日本の公的年金制度は仕組みが複雑なため、「国民年金と厚生年金の違いがよく分からない」「働き方によって何が変わるのか知りたい」という人も多いのではないでしょうか。
実際、受け取れる年金額は加入歴や現役時代の収入によって大きく差が生じます。
本記事では、日本の年金制度の基本的な仕組みから2026年度の最新年金額、実際の受給水準、そして制度改正による今後の変化まで、わかりやすく整理していきます。
1. 日本の年金制度は「国民年金+厚生年金」の2階建て構造
日本の公的年金制度は、土台となる「国民年金(基礎年金)」と、その上に積み上がる「厚生年金」で構成されており、「2階建て」と表現されることがあります。
ここでは、それぞれの制度の基本を確認していきましょう。
【1階部分】国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
- 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
- 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
【2階部分】厚生年金
- 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
- 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
- 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る
厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金に追加して加入する制度で、国民年金と厚生年金では、加入対象や保険料の決まり方、将来の受給額の算出方法に違いがあります。
そのため、老後に受け取る年金額は、加入歴や現役時代の収入状況によって個人差が生じます。
また、公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金動向を踏まえ、毎年度見直される仕組みとなっています。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
2. 【年金増額】6月支給分から「国民年金+1.9%・厚生年金+2.0%」4年連続の引き上げに
公的年金の支給額は、物価や賃金の動向を反映し、毎年度改定されています。
2026年度は、老齢基礎年金(満額)が前年度比1.9%引き上げられ、厚生年金のモデル世帯額も増額となり、4年連続のプラス改定となりました。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金のみの場合、満額(※3)でも月額で約7万円であり、繰下げ受給(※4)の上限年齢である75歳まで受給開始を遅らせたとしても、月額13万円に届かないことになります。
※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。
3. 国民年金だけで暮らせる? 高齢世帯の生活費を確認
2026年度の国民年金(老齢基礎年金)の満額は月額7万608円ですが、「年金だけで老後生活は成り立つのか」と不安を感じる人も多いでしょう。
ここでは、実際の高齢世帯の家計収支を見ながら、老後生活に必要な支出水準を確認していきます。
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をみると、2025年の65歳以上単身無職世帯の実収入は月13万1456円で、そのうち社会保障給付(主に年金収入)が12万212円と、約9割を占めています。
一方、消費支出は月14万8445円で、税金や社会保険料などの非消費支出1万2990円を含めると、収入だけではまかなえず、差額は約2万9980円の赤字となっています。
支出の内訳を見ると、もっとも割合が大きいのは「食料費」で28.7%、次いで「その他の消費支出」21.3%、「教養娯楽費」10.9%、「光熱・水道」10.5%などが続きます。
生活費は食費や住居費だけでなく、医療費や交際費など幅広い支出が発生することがわかります。
国民年金のみの受給者の場合、満額でも月約7万円にとどまるため、実際の生活費との間には大きな差が生じる可能性があります。
では、厚生年金を含めた実際のシニア一人あたりの受給額はどのくらいなのでしょうか。
次章では、厚生年金受給者の平均額や受給分布について詳しく見ていきます。
4. 厚生年金+基礎年金「月15万円(年180万円)」を超える人はどれくらい?
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者全体の平均月額は15万289円です。
なお、この金額には国民年金(老齢基礎年金)の受給分も含まれています。
ここでは、厚生年金の受給額ごとの人数分布を確認していきましょう。
4.1 厚生年金の受給額別の人数分布
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金を月15万円以上受給している人の割合は49.8%で、全体の半数には届いていません。
なお、厚生年金を受給していない人も含めて考えると、この割合はさらに低くなります。
5. 「年収106万円の壁」見直しへ? 2025年成立の年金制度改正法を解説
2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」では、パートやアルバイトなどの働き方に影響する、いわゆる「年収106万円の壁」の見直しが盛り込まれました。
5.1 そもそも「年収106万円の壁」とは?
「106万円の壁」とは、短時間労働者が年収106万円を超えると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自身で保険料を負担する必要が生じる目安を指します。
保険料の支払いにより手取り収入が減るため、年収が基準を超えないよう勤務時間を調整する「働き控え」が起こる要因のひとつとされてきました。
また、社会保険の適用対象となる企業規模は段階的に拡大されており、2024年10月からは従業員数51人以上の事業所が対象となっています。
今回の改正では、「賃金要件」の撤廃や「企業規模要件」の段階的な撤廃が盛り込まれました。
5.2 「社会保険加入対象の拡大」短時間労働者の加入条件を見直し
2025年7月時点では、パートタイムなどの短時間労働者が社会保険へ加入するには、以下5つの条件をすべて満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
- 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)
今回の改正では、このうち「賃金要件」と「企業規模要件」の2つが廃止されます。
いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の動向を踏まえながら、3年以内の撤廃が予定されています。
また、社会保険適用の企業規模については、10年かけて段階的に拡大される見通しです。
6. 年金制度の変化を知り、「自分の老後」を早めに考えるきっかけに
本記事では2026年度の最新年金額や「年収106万円の壁」撤廃の法改正について解説しました。
2026年度は4年連続で年金額が引き上げられたものの、国民年金のみでは満額でも月約7万円にとどまり、厚生年金を含めても月15万円以上を受給している人は半数に届かないのが現実です。
また、2025年成立の年金制度改正法では、「106万円の壁」の見直しが進められ、短時間労働者の社会保険加入対象が広がる方向となっています。
こうした制度変更は、将来受け取る年金額にも影響する可能性があります。
年金を「まだ先の話」と考えず、自身の働き方や加入状況を確認しながら、早めに老後資金について考えておくことが大切といえるでしょう。





