3. 65歳以上の無職世帯の貯蓄は2494万円
赤字を埋めるのが貯蓄です。総務省統計局の家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均から、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の貯蓄を見ていきます。
3.1 5年で202万円増えたが、直近は減少に転じた
2025年の平均貯蓄現在高は2494万円でした。
2020年からの推移は、2292万円、2342万円、2359万円、2504万円、2560万円、そして2025年が2494万円です。
5年間では202万円増えていますが、2024年の2560万円から2025年は2494万円へと66万円減りました。増加が続いてきた流れが、直近で一度止まった形になります。
3.2 資産の置き場所も変わっている
2020年と2025年で内訳を比べると、動きがはっきり出ています。
通貨性預貯金は618万円から766万円へ148万円増えた一方、定期性預貯金は920万円から778万円へ142万円減りました。すぐ動かせるお金に寄せる動きです。
有価証券は348万円から510万円へ162万円増えています。生命保険などは397万円から426万円、金融機関外は9万円から13万円です。預貯金に置いておくだけでなく、一部を運用に回す世帯が増えていることがうかがえます。
4. 年金だけでは足りない世帯が多い
家計の柱である年金がいくらなのかも確認しておきます。厚生労働省年金局の令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況の数値です。
4.1 国民年金は約6万円、厚生年金は約15万円
国民年金の平均年金月額は全体で5万9310円、男性6万1595円、女性5万7582円です。
厚生年金は国民年金部分を含めて全体で15万289円、男性16万9967円、女性11万1413円となっています。
夫婦のどちらも国民年金だけであれば、2人分を合わせても月12万円ほどです。先ほどの夫婦世帯の支出29万6829円には遠く届きません。
4.2 足りない分をどう埋めるか
不足分を貯蓄の取り崩しだけで賄うと、貯蓄は年々減っていきます。ひと月4万2434円の赤字なら、1年で50万9208円です。
2494万円の貯蓄があっても、この赤字が続けば単純計算で49年分にあたります。ただしこれは平均の姿で、実際の貯蓄額や年金額は一人ひとり大きく異なります。
まずは自分の年金見込額をねんきん定期便やねんきんネットで確かめ、いまの生活費と並べてみるところからになります。
名目支出より実質支出の減り幅が大きい今回の結果は、物価高によって年金世帯の実質的な購買力が削られている現状を如実に表しています。収入の多くを公的年金に頼る世帯にとって、物価上昇が続くなかでの「固定収入でのやりくり」は大きな課題です。
平均貯蓄額2494万円という数字だけに安心するのではなく、「物価上昇に対して手持ちの資産が目減りしていないか」という視点を持つことが重要になります。定期性預金から有価証券や通貨性預金へのシフトが見られるように、資産の一部をインフレに強い運用資産へ配分したり、すぐ使える流動性を確保したりする動きは合理的と言えます。まずは「ねんきん定期便」で実際の手取り額を確認し、物価高に対応できる我が家なりの収支バランスと資産の置き場所を整理してみましょう。
5. まとめ
2026年7月の消費支出は1世帯当たり30万1245円で、前年同月比は実質3.6%の減少でした。名目の1.5%減との差が物価の上がり方を表しています。
65歳以上の夫婦のみ無職世帯は、収入25万4395円に対して支出29万6829円で、ひと月4万2434円の赤字です。収入の約9割を社会保障給付が占めています。
この世代の平均貯蓄現在高は2494万円で、5年前より202万円多い一方、前年からは66万円減りました。資産の中身も預貯金から有価証券へと動いています。
平均の数字はあくまで目安です。自分の年金額と生活費を並べたうえで、足りない分をどう埋めるかを考えておきましょう。
参考資料
LIMO編集部貯蓄解説班
