4. 2026年度年度、年金額はどれだけ増えた?

日本年金機構によると、令和8年4月分からの年金額は、国民年金(老齢基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。老齢基礎年金の満額は月7万608円(年84万7296円)です。

夫婦2人分の老齢基礎年金を含む厚生年金のモデル年金額(平均的な収入で40年間就業した場合の標準的な年金額)は月23万7279円で、前年度の23万2784円から4495円の増加となっています。

5. その増加分、健康維持費の伸びに追いつくか?

無職世帯が公的年金給付のうち健康保持用摂取品に充てている割合は、年代によって0.6~0.8%程度です。仮にこの割合をそのままモデル年金の増加分(月4495円)に当てはめると、摂取品に回せる分は月30円前後という計算になります。

もちろん実際の家計では、年金の増加分をそのままサプリメント代に配分するわけではありません。ただ、年金額の改定が話題になるたびに「増えた分で生活にゆとりが出る」と受け止めがちな一方、費目ごとに切り分けてみると、健康維持費に回せる余地はごくわずかであることがうかがえます。

5.1 摂取品と付き合う前に知っておきたい注意点が3つある

年金と健康維持費の数字を確認するうえで、見落としやすい点が3つあります。

1つ目は、機能性表示食品などの健康被害情報の報告制度についてです。消費者庁と厚生労働省の資料によると、機能性表示食品や特定保健用食品の届出者・許可取得者には、令和6年9月1日から、医師が診断した健康被害を都道府県知事等に報告する義務が課されています。ただしこの制度は、あくまで健康被害が発生した際に速やかに把握・報告させるための仕組みであり、販売前の安全性を保証するものではありません。「機能性表示食品だから安心」と即断しないことが大切です。

2つ目は、家計調査の年代別データには集計世帯数の差があることです。無職世帯のうち59歳以下は集計世帯数が62世帯と少なく、他の年代(数百世帯規模)に比べて数値が振れやすい点には注意が必要です。

3つ目は、モデル年金の増加額がそのまま健康維持費の伸びに直結するとは限らないことです。無職世帯の消費支出は平均で月26万5439円あり、健康保持用摂取品はそのうちの0.6%程度にすぎません。年金額の改定は家計全体のごく一部にしか影響しない費目にも目を向けたうえで、判断する必要があります。

6. まとめにかえて|年金と健康維持費、両方の実態を数字で確認する

無職世帯が健康保持用摂取品、いわゆるサプリメントに使う金額は月平均1534円で、70歳代前半の1637円がもっとも高く、75歳代でいったん減ってから80歳代以降に再び増えるという、単純ではない動きを見せています。

令和8年度は年金額が国民年金1.9%、厚生年金2.0%引き上げられ、モデル年金は月4495円の増加となりました。ただし、この増加分がそのまま健康維持費の伸びに充てられるとは限らず、税・社会保険料の負担も含めた手取りベースでの確認が欠かせません。

まずは日本年金機構の「ねんきんネット」で自分の年金見込み額を確認し、家計簿などで健康関連費の推移を把握しておくことが、この先の家計管理の助けになりそうです。

7. 【筆者コメント】

熊谷 良子

年金額が引き上げられると聞くと、その分だけ自由に使えるお金が増えると考えがちですが、実際はそう単純ではありません。

年金にも所得税や住民税、後期高齢者医療制度をはじめとする社会保険料がかかるため、額面の改定率がそのまま手取りの増加率になるわけではない点は見落とされがちです。加えて、家計調査の消費支出全体(無職世帯平均で月26万5439円)に対して、健康保持用摂取品はわずか0.6%程度を占めるにすぎず、年金の増減が直接この費目の使い方を左右するとは限りません。

実際にどれだけ変わったかは、毎年6月頃に日本年金機構から送られる「年金振込通知書」や、日々の見込み額を確認できる「ねんきんネット」で、額面と手取りの両方を確認できます。

年金額の見直しがあった年こそ、家計全体の中でどの費目にどれだけ配分されているかを、ご自身の家計簿などで確認しておくとよいでしょう。

参考資料