4. 食費の値上げはどこに集中しているのか
帝国データバンクが食品主要195社を対象に行った「価格改定動向調査」(2026年9月分、2026年8月31日公表)によると、2026年9月に値上げが判明した食品は単月で4923品目にのぼり、前年同月(1467品目)のおよそ3倍に増えました。値上げ幅は平均で月平均11%です。
カテゴリー別に見ると、調味料が1959品目と最も多く、加工食品(冷凍食品・チルド食品・すり身製品など)が1848品目で続きます。酒類・飲料は466品目、乳製品は278品目(前年同月比2倍)、菓子は272品目でした。
2026年の値上げ品目数は、1〜11月判明分の累計で1万9083品目となっており、前年(2万609品目)に近い規模で推移する見通しです。
調味料や加工食品は、多くの家庭で毎日のように使う「削りにくい」品目です。前章で見た、収入の低い階級ほど食費の重みが大きいという構造は、こうした避けにくい品目で値上げが相次いでいることとも無関係ではなさそうです。
5. 食費で貯蓄ペースを崩さないために押さえておきたい注意点が2つある
総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年(令和7年)平均結果(二人以上の世帯)によると、貯蓄現在高の平均は2059万円(前年比3.8%増)です。貯蓄の内訳では、普通預金などの通貨性預貯金が構成比34.5%(710万円)で最も多く、株式・投資信託などの有価証券は21.4%(440万円)となっています。
この分布そのものから「食費の工夫の仕方」を直接読み取ることはできませんが、値上げが続く局面で貯蓄ペースを崩さないためには、次の2つの視点を持っておきたいところです。
5.1 1つ目:エンゲル係数だけで「使いすぎ」を判断しない
エンゲル係数は便利な目安ですが、外食や中食(惣菜・弁当)への支出シフトが進むと、同じ食生活の満足度でも数値だけが上がって見えることがあります。数値の変化だけで一喜一憂せず、内訳(生鮮食品・調理食品・外食など)まで見る習慣をつけることが、思い込みでの節約しすぎ・使いすぎを防ぐことにつながります。
5.2 2つ目:値上げ品目数の多さと、家計への実質的な影響額は比例しない
帝国データバンクの調査が示す品目数は、あくまで「値上げが決まった品目の数」であり、自分の家庭がその品目をどれだけ買っているかによって、実際の家計への影響額は大きく変わります。品目数の多さに漠然と不安を感じるより、自分がよく買う品目(調味料・冷凍食品など)の価格が実際にどれだけ上がったかを確認する方が、対策の的が絞りやすくなります。
6. まとめにかえて|「削れない食費」の重みを知ることから
値上げが続く局面で貯蓄ペースを守れるかどうかは、収入の高さだけで単純に決まるわけではありません。家計全体に占める食費の重み(エンゲル係数)が大きい世帯ほど、値上げの影響をそのまま受け止めやすく、貯蓄に回す余地を削られやすい構造があります。
まずは総務省「家計調査」などの公的統計を参考に、自分の世帯のエンゲル係数や消費支出の内訳が、同程度の年収層の平均と比べてどうなっているかを確認してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
7. 【筆者コメント】
「値上げ品目が過去最多」といったニュースを見ると、家計への影響も同じペースで膨らんでいるように感じるかもしれません。
しかし品目数はあくまで「値上げが決まった件数」であり、実際にどれだけ家計を圧迫するかは、その品目をどれだけ買っているか次第です。品目数の多さだけを見て過度に不安になったり、逆に「自分には関係ない」と油断したりするのは、どちらも実態とずれた反応になりかねません。
大切なのは、値上げのニュースに触れるたびに漠然と身構えるのではなく、自分の家計簿やレシートから、実際に何がどれだけ値上がりしたかを定点観測することです。特に調味料や冷凍食品のように毎日のように使う品目は、1回あたりの値上げ幅は小さくても積み重なると家計への影響が大きくなりやすいため、優先して確認しておきたいところです。
そのひと手間が、貯蓄ペースを守れる家計と、気づかないうちに崩してしまう家計の分かれ目になるのではないでしょうか。
