2026年10月15日は木曜日です。年金の支給日にあたります。
年金の支給開始年齢は基本的に65歳からですが、では、年金を受け取る権利がある方のうち、受け取りを遅らせる「繰下げ」を選んだ人はどれくらいいるでしょうか。
繰下げは、受け取り年齢を遅らせるほど年金が増える仕組みです。75歳まで待てば原則84%増えます。増やす方法として、これほど分かりやすいものはなかなかありません。
ところが厚生労働省の最新の集計を見ると、老齢厚生年金で繰下げをしている人は1.9%でした。52人に1人です。しかも、実際に多いのは繰下げではなく、その反対の「繰上げ」のほうでした。繰下げにはメリットもあればもちろんデメリットや注意点もあります。今回は、公的年金の仕組みと平均額を確かめたうえで、この数字を見ていきます。
なお、公的年金の制度や平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. まず仕組みから。公的年金は2階建て
数字を見る前に、土台を確かめておきます。
【1階部分】国民年金(基礎年金)の概要
- 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
- 保険料:国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
- 受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)
【2階部分】厚生年金の概要
- 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
- 保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています(※2)
- 受給額:加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます
※1 特定事業所:1年のうち6カ月以上、適用事業所における厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く、共済組合員を含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて算出されます。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
1階の国民年金には、職業などによって3つの区分があります。第1号被保険者は自営業者・学生・無職の方などで、保険料を自分で納めます。第2号被保険者は会社員・公務員の方などで、勤め先を通じて給料から天引きされます。第3号被保険者は、国内に居住していて第2号被保険者に扶養されている配偶者で、保険料の自己負担はありません。引用にある「国民年金に上乗せして加入」にあたるのが、この第2号です。
引用の最後の行が、この記事の話につながります。厚生年金の受給額は、加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じる、と書かれています。同じ「年金」という言葉でも、中身は人によって違うということです。
この2階建てが、受け取る額の差にそのまま表れます。会社員として長く働いた方は1階と2階の両方を受け取り、自営業や専業主婦(夫)の期間が長い方は1階だけということになります。
そして繰上げ・繰下げは、この1階と2階のそれぞれについて選ぶことになります。日本年金機構は、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げできると案内しています。いっぽう繰上げのほうは、原則として同時に請求する必要があります。ここも扱いが違う点です。
もう一つ、数字を読むうえでの言葉を決めておきます。この記事の人数と平均額は、すべて「受給権者」を数えたものです。年金を受け取る権利がある方のことで、権利はあっても全額支給停止になっている方も含みます。実際に支払われている「受給者」とは数が少し違います。繰上げ・繰下げの集計が受給権者で作られているため、平均額のほうもそちらにそろえました。
2. 平均月額は厚生年金15万289円、国民年金5万9310円。男女差は5万8554円
次に、いま受け取られている額を見ておきます。まず平均の姿から確かめます。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和6年度末時点で、厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者は1608万5696人、その内訳は男子1067万9944人と女子540万5752人です。人数にも2倍近い開きがあります。国民年金のほうは老齢年金の受給権者が3345万4617人で、内訳は男子1440万6115人、女子1904万8502人。こちらは厚生年金とは逆に、女子のほうが多くなっています。
引用にある「国民年金の金額を含む」という但し書きが大事です。厚生年金の15万289円は1階と2階の合計で、厚生年金だけの額ではありません。ここを取り違えると、自分の位置がずれて見えます。
人によって大きな差が生じるは男女の間でも起きています。厚生年金の差は5万8554円、国民年金の差は4013円です。
2つを並べると、男女差がどこから生まれているかが見えてきます。1階部分の国民年金では男女差が4000円ほどしかないのに、1階と2階の合計では5万8554円まで開きます。差がついているのは2階部分、つまり厚生年金に加入して働いた期間と、その間の報酬ということになります。
この平均額を頭に置いたうえで、繰下げの話に進みます。増額率は一定でも、もとの額が違えば増える金額も変わるからです。

