3. 将来の年金はいくら増える?
毎月の負担を確認したところで、今度は受け取る側を見てみましょう。厚生年金に加入すると、加入期間や報酬に応じた老齢厚生年金が加わります。
ここでは、将来の年金額改定や報酬の再評価などを考慮せず、現在の計算式で目安を出します。
3.1 加入期間が長いほど、上乗せ額も増える
賞与なしで標準報酬月額が変わらない場合、報酬比例部分の年額は、おおむね次の式で試算できます。
- 標準報酬月額×5.481÷1000×加入月数
年収別の結果は次のとおりです。
年収120万円
1年加入で年約6446円、10年で年約6万4457円、20年で年約12万8913円
年収150万円
1年加入で年約8287円、10年で年約8万2873円、20年で年約16万5745円
いずれも月額ではなく、受給開始後の年金の「年額」に対する上乗せです。実際には再評価率などが反映されるため、この金額が将来にわたって固定されるわけではありません。
3.2 「約17年」は、厚生年金部分だけを比べた数字
「払った保険料に、増えた年金が追いつくのはいつだろう」と気になる方もいるでしょう。
年収120万円の例では、厚生年金保険料の本人負担は年10万7604円です。1年間の加入で年金が年約6446円増えるため、単純に割ると約16.7年となります。
この計算だけなら、65歳から受け取り始めた場合、81歳8カ月ごろに、年金の累計増加額が本人負担額に並びます。
ただし、比べているのは厚生年金保険料だけです。健康保険料や支援金、税の軽減効果、受給時の税・保険料、将来の年金額改定などは含めていません。
同じ前提なら標準報酬月額が変わっても約16.7年ですが、「誰でも17年で社会保険料の元が取れる」という意味ではありません。
国民年金を払っていた第1号被保険者の場合は、加入しなくても保険料の負担があるため、追加負担の比べ方も変わります。この数字は、あくまで一つの見方として受け止めておきましょう。
4. FPからのアドバイス|負担と保障を分けて確認する
今の生活費がどのくらい変わるのかも、将来どんな保障を受けられるのかも、どちらも大切です。働き方を考えるときは、次の3点から確認してみてください。
4.1 加入前に払っている保険料を確かめる
まずは、国民年金の加入区分と、健康保険の加入先を確かめましょう。
国民年金の免除・猶予や国保の軽減・減免を受けている場合は、一般的な金額ではなく、ご自身が実際に払っている額を使います。
家族が代わりに払っている保険料も含めて、世帯全体で使えるお金がどう変わるかを見ると、家計への影響をつかみやすくなります。
4.2 勤務時間を減らす前に、収入の変化も計算する
保険料の負担を避けようと勤務時間を減らせば、その分、給与も減ります。減少額は時給と減らす時間によって違うため、ご自身の条件で計算することが欠かせません。
社会保険に加入する働き方と、勤務時間を減らす働き方について、額面収入、保険料、税をそれぞれ並べてみましょう。配偶者の勤務先の家族手当に影響がないかも確認しておくと、比較しやすくなります。
なお、加入要件を満たす場合は、本人の希望で加入を断ることはできません。
4.3 加入条件は勤務先と一緒に確認する
2026年10月以降も、短時間労働者には週20時間以上という条件に加え、企業規模、2カ月を超える雇用の見込み、原則として学生ではないことなどの要件があります。
企業規模は、原則として厚生年金の被保険者数が51人以上かどうかで判断します。この人数には短時間労働者を含めず、法人の場合は同じ法人の事業所を合計するため、店舗などの従業員数だけでは判断できません。
また、小規模な企業でも任意に適用を受けている場合があります。通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数がともに4分の3以上なら、別の基準で加入対象になります。
契約上の所定労働時間が週20時間未満でも、実際に週20時間以上働く状態が続けば、加入対象となる場合があります。「契約書では19時間だから」と決めつけず、勤務実態も含めて確認しておきましょう。
5. まとめ
今回の参考計算では、社会保険の本人負担は、年収120万円で月約1万3900円、年収150万円で月約1万7900円となりました。
配偶者の扶養から加入する方には新たな負担が生じますが、国民年金と国保を払っていた方は、合計の負担が軽くなる場合があります。免除・減免の有無も含め、ご自身の実際の負担額で比べることが大切です。
また、加入によって変わるのは、毎月の保険料だけではありません。将来の老齢厚生年金に加え、病気や出産、障害などへの保障にも違いがあります。
「約17年」という単純計算だけで判断せず、今の生活費と、将来・万一への備えをあわせて考えてみてください。
参考資料
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料率のお知らせ」
- 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率」
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表・令和8年度版」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 新宿区「保険料」
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 日本年金機構「障害年金」
- 日本年金機構「遺族厚生年金」
加藤 聖人
