「株式投資 アプリ」と検索すると、証券会社の公式アプリを比較したランキング記事がずらりと並びます。手数料や取扱銘柄数の比較は充実していますが、「実際にどんな端末で取引されている人が多いのか」「安全に使うには何に気をつけるべきか」という視点は、意外と語られていません。

この記事では、日本証券業協会や金融庁が公表している一次データをもとに、株式投資のアプリ・ツールを使いこなすうえで知っておきたい実態を整理します。スマホアプリか、パソコンか。資産管理はアプリに任せるべきか、エクセルのままで良いのか。ランキング記事だけでは見えてこない判断材料をお伝えします。

1. 「株式投資アプリ」は一つではない。取引・情報・資産管理という3つの役割

ひとくちに「株式投資アプリ」といっても、実は役割が異なる複数のアプリを組み合わせて使うのが実態です。まずこの整理から始めます。

1.1 取引アプリ・情報アプリ・資産管理アプリの違い

1つ目は、証券会社が提供する「取引アプリ」です。口座の開設先である証券会社が公式に配布しており、銘柄の検索から発注、入出金までをこのアプリ内で完結させます。

2つ目は、株価やニュースを確認するための「情報アプリ」です。取引機能を持たず、保有していない銘柄も含めて相場を見るために使われます。

3つ目は、複数の証券口座をまたいで資産全体を可視化する「資産管理アプリ(PFM)」です。この3つ目については、後半で公的データを基に詳しく取り上げます。

1.2 パソコン・ノートパソコン・タブレットを選ぶときの視点

取引アプリ自体はスマートフォン・パソコンのどちらでも使えますが、「どんな機器で使うか」によって快適さは変わります。複数の銘柄のチャートや板情報を並べて見比べたい場合は、画面が大きいパソコンやモニターを追加した環境の方が見やすくなります。

外出先での注文や、値動きの確認が中心であれば、ノートパソコンやタブレットより身軽なスマートフォンの方が向いています。持ち運びを重視するならノートパソコン、自宅でじっくり比較検討するなら外部モニターを足したデスクトップ環境、というように、目的に応じて使い分けるのが現実的です。

パソコンのスペックについて、証券会社の取引アプリ自体はブラウザや軽量なアプリで動くものが多く、高性能なパソコンが必須というわけではありません。ただし、複数の銘柄情報や画面を同時に開いて比較する使い方をするなら、動作が重くならない程度のメモリ容量を確保しておくと快適に使えます。

下村 美乃莉
私自身も、新NISAの投資信託の積立は証券会社のスマホアプリで設定しています。最初はどのアプリでどこまでできるのか分からず、口座開設からアプリの初期設定まで、思った以上に時間がかかった記憶があります。今では月々の積立状況をアプリで確認するのが習慣になりました。

証券口座の開設そのものについては、単元未満株やNISA成長投資枠の基礎知識とあわせて株式投資の始め方を解説した記事で詳しく整理しています。ここでは、口座開設後に日々使うアプリ・ツールの選び方に絞って見ていきます。

2. 実は50代以上は「パソコン派」が主流。年代別に見る取引端末の実態

「株式投資はスマホで完結する時代」という前提でアプリを比較する記事は多いですが、実際のデータを見ると、年代によってかなり異なる実態が見えてきます。

2.1 年代が上がるほどパソコンに戻っていく

日本証券業協会が2025年7月に公表した「個人投資家の証券投資に関する意識調査」(2025年4月15〜19日実施、株式保有者3638人が回答)によると、株式の主な注文方法は「パソコンやタブレット」が55.3%、「スマートフォン」が27.7%で、合わせて8割以上を占めます。

年代別に見ると、30代以下だけは「スマートフォン」(52.0%)が「パソコンやタブレット」(34.8%)を上回ります。しかし40代でほぼ拮抗し、50代以降は再びパソコンが優位に転じます。

株式の主な注文方法(年代別)1/2

株式の主な注文方法(年代別)

出所:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査(2025年7月公表)」などを基にLIMO編集部作成

2.2 【株式の主な注文方法(年代別)】

全体・30代以下・40代

  • 全体:パソコン・タブレット55.3%/スマートフォン27.7%
  • 30代以下:パソコン・タブレット34.8%/スマートフォン52.0%
  • 40代:パソコン・タブレット47.2%/スマートフォン43.3%

50代・60〜64歳・65〜69歳・70代以上

  • 50代:パソコン・タブレット56.9%/スマートフォン30.2%
  • 60〜64歳:パソコン・タブレット65.5%/スマートフォン19.0%
  • 65〜69歳:パソコン・タブレット61.0%/スマートフォン18.5%
  • 70代以上:パソコン・タブレット64.9%/スマートフォン8.9%

30代以下ではスマートフォンがパソコンを17.2ポイント上回るのに対し、50代ではパソコンがスマートフォンを26.7ポイント上回ります。70代以上ではその差はさらに開き、パソコンが64.9%と6割台後半を占めます。

下村 美乃莉
スマホが主流というイメージが先行しがちですが、こうして数字で見ると年代ごとの実態の違いに気づかされます。周りに合わせて無理にスマホだけで済まそうとせず、自分にとって見やすい環境を選べばよいのだと、あらためて思わされました。

3. 【編集者の視点】

複数の銘柄を見比べたり、板情報を細かく確認したりする場面では、画面が大きいパソコンの方が情報量を把握しやすいという実務上の理由があります。50代以上でパソコン比率が高いのは、単に「デジタルに不慣れ」というだけでなく、こうした合理的な選択の結果である可能性があります。

一方で、証券会社の取引アプリは年々機能が拡充されており、スマートフォンだけでも板情報や複数銘柄の比較ができるようになってきています。年代によって「向いている環境」が変わるという前提を踏まえたうえで、まずは自分の証券口座のアプリとパソコンのブラウザ画面の両方を実際に触り、使いやすい方を選ぶことをおすすめします。

証券会社によっては、パソコン用の高機能ツールとスマホアプリで表示できる情報量に差があることもあります。口座を開設する前に、自分が重視する機能(板情報の見やすさ、チャート分析機能など)がどちらの環境で使えるかを確認しておくと、後から「アプリでは物足りない」と感じる事態を避けられます。

4. アプリを安全に使うための鉄則。不正アクセス急増からパスキー必須化までの1年半

アプリ・ツール選びで見落とされがちなのが、セキュリティの実態です。ここ1年半ほどで、証券会社のインターネット取引をめぐる状況は大きく変わりました。

4.1 不正アクセスはピーク時から約99.7%減少した

金融庁が証券会社等から報告を受けて集計している「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引の発生状況」(令和8年8月10日更新)によると、不正アクセス件数は2025年4月に単月で5490件というピークを記録しました。この月の不正取引による売却金額は約1625億円にのぼります。

その後、証券各社によるセキュリティ強化が進み、2026年7月には不正アクセス件数が14件、売却金額は約0.01億円まで減少しました。

インターネット取引の不正アクセス・不正取引の推移2/2

インターネット取引の不正アクセス・不正取引の推移

出所:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」(令和8年8月10日更新)などを基にLIMO編集部作成

4.2 【インターネット取引の不正アクセス・不正取引の推移】

ピーク時(2025年4月)

  • 2025年4月:不正アクセス件数5490件/不正取引件数3033件
  • 2025年4月の売却金額:約1625億円

直近(2026年7月)

  • 2026年7月:不正アクセス件数14件/不正取引件数1件
  • 2026年7月の売却金額:約0.01億円

合計(2025年1月〜2026年7月)

  • 2025年1月〜2026年7月の合計:不正アクセス件数1万9142件/不正取引件数1万607件
  • 2025年1月〜2026年7月の合計売却金額:約4365億円

ピーク時から直近までで、不正アクセス件数は約99.7%減少した計算になります。2026年1〜7月の7か月間だけでも、不正アクセスは1428件、不正取引による売却金額は約418億円にのぼり、被害そのものがなくなったわけではない点には注意が必要です。

この間、日本証券業協会は2025年10月15日に「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」を改正・施行しました。ログイン時や出金時など重要な操作の際に、パスキー等のフィッシングに耐性のある多要素認証を実装し、必須化することを証券会社に求める内容です。

下村 美乃莉
1か月だけで5000件を超えていた時期があったと知ると、正直ひやりとします。自分の口座は大丈夫なのか、パスワードを使い回していないか、あらためて一つひとつ確認してみようという気持ちになりました。届いた案内をつい後回しにしてしまいがちな自分にも、思い当たる節がありました。

5. 【編集者の視点】

金融庁は、この種の被害を避けるための具体策として、見覚えのある送信者からのメールやSMSであってもリンクを開かないこと、証券会社のウェブサイトは事前にブックマークしておきそこからアクセスすること、ログイン時・出金時などの多要素認証や通知サービスを有効にすることを挙げています。

やむを得ずパスワード認証を使う場合は、使い回しをせず、できるだけ長く推測されにくい文字列にすることも求められています。こまめに口座の状況を確認し、身に覚えのない取引に気づいたら、すぐに証券会社の窓口に連絡してパスワード等を変更することが必要です。

証券会社からパスキー認証などの強固な多要素認証の案内が来たら、後回しにせずその場で設定することが、最も確実な自衛策になります。不審な点があれば、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)に相談する窓口も用意されています。

6. エクセル管理はまだ現役。資産管理アプリの普及率のリアル

「資産管理はアプリにお任せ」という広告を目にする機会が増えましたが、実際にどれだけの人が使っているのでしょうか。

6.1 複数の証券口座を一元管理する「PFM」の普及率

同じ日本証券業協会の調査では、複数の金融機関の口座をまたいで資産を一元管理する「個人管理資産(PFM)」というフィンテックサービスについて、「既に利用している」が全体で3.4%、「利用してみたい」が17.4%という結果でした。

合わせても20.8%にとどまり、30代以下でも「既に利用している」8.3%、「利用してみたい」25.6%を合わせて33.9%です。年代を問わず、実際に使っている人はまだ少数派だといえます。

ロボ・アドバイザーについても、全体で「既に利用している」4.8%、「利用してみたい」23.0%と、状況は似ています。つまり、複数の証券口座やNISA・特定口座の損益を、いまだにエクセルなどで手作業管理している人が多数派だと推測できます。

7. 【編集者の視点】

エクセルなどでの自主管理には、実は理にかなった面があります。株式の譲渡損益を確定申告で損益通算する際には、証券会社が発行する特定口座年間取引報告書をもとに、複数口座・複数年分の損益を突き合わせる作業が必要になる場面があるためです。

資産管理アプリは残高や評価損益を自動で可視化してくれる点で便利ですが、確定申告に使う年間の損益データそのものは、結局は証券会社が発行する報告書を確認することになります。

アプリを導入するかどうかを迷っている場合は、「日々の値動きをざっくり把握したいのか」「確定申告に使う正確な数字を記録したいのか」という目的を先に整理すると判断しやすくなります。前者はアプリ、後者は証券会社の年間取引報告書とエクセルの併用、という役割分担で考えると無理がありません。

下村 美乃莉
便利なツールが増えても、それを利用するかどうかは目的によって個人ごとに異なります。まだ使っている人が少数派だと知って、無理に最新のアプリへ乗り換えなくても良いのだと分かり、安心した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

※本記事は、編集部が金融庁・日本証券業協会が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

8. デモトレードで練習してから始めたい人へ

「まずは練習してから」という考え方自体は自然です。証券会社の多くが、実際の資金を使わずに疑似的な売買を体験できる機能を提供しています。

ただし、公的機関が用意している株式投資の学習教材には、個人が単独では申し込めないものもあります。デモトレードや学習教材の対象・条件の違いについては、シミュレーションを使って株式投資の練習をする方法を解説した記事で詳しく整理しているので、あわせてご覧ください。

9. まとめ

  • 株式投資アプリには、取引アプリ・情報アプリ・資産管理アプリという異なる役割があります。
  • 取引に使う端末は、30代以下ではスマートフォンが過半数を占める一方、50代以上ではパソコンが優位という年代差があります。
  • 不正アクセス件数は2025年4月のピーク時から約99.7%減少しましたが、2026年も月に十件単位で被害は発生しています。
  • 資産管理アプリ(PFM)を既に利用している人は全体の3.4%にとどまり、エクセルなどでの自主管理は依然として現役の手段です。

アプリやツールは日々便利になっていますが、「どれが一番人気か」よりも「自分がどんな場面で、何を確認したいのか」を先に決めておく方が、遠回りをせずに済みます。

とくにセキュリティに関わる設定は、証券会社から案内が来たタイミングで後回しにせず対応することが、最も確実な自衛策です。迷ったときは、証券会社の窓口や金融庁の金融サービス利用者相談室に確認してみてください。

10. よくある質問

10.1 Q. 株式投資はスマホアプリとパソコンのどちらで始めるべきですか?

A. 日本証券業協会の調査では、全体ではパソコン・タブレットが55.3%、スマートフォンが27.7%という結果でした。ただし30代以下に限るとスマートフォンが52.0%と過半数を占めています。どちらが正解というものではなく、複数銘柄の比較や板情報を重視するならパソコン、外出先での確認や発注のしやすさを重視するならスマートフォン、というように自分の使い方に合わせて選ぶことが大切です。

10.2 Q. 株式投資アプリはどれを選べば良いですか?

A. 個別のアプリ名を挙げての比較は本記事では行っていませんが、選ぶ際の観点として、口座を開設する証券会社がパスキーなどのフィッシングに耐性のある多要素認証に対応しているかは確認しておきたいポイントです。金融庁も、こうした強固な認証機能が提供された際には速やかに設定するよう呼びかけています。

10.3 Q. 株式投資の記録はエクセルで管理しても問題ありませんか?

A. 問題ありません。日本証券業協会の調査でも、資産管理アプリ(PFM)を既に利用している人は全体の3.4%にとどまっており、エクセルなどでの自主管理は今も広く行われている手段です。確定申告で損益通算を行う際は、証券会社が発行する特定口座年間取引報告書をもとに記録を残しておくと、後の集計がスムーズになります。

10.4 Q. 株式投資のデモトレード(模擬売買)はどこでできますか?

A. 証券会社の多くが、実際の資金を使わずに売買を体験できる機能を用意しています。公的機関が提供する学習教材には対象が限られるものもあるため、詳しくは株式投資のシミュレーションについて解説した記事をご参照ください。

参考資料

LIMO編集部ウェルスマネジメント班