「手すりを付けたり段差をなくしたりする住宅改修は、工事が終わってから領収書を持っていけば費用が戻ってくる」——そう思っていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。介護保険の住宅改修費は、工事に着工する前に申請しなければ、原則として給付の対象になりません。
この記事では、介護保険の住宅改修費の支給限度額や対象工事、申請の順番について、自治体の公式情報にもとづき編集部が整理します。
1. 支給限度基準額は20万円、自己負担は原則1割
自治体の案内によると、住宅改修費の支給限度基準額は、要介護状態区分(要支援・要介護のどの区分か)にかかわらず一律20万円です。実際にかかった費用の原則9割(一定以上の所得がある人は8割または7割)が給付され、残りが自己負担になります。
この20万円という枠は、一度の工事で使い切る必要はなく、複数回に分けて利用することもできます。ただし、生涯を通じて合計20万円までという上限である点に注意が必要です。
1.1 【介護保険の住宅改修費(基本ルール)】
- 支給限度基準額:20万円(要介護状態区分にかかわらず一律)
- 自己負担割合:原則1割(一定以上の所得者は2〜3割)
2. 【編集者の視点】
実務上、この20万円の枠は住宅改修費だけの上限であり、福祉用具の購入やレンタルにかかる別の支給限度額とは区別されています。それぞれの制度を混同しないよう、担当のケアマネジャーに確認しながら計画を立てるとよいでしょう。
※本記事は、編集部が自治体が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
3. 対象となるのは「手すりの取付け」など6種類の工事
自治体の案内によると、対象になる工事は、手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、そしてこれらに付帯して必要となる工事の6種類です。
逆に言えば、この6種類に該当しないリフォーム工事は、介護保険の住宅改修費の対象にはなりません。「バリアフリー化のための工事だから何でも対象になるはず」と思い込まず、事前にケアマネジャーや自治体の窓口で、予定している工事が対象に含まれるかを確認しておく必要があります。
4. 着工前の申請が必須、順番を間違えると給付されない
ここが最も注意すべきポイントです。自治体の案内には「申請前に着工された工事は給付の対象外です」と明記されています。つまり、工事を先に済ませてから申請しても、原則として費用は戻ってきません。
一般的な流れとしては、まずケアマネジャーに住宅改修の希望を伝え、「住宅改修が必要な理由書」の作成を依頼します。複数の業者から見積もりを取ったうえで、市区町村の窓口に事前申請の書類を提出し、承認を受けてから、はじめて工事に着工するという順番になります。
5. 【編集者の視点】
実務上、「急いでいたので先に工事を頼んでしまった」というケースは少なくありません。少しでも早く工事をしたい気持ちは理解できますが、給付を受けたい場合は、必ず申請・承認が先である点を徹底する必要があります。
6. 要介護度が3段階上がる・転居すると、限度額がリセットされる
20万円の枠は生涯を通じての上限が基本ですが、例外的にリセットされる場合があります。初めて住宅改修費を利用したときと比べて、要介護状態区分が3段階以上重くなった場合や、転居して住民票を移した場合は、それぞれ新たに20万円の枠が復活する仕組みになっています。
ただし、リセットされる際に、それまで使い残していた枠が新しい20万円に上乗せされるわけではありません。あくまで新たに20万円の枠が設定される形であり、以前の残高が加算されるわけではない点に注意が必要です。
7. 福祉用具の購入・レンタルは、住宅改修費とは別枠で考える
住宅改修とあわせて検討されることが多いのが、手すりやスロープなどの福祉用具です。特定福祉用具の購入費は、住宅改修費とは別に、年間で購入費用の9割相当額が支給される仕組みになっており、両者の限度額は混同しないよう区別して考える必要があります。福祉用具のレンタルについても、月々の利用限度額の中でやりくりする形になり、住宅改修費の20万円の枠とは完全に独立しています。
7.1 【住宅改修費と福祉用具の支給の違い】
前提:介護保険制度の一般的な仕組みに基づく編集部整理2/2
出所:LIMO編集部作成
- 住宅改修費:生涯を通じて20万円の枠(3段階リセット等の例外あり)
- 特定福祉用具購入費:住宅改修費とは別枠で、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間につき10万円(税込)の購入費用を上限として支給
要介護認定を受けたばかりで、どの制度から使えばよいか迷う場合は、介護保険の自己負担割合の基本を整理した別記事もあわせて確認しておくと、制度全体の見通しを立てやすくなります。要介護認定の申請方法自体がまだの場合は、住民税非課税世帯の優遇措置を整理した別記事もあわせて参考にしてみてください。
8. まとめ
- 住宅改修費の支給限度基準額は20万円で、要介護状態区分にかかわらず一律です。
- 対象となるのは、手すりの取付けなど6種類の工事に限られます。
- 工事着工前の事前申請が必須で、申請前に着工した工事は給付の対象外です。
- 要介護度が3段階以上重くなった場合や転居した場合は、限度額がリセットされます。
住宅改修費は、工事を済ませてから申請すればよいという制度ではありません。着工前の申請という順番を誤ると、せっかくの給付を受けられなくなってしまいます。
工事を検討し始めた段階で、まずはケアマネジャーや自治体の窓口に相談し、対象工事の範囲や申請の流れを確認しておくことをおすすめします。
9. よくある質問
9.1 Q. 住宅改修費の支給限度額はいくらですか。
A. 20万円です。要介護状態区分(要支援・要介護のどの区分か)にかかわらず一律です。
9.2 Q. 工事が終わってから申請しても間に合いますか。
A. 原則として間に合いません。申請前に着工した工事は給付の対象外とされています。必ず着工前に申請する必要があります。
9.3 Q. どんな工事が対象になりますか。
A. 手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替えなど6種類の工事とその付帯工事が対象です。
9.4 Q. 20万円を使い切ったら、もう住宅改修費は使えませんか。
A. 要介護度が3段階以上重くなった場合や転居した場合は、限度額がリセットされ、新たに20万円の枠が復活します。
9.5 Q. 自己負担割合はどのくらいですか。
A. 原則1割です。一定以上の所得がある人は2割または3割になります。
参考資料
齊藤 慧
