5. 【富裕層】住民税のデータからみた、所得の高い人が多い地域
国税庁の申告所得税標本調査は全国の集計で、地域別のデータはありません。そこで、総務省の住民税のデータから、地域の特徴を見てみます。
5.1 1人あたり平均所得の上位は東京23区が中心
総務省「令和7年度 市町村税課税状況等の調」をもとに、住民税の課税対象所得を所得割の納税義務者数で割って算出した「1人あたり平均所得」では、1位が東京都港区の1809万8922円、2位が渋谷区の1394万2883円、3位が千代田区の1290万6919円でした。上位10のうち8つを東京23区が占め、兵庫県芦屋市と北海道猿払村も入っています。
港区や渋谷区では、課税対象所得の約3割を株式等の譲渡所得が占めていました。平均所得の高さは、株式などの売却益の影響も大きく受けています。
詳しいランキングと、都道府県別の状況は、【住民税】1人あたり平均所得トップ10、1位の港区は「1809万円」で全国平均の4.7倍。株の売却益を除くといくら?で紹介しています。
6. 【富裕層】世帯年収3000万円以上の55%は、純金融資産1億円以上
ここからは、博報堂富裕層マーケティングラボが2026年9月4日に発表した「新富裕層調査2026」から、富裕層の価値観やお金の使い方を見ていきます。この調査は、20〜69歳の男女3709人を対象にしたインターネット調査です。
6.1 所得と資産の両方が多い「ダブルリッチ」
野村総合研究所が「富裕層」と定義する純金融資産1億円以上の世帯の割合は、回答者全体では4%でした。これが世帯年収1500万円以上では22%、世帯年収3000万円以上では55%に上がります。
博報堂は、世帯年収3000万円以上の世帯を「新富裕層」と位置づけ、所得と資産の両面での富裕層のひとつの目安としています。世帯年収5000万円以上では、純金融資産5億円以上の世帯が48%を占めました。
6.2 モノより体験、時間やゆとりにお金を使う
調査では、世帯年収3000万円以上の富裕層に、年代を超えて共通する「10大価値観」があることが示されました。たとえば、「モノの所有より体験や経験にお金を使いたい」は51%(回答者全体は39%)、「時間やゆとりを得るために、お金をかけることを惜しまない」は58%(同31%)でした。
「親・先祖から継承された資産を維持していくことが大切だ」は52%(同33%)、「社会問題・環境問題の解決に貢献したい」は42%(同29%)と、資産を次の世代につなぐことや、社会への貢献への意識の高さもうかがえます。
7. 【富裕層】若年富裕層は消費に積極的、シニア富裕層は生成AIを活用
調査では、年代ごとの富裕層の特徴も示されています。
7.1 20〜30代は自由に使えるお金が月平均58万円
世帯年収3000万円以上の20〜30代(若年富裕層)が、生活費以外に1か月に自由に使えるお金は平均58万円でした。40〜50代の44.8万円、60代以上の46.6万円を上回っています。
若年富裕層の32%が「クルマ」にお金をかけていると回答し、若年層全体の13%を大きく上回りました。博報堂は、若者の「クルマ離れ」といった傾向に当てはまらない層としています。
7.2 60代の53%が生成AIツールを利用
世帯年収3000万円以上の60代(シニア富裕層)の53%が「生成AIツール」を利用していると回答しました。シニア層全体の34%を大きく上回り、若年層全体の58%に迫ります。
8. 【FPの視点】富裕層の価値観から、自分のお金の使い方を考える
富裕層の調査結果は、金額の大きさばかりに目が向きがちです。しかし、その中身には、所得や資産にかかわらず参考にできる考え方も含まれています。
8.1 「時間」や「体験」に価値を置く
調査では、富裕層ほど「時間やゆとり」や「体験」にお金を使う意識が高いことが示されました。家計の規模は違っても、何にお金を使うと満足度が高いかを考えることは、誰にとっても役立ちます。
8.2 中長期の視点で資産を考える
世帯年収3000万円以上の富裕層では、62%が資産運用で「短期的な利益より中長期のリターン」を、61%が「リスクを考えた資産配分」を重視していました。資産の大小にかかわらず、目的や期間に合わせて無理のない範囲で考えていくことが大切です。
9. まとめにかえて
国税庁の調査では、所得1億円を超える人は申告納税者の0.6%にあたる3万2000人で、所得の多くは給与や事業以外の所得でした。所得税の負担割合は、所得5000万円超1億円以下の26.2%が最も高く、1億円超では21.1%でした。
博報堂の調査からは、富裕層が体験や時間、健康、子どもの教育、社会への貢献などにお金を使う傾向が見えてきました。お金持ちの姿は、数字だけでなく、お金の使い方や価値観にも表れています。
ランキングや平均の数字に一喜一憂するのではなく、その背景を知ることで、ご自身の家計や資産形成を考えるヒントが見つかるかもしれません。税の仕組みや制度は見直されることがあるため、最新の情報は国税庁などの公表資料で確認してください。
参考資料
村岸 理美