そろそろ実家や自宅の荷物を片付けたいけれど、年金暮らしの家計から業者への依頼費用は出しにくい、と感じていないでしょうか。

生前整理を業者に依頼した場合の費用は、間取り別の目安で2万5000円ほどから、一戸建てでは60万円を超えるケースまで幅があります。

一方で、不用品を売って現金化し、片付けを機に明確になった資産を「年間110万円の贈与税非課税枠」で子や孫に渡していけば、片付け費用を上回る資産防衛効果も見込めます。

しかも2027年(令和9年)以降、生前贈与を相続財産に加算する期間が段階的に7年へと延びていくため、早く動き出すほど有利になります。

本記事では、年金生活でも無理なく進められる生前整理の手順と業者費用の相場、そして最新の贈与税ルールを踏まえた資産整理の考え方を、公的資料と民間調査データをもとに整理します。

ココがポイント
  • 生前整理を業者に依頼する費用は間取り別で2万5000円〜60万円超が目安、抑えるコツもある

  • 実家の片付けを先送りした人が最も恐れるリスクは「将来の負担増」で38.0%にのぼる

  • 年110万円の生前贈与は非課税、2027年から相続前贈与の持ち戻し期間が段階的に7年へ延びる

1. そもそも生前整理とは?先送りが実家を「ゴミ屋敷化」させる年金世代の共通課題

生前整理とは、自分が元気なうちに自宅の物品や資産、権利関係を整理しておくことです。

これに対して、死後に遺族が行う「遺品整理」は、賃貸の退去期限や不動産売却のスケジュールに追われて急ぎで業者に一括依頼することが多く、費用が高額化しがちです。判断力があるうちに自分の意思で進める生前整理のほうが、費用を抑えやすく、家族への負担も軽くできます。

1.1 実家の片付けを先送りすると何が起きる?

実家の片付けは、親子双方にとって切り出しにくい話題です。

老人ホーム検索サイト『LIFULL 介護』の「帰省時の親の衰え・違和感についての意識調査」(2026年)によると、別居の親と直近で対面した子世代のうち、「強く感じることがあった」28.2%と「多少感じることがあった」46.0%を合わせて74.2%が親の衰えや違和感を実感していました。

しかし、異変に気づきながらも「特に何もせず、様子を見ることにした」と回答した人は約4割にのぼります。

その理由としては「衰えを指摘しても拒絶されると思った」12.6%、「親のプライドを傷つけると思った」12.1%など、親への遠慮が挙げられています。

一方、親世代側にも同様の遠慮があります。株式会社LIFULLの「介護のための同居に関する意識調査」(2026年3月実施)では、子と別居している50歳代以上の親世代の約8割(79.1%)が「子どもと同居したくない」または「できれば同居したくない」と回答しました。

理由は「子に介護による負担をかけたくない」84.1%が最多です。親子双方が相手を思いやりながら、遠慮から話し合いが先送りになっているのが実態です。

片付けを先送りした結果、実家が知らぬ間に「ゴミ屋敷化」してしまうケースも少なくありません。株式会社AlbaLinkの「実家のゴミ屋敷化に関する意識調査(※)」(2026年7月、実家がゴミ屋敷化した経験がある418人が対象)によると、ゴミ屋敷化した実家について最も恐れているリスクは「将来の負担増」で38.0%を占めました。「処分するのは自分たち」「手間と費用がかかる」といった、将来の実務的・金銭的負担への危機感がうかがえます。

ゴミ屋敷化の原因は「体力の低下」22.5%が最多で、「もったいない精神」16.5%が続きました。高齢になり体力が落ちると搬出やごみ出しは想像以上に大変な作業になり、そこに「捨てるのはもったいない」という価値観が重なるとモノが蓄積していきます。

元気なうちに親子で話し合い整理することは、子の将来の負担を防ぎ、親の安全を確保する共同プロジェクトといえます。

※出典元:事故物件・空き家の売却は訳あり物件買取プロ「【実家がゴミ屋敷化した理由は?】子ども世代418人のリアルな苦悩と対策をアンケート調査」

2. 生前整理を業者に依頼するといくら?間取り別費用相場と実例

自力での作業が難しい場合は、プロの業者を頼るのが現実的です。生前整理・不用品回収サービスを扱う業者各社が公表している費用相場(仕分け・搬出・処分費を含む目安)を確認すると、おおむね次のような幅に収まります。

間取り別・生前整理の費用相場(目安)1/2

間取り別・生前整理の費用相場の目安

出所:複数の業者公表情報をもとにLIMO編集部が独自集計・作成

  • 1K・1R:2万5000円〜8万円程度
  • 1DK・1LDK:5万円〜15万円程度
  • 2DK・2LDK:9万円〜30万円程度
  • 3DK・3LDK:15万円〜40万円程度
  • 一戸建て(4LDK以上):20万円〜60万円程度、荷物量によってはこれを超えることもある

荷物の量や作業環境(エレベーターの有無、駐車スペースなど)によって金額は変動します。

公的な統計はなく業者ごとの公表値であるため、実際に依頼する際は複数社から見積もりを取って比較することが欠かせません。

2.1 自分でできる「DIY生前整理」なら費用はどこまで抑えられる?

まずはご自身やご家族が中心となって自力で行う「DIY生前整理」から始めるのも一つの方法です。

「一軒家丸ごと片付けよう」とすると挫折しやすいため、引き出し1つなど1〜2時間で終わる小さな場所から、モノを「要(残す)」「不要(手放す)」「保留(迷う)」の3つに仕分けていきます。

保留にしたものは「半年後に見直して使わなければ手放す」と期限を決めておくと判断がスムーズです。

粗大ごみに出す前に「現金化」の検討も

不要になったものは、粗大ごみとして捨てる前に現金化を検討する価値があります。株式会社NEXERの「不用品処分の実態に関するアンケート」(2026年)によると、不用品の処分方法として「自治体の粗大ごみ」を選んだ人が30.8%と最多で、「面倒・困った」と感じた点として約62%が「運び出しが大変」と回答しています。

家具や家電、ブランド品などは自宅で査定・回収してくれる出張買取や、フリマアプリでの売却も選択肢の一つです。売れないものは自治体の粗大ごみ収集を利用すれば処分費用を抑えられます。不用品の現金化は処分費用を浮かせるだけでなく、後述する生前贈与の原資にもつながります。

2.2 モノの整理と同時に進めておきたい「情報・金融資産」の整理

モノの整理と同時に、預貯金口座の集約や保険証券・不動産権利書の保管場所の明確化、スマホやネット口座のパスワード整理といった「情報・金融資産の整理」も進めておくと、将来の相続手続きの手間を大きく減らせます。

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出所:LIMO編集部作成

出所:LIMO編集部作成

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

生前整理の見積もりを比較していると、「一番安い業者に即決したら、当日になって『思ったより荷物が多い』を理由に追加料金を請求された」という相談をよく見かけます。

料金は基本的に荷物の体積と作業時間で決まるため、見積もり時点で新聞や衣類など自分で処分できるものを事前に片付けておくと、当日の作業量そのものを減らせます。

また、安さだけで比較するのではなく、「追加料金が発生しない確定見積もりを書面で出してくれるか」を必ず確認してください。買取査定額をその場で片付け費用から差し引いてくれる業者を選べば、実質の手出し費用をさらに抑えられます。