老後生活を送る上で収入の柱となるのが公的年金です。現行の公的年金制度の老齢年金の受給開始年齢は65歳からとなっていますが、受給開始を早めたり遅らせたりする「繰上げ受給」「繰下げ受給」を選択することも可能です。
近年、高齢者を取り巻く労働環境は変化しています。
2021年4月1日には、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が施行。60歳以降も働き、年金の受給開始を遅らせることで年金額を増額できる「繰下げ受給」を選択する人が増えていくかもしれません。
しかし、老齢年金は「終身で受給できる」という性質上、寿命によっては総受取額で損をするケースもあります。
そこで本記事では、繰上げ受給・繰下げ受給の仕組みを解説します。記事の最後では、実際に年金受給開始年齢における損益分岐点のシミュレーション結果もご紹介していますので、参考にしてみてください。
1. 老齢年金「繰上げ受給・繰下げ受給」のメリット・デメリットとは?
現行の年金制度では、老齢年金の受給開始年齢は原則65歳からと定められています。
しかし、個々のライフプランに合わせて、受給開始年齢を最大60歳まで早める「繰上げ受給」、最大75歳まで遅らせる「繰下げ受給」を選択することができます。
1.1 《繰上げ受給》
繰上げ受給とは、老齢年金の受給開始年齢を60歳まで早めることができる制度です。
繰上げ受給を利用した場合は「繰上げた月数×0.4%」、最大24%が減額され、減額された年金額は変わることはありません。
繰上げ受給のメリット
年金を早く受け取ることで、リタイア後65歳までの無収入期間を解消できる
繰上げ受給のデメリット
年金を早く受け取る変わりに年金額が減ってしまうこと、寿命によって総受取額で損するケースも
年金受給額が10万円の場合、最大である60歳0ヶ月に繰上げ受給をすると24%減額され、受給額は7万6000円になります。
繰上げ受給により年金額は減額されますが、長生きすれば総受取額で得をする場合も。寿命という不確定なものにより結果は異なりますが、参考として損益分岐点について後述しておりますのでご確認ください。