69歳:5万9331円
- 70~74歳:5万8421円
- 75~79歳:5万7580円
- 80~84歳:5万7045円
- 85~89歳:5万7336円
- 90歳以上:5万3621円
6.2 厚生年金の受給額
※国民年金部分を含む
- 60~64歳:7万5945円
- 65~69歳:14万7428円
- 70~74歳:14万4520円
- 75~79歳:14万7936円
- 80~84歳:15万5635円
- 85~89歳:16万2348円
- 90歳以上:16万721円
64歳までの年金額は、繰上げ受給中の人や、特別支給の老齢厚生年金を受給中の人の年金額となるため、65歳以上の年代と比べると低めです。
一般的な年金開始年齢である65歳以上の平均年金月額は、国民年金(老齢基礎年金)のみの受給権者は5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給権者は14万円台~16万円台となります。
上記はいずれも「各年齢層」での平均額です。実際の受給額は現役時代の年金加入状況により個人差が出るため、上記は参考程度に見ておくと良いでしょう。
7. まとめにかえて
年金生活がスタートすると、限られた収入の範囲内で生活について考えていく必要があります。
現役時代のように収入アップに期待はできないため、計画的にやりくりしていくことが大切です。
物価上昇が起こると年金受給額が増えたり、給付金などの支援制度が始まる可能性がありますが、こちらも限度がございます。
ゆとりを持った生活を実現するために、現役のうちに資金を蓄えておくなど早いタイミングから準備を進めていきたいですね。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「生活設計と年金に関する世論調査(主な調査結果)」
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 日本労働組合総連合会「社会保障に関する意識調査2025」
川勝 隆登