老後の生活費は年金だけでは足りないということを見聞きすることがありますが、現在の年金受給世帯のうち、年金だけで生活できているのはどのくらいの割合なのでしょうか。

本記事では、シニア世代の平均的な年金受給額や貯蓄額、および65歳以上の無職夫婦世帯の1ヵ月の生活費などについて詳しく解説していきます。

1. 年金だけで生活している世帯は43.4%

厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、年金受給世帯のうち、年金収入だけで生活している世帯は43.4%とされています。

年金受給世帯のうち、年金収入だけで生活している世帯の割合1/5

年金受給世帯のうち、年金収入だけで生活している世帯の割合

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」

ただし、これはあくまでも収入が年金のみという世帯の割合であり、年金だけでゆとりをもって生活できている世帯とイコールではないことに注意が必要です。中には、年金収入だけでなんとかやりくりしている世帯も含まれています。

なお、当調査結果の中には「生活意識」についての項目もあり、高齢者世帯の55.8%が、生活が苦しい(大変苦しい:25.2%、やや苦しい:30.6%)と回答しています。

ゆとりある生活を送っている高齢者世帯は、決して多くはないことがわかります。

では、現在のシニア世代は厚生年金や国民年金を月額いくら受給しているのでしょうか。次章で詳しく確認していきましょう。

2. 厚生年金や国民年金はいくらもらってる?

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の平均受給額は、厚生年金が15万289円、国民年金が5万9310円です。なお、厚生年金には国民年金分も含まれています。

【厚生年金】

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

【国民年金】

  • 全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金は厚生年金よりも9万円ほど少ないです。また、厚生年金でも女性は男性よりも5万8000円ほど少なくなっています。

例えば、現役時代に会社員だった夫と専業主婦だった妻の場合、22万7000円ほど(16万9967円+5万7582円)の年金が受給できると計算できます。

一方で、夫婦共に自営業だった場合、受給できるのは国民年金のみとなり、合計で12万円弱(6万1595円+5万7582円)になります。12万円弱では生活費をまかなうことが難しいと考えられるため、自営業や個人事業主などの方は、付加年金(付加保険料の納付)や国民年金基金へ加入し、将来の受給額を増やすことを検討するのも良いでしょう。

年金だけでは生活費が不足する場合、貯蓄の切り崩しをする必要が出てくるでしょう。では、現在のシニア世代はどのくらいの貯蓄を有しているのでしょうか。次章で確認していきましょう。

3. 65歳以上世帯の貯蓄額は平均値が2509万円、中央値が1658万円

総務省統計局「家計調査報告[貯蓄・負債編] 2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」によると、 世帯主が65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額は、平均値が2509万円、中央値が1658万円です。

世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布 (二人以上の世帯)4/5

世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布 (二人以上の世帯)

出所:総務省統計局「家計調査報告 貯蓄・負債編  2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」

平均値は2509万円となっていることから、現在のシニア世代は十分な貯蓄を有しているという印象を受けるかもしれません。

しかし、より実際の感覚に近いとされる中央値が1658万円と、平均値よりも1000万円弱少ないため、一部の高額な資産を有している世帯が全体の平均を押し上げていると考えられます。したがって、実際の平均は、平均値の2509万円よりも少額になるといえるでしょう。

老後の生活費に備えるためには、毎月の生活費にいくらかかるのかを把握する必要があります。次章で、65歳以上二人世帯の生活費の目安を解説していきます。

4. 65歳以上夫婦のみ無職世帯の生活費はいくらかかる?

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上夫婦のみ無職世帯の1ヵ月の収支は、以下の通りです。

65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計収支5/5

65歳以上の夫婦のみ無職世帯の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

  • 実収入:25万4395円
  • 非消費支出:3万2850円
  • 可処分所得:22万1544円
  • 消費支出:26万3979円
  • 収支:△4万2434円
  • 平均消費性向:119.2%

公的年金をメインとした実収入が25万4395円で、そこから社会保険料や税金といった非消費支出が3万2850円差し引かれると、可処分所得(手取り額)は22万1544円になります。

食費や水道光熱費などの消費支出が26万3979円かかり、可処分所得から差し引くと4万2434円の赤字となる計算です。

毎月4万2000円ほどの赤字が出ると年間では50万4000円になり、65歳から85歳までの20年間では1008万円が、90歳までの25年間では1260万円が不足する可能性があります。

つまり、生活費の補填だけでも1000万円以上の貯蓄が必要になるということです。さらに、高齢になると医療費や介護費用の負担も大きくなることが多いため、十分に対応できるほどの貯蓄があると安心です。

5. おわりに

収入が年金のみの世帯は43.4%ですが、このすべてが年金だけでゆとりある生活を送れているわけではありません。中には、不足する生活費を貯蓄の切り崩しでなんとか補っている世帯も含まれています。もちろん、年金だけでゆとりを持った生活を送れている世帯も存在していますが、限られた一部の世帯だと考えられます。

年金だけで生活費をまかなえない場合、貯蓄の切り崩しが必要になることが多いです。老後の経済的な不安を軽減できるよう、現役時代のうちから計画的に資金の準備をしておくことが大切です。

参考資料

木内 菜穂子