4. 業者選びで失敗しないために知っておきたい注意点は3つある
プロに依頼する場合、料金だけでなく業者の信頼性を見極めることが年金生活の家計を守る防衛策です。契約前に、次の3点を確認しておきましょう。
1つ目は、一般廃棄物収集運搬の許可(または許可業者との提携)や古物商許可を正式に取得しているかどうかです。無許可の業者に依頼すると、不用品が不法投棄されるなどのトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
2つ目は、作業内容と料金の内訳が細かく記載された、書面の契約書を発行してもらえるかという点です。独立行政法人国民生活センターも、遺品整理サービスをめぐって「見積もり時と実際の請求額が異なる」といった契約トラブルの相談が寄せられているとして注意を呼びかけています。
3つ目は、ホームページ等に所在地や代表者名、料金体系がきちんと明記されているかを確認しましょう。
見落としがちなのは、「相見積もりを取ったから安心」とは限らないという点です。3社から見積もりを取っても、いずれも口頭やメールの概算にとどまり、書面での確定見積もりを交わしていなければ、当日の追加請求を防げません。金額の安さだけでなく、書面の有無まで踏み込んで比較することが、不透明な業者を避ける確実な防衛策といえます。
5. 片付けで明確になった資産を「年110万円の非課税枠」でどう活かす?
生前整理の最大のメリットは、「モノの整理」と「お金の整理(生前贈与)」を組み合わせられることです。
不用品を片付け、総資産をクリアにすることは、国が認める非課税枠を活用した資産シフトのスタートラインといえるでしょう。
日本の税制では、1人が1年間(1月1日〜12月31日)に贈与を受けた財産の合計額のうち、110万円までは贈与税がかからない「基礎控除」があります(暦年課税)。子や孫それぞれに毎年110万円ずつ贈与していけば、贈与税をかけずに資産を引き継ぐことができます。
たとえば子1人と孫1人に、毎年110万円ずつ5年間贈与を続けた場合、非課税で移転できる資産は年220万円、5年間の合計で1100万円になります。
5.1 相続前贈与の持ち戻し期間はいつから7年になる?
暦年贈与を活用するうえで知っておきたいのが、国税庁が示す持ち戻し期間の延長です。
従来、亡くなる直前3年間の暦年贈与財産は相続税の対象として相続財産に加算されていましたが、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、この加算対象期間が段階的に7年間へと延長されています。
具体的には、2026年(令和8年)12月31日までの相続開始分は従来どおり3年間が対象です。
2027年(令和9年)1月1日以降、加算対象期間が段階的に延び、2031年(令和13年)1月1日以降に発生する相続からは完全に7年間が対象となります。なお、延長された4年間分の贈与については、合計100万円までは加算対象から除かれる措置があります。
直前の駆け込み贈与では節税効果が制限されるため、「生前贈与は元気なうちから早く始めるべき」という重要性が増しています。
5.2 暦年贈与と相続時精算課税、どちらを選ぶべき?
持ち戻しを避けたい場合のもう一つの選択肢が「相続時精算課税制度」です。令和6年の税制改正で、この制度にも新たに毎年110万円の基礎控除が設けられ、令和6年1月1日以後の贈与から適用されています。この基礎控除内の贈与分は、相続時の持ち戻し(加算)が不要で、贈与を受けた側の財産として確定します。
- 暦年贈与:年110万円まで非課税。ただし亡くなる前の贈与は相続財産に加算(現行3年、2031年以降は7年に段階的延長)
- 相続時精算課税:年110万円まで非課税かつ持ち戻し不要。ただし一度選択すると同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない
どちらが有利かは資産の規模や今後の贈与計画によって変わるため、実際に選ぶ前に税務署や税理士など専門家に相談することをおすすめします。
生前整理を行うことで、こうした非課税制度を活用する流れが作りやすくなります。不用品の売却や休眠口座の集約、保険の解約返戻金の確認などで資産状況をクリアにし、明確になった資産から毎年少しずつ非課税枠の範囲で子や孫へ贈与していく。
業者に生前整理を依頼して仮に30万円の費用がかかったとしても、それをきっかけに資産を整理し、非課税贈与を続けられれば、片付け費用を上回る資産防衛効果が生まれます。
6. まとめにかえて|年金生活でも今日から始める生前整理
生前整理は、これからの暮らしを安全に、子どもに負担をかけずに過ごすための備えです。
データが示すように、親は子に負担をかけたくないと願い、子は片付けの負担を不安に感じています。
遠慮から先送りし、実家がゴミ屋敷化したり資産の全体像が見えないままになったりしてからでは、取り返しのつかない労力と費用がかかりかねません。
まずは引き出し1つのDIY整理から始めてみてはいかがでしょうか。
7. 筆者からのコメント
生前贈与をどのように進めるのがベストかは、ご家庭の資産状況や、ご家族のこれからの暮らし方によって本当に様々です。
目先のやりやすさだけで決めてしまう前に、将来のことも見据えながら、わが家にぴったりな方法をじっくり見つけることが大切になります。
「うちの場合はどう進めるのがいいのかな?」と少しでも迷われたら、まずは早めに税理士など専門家に相談してみると、すっきり安心できますよ。
参考資料
- 国税庁「令和5年分贈与税の申告のしかた」(生前贈与加算の延長・相続時精算課税の基礎控除に関する改正部分)
- 株式会社LIFULL「帰省時の親の衰え・違和感についての意識調査」
- 株式会社LIFULL「介護のための同居『したくない』が子世代は約6割、親世代は約8割を占める」調査結果
- 株式会社AlbaLink【実家がゴミ屋敷化した理由は?】子ども世代418人のリアルな苦悩と対策をアンケート調査
- 事故物件・空き家の売却は訳あり物件買取プロ
- 株式会社NEXER「不用品処分の方法、1位は『自治体の粗大ごみ』。面倒・困ったと感じたこと、約62%が『運び出しが大変』と回答」
- 独立行政法人国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」
