3. 65歳以上「おひとりさま」月の生活費の不足額は?
では、年金だけで生活費はまかなえるのでしょうか。総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果」から、65歳以上の単身無職世帯の家計収支を確認します。
この層の1か月の収支は次のとおりでした。
- 実収入:13万1456円
- 可処分所得:11万8465円
- 消費支出:14万8445円
可処分所得11万8465円に対して消費支出は14万8445円です。差し引くと、ひと月あたり2万9980円が不足する計算になります。
平均消費性向は125.3%でした。手取りを超えて支出している状態で、足りない分は貯蓄などから補うことになります。
月2万9980円の不足が続くと、1年で35万9760円、10年で359万7600円になります。前ページで見た60歳代・単身世帯の中央値300万円は、この計算では10年もたない水準です。
なおこれは全国の平均であり、住居費の大きさによって不足額は変わります。持家か賃貸かで支出の形が違う点は押さえておきたいところです。
4. 60歳代からの老後に備えた資産設計を
60歳の平均余命は男23.86年、女29.07年です。60歳から20年から30年の生活を、年金と貯蓄で組み立てることになります。
ここでは60歳代のおひとりさまが確認しておきたい点を3つ挙げます。
4.1 自分の年金額を額面ではなく振込額でつかむ
この記事で見た年金額はすべて平均で、しかも額面です。実際には所得税や住民税、介護保険料などが差し引かれた金額が振り込まれます。
自分の受給予定額はねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。すでに受給している場合は、毎年6月に届く年金振込通知書で振込額そのものが分かります。
4.2 不足額を先に出してから取り崩しのペースを決める
家計調査の不足額2万9980円はあくまで平均です。自分の場合の不足額は、振込額から毎月の支出を差し引けば出ます。
その金額が分かれば、貯蓄が何年もつのかも計算できます。平均や中央値と比べるより、自分の数字で年数を出すほうが計画を立てやすくなります。
4.3 繰下げ受給は増える分と負担が増える分を合わせて考える
年金を受け取る時期を遅らせると、1か月あたり0.7%増額されます。66歳から75歳までの間で選べ、増額された年金は生涯続きます。
ただし年金額が増えると所得も増えるため、所得税や住民税、社会保険料の負担も上がります。額面の増加分がそのまま手取りの増加になるわけではありません。
また待機している期間は年金を受け取れないため、その間の生活費を貯蓄でまかなえるかどうかも判断の材料になります。おひとりさまの場合はとくに、繰下げの判断を年金事務所や街角の年金相談センターで確認しておくと安心です。
5. まとめにかえて
60歳代・単身世帯の金融資産保有額は平均1364万円、中央値300万円でした。金融資産非保有が30.4%ある一方で3000万円以上も15.6%あり、持っている世帯と持っていない世帯に分かれています。
年金は65歳以上で厚生年金が15万円台、国民年金が6万円台前半です。65歳以上の単身無職世帯では可処分所得11万8465円に対して消費支出14万8445円で、ひと月2万9980円が不足していました。
60歳の平均余命は男23.86年、女29.07年に延びています。まずは自分の年金の振込額と毎月の支出を並べて、不足額がいくらになるのかを確かめるところから始めたいところです。
参考資料
- 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査(家計収支編)調査結果」
- 厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」
和田 直子