4. 貯蓄はどれくらい? 「平均2416万円」と「中央値1178万円」の差
車の維持費が家計に与える重みは、手元にどれだけの貯蓄があるかによっても変わってきます。金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額は次のとおりです。
- 平均値:2416万円
- 中央値:1178万円
平均値と中央値の間に1000万円以上の差があるのは、資産の多い一部の世帯が平均値を押し上げているためです。「ふつう」の世帯の実感に近いのは、多くの場合、中央値の方だとされています。
15年間の自動車関連費の総額(326万円)は、貯蓄中央値1178万円の約3割弱に相当する規模です。自動車関連費は年金収入からも支払われるため、この326万円がそのまま貯蓄から失われるわけではありませんが、貯蓄水準と比べても、車の維持費が家計に与える影響は決して小さくないことがわかります。
5. 住み替えや車を手放す判断の前に、確認しておきたいこと
ここまで車の維持費を中心に見てきましたが、車を手放すとなると、駅から遠い実家に今後も住み続けるかどうかも合わせて考えることになるケースが少なくありません。
「駅近に住み替えれば家計がラクになるはず」「車さえ手放せば安心」といった考え方をされる方は少なくありません。しかし、住み替えや車の売却によって実際にいくらの収支変化が生じるかは、家賃相場・修繕の要否・土地の実勢価格など、世帯ごとの個別条件に大きく左右されます。
家計調査の「住居関係費」は、持ち家であれば固定資産税や小規模な修繕費が中心ですが、賃貸に住み替えれば家賃が新たに全額発生します。逆に持ち家では、外壁や水回りなど大規模な修繕が必要になる時期には、まとまった支出が一時的に発生します。どちらの負担がどれだけ重いかは、実際に見積もりを取らなければ正確にはわかりません。
内閣府「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」でも、高齢期の自動車利用や住まいの選択は、身体機能や生活環境によって個人差が大きいことが指摘されています。
「なんとなく現状維持」でも「なんとなく住み替え」でもなく、車検証・保険証券・固定資産税の納税通知書といった実際の書類、そして複数の物件の見積もりを突き合わせて、ご自身の家計での実額を確認することが欠かせません。
6. まとめにかえて|実データで確認できた3つのこと
今回、家計調査などの公的統計を確認し直した結果、次の3点がわかりました。
1つ目は、高齢無職世帯の赤字(15年間で約598万円)のうち、半分以上(約54%)を自動車関連費が占めているということです。
2つ目は、その自動車関連費は年齢とともに実額でも下がっていくものの、それは運転をやめる世帯が増えていくことを含んだ全国平均であり、乗り続ける世帯の実際の負担は平均より重くなり得るということです。
3つ目は、70歳代の金融資産保有額は平均2416万円・中央値1178万円と大きな開きがあり、車の維持費という同じ金額でも、世帯によって家計への重みがまったく異なるということです。
車を維持するか手放すか、住み替えるかどうかは、どちらか一方が万人にとっての正解ではありません。
大切なのは、感情論で先延ばしにするのではなく、ご自身やご家族の車検証・保険証券・貯蓄額といった実際の数字を照らし合わせたうえで、健康面・認知面とも相談しながら検討していくことでしょう。
7. 【筆者コメント】
前半では車をめぐる気持ちの面に触れましたが、ここからは実務的な確認のポイントをお伝えします。あらためて公的統計だけを見直してみると、「駅近に住み替えれば家計がラクになる」とも「車さえ手放せば安心」とも、一概には言えないことがわかります。
持ち家の維持費も、賃貸の家賃も、修繕のタイミングや物件の条件によって金額は大きく変わり、平均値だけでどちらが得かを断定することはできません。
本文で紹介した70歳代の貯蓄額も、平均2416万円に対して中央値は1178万円と、世帯による差がとても大きい数字です。ご自身の場合はどうなのか、まずは車検証や保険証券、固定資産税の納税通知書など、手元にある実際の書類で確認することから始めてみてください。
住み替えを検討する際は、複数の物件で実際の見積もりを取り、ご自身の場合の数字と比較しながら判断されることをおすすめします。
「なんとなく不安」を「具体的な数字」に置き換える作業は手間がかかりますが、家族で話し合う際の土台にもなります。焦って結論を出す前に、まずは実額の把握から始めてみてください。
