医療費と介護費用の自己負担額を1年単位で合算する仕組みは、毎年8月1日から翌年7月31日までを計算期間としています。8月は、その新しい計算期間が始まる月にあたります。
仕組みの中身を確かめてから決める、という順番は、公的な制度でも、自分で契約したものでも変わりません。公的な給付の多くは、要件を満たしていても自分で請求しないと支給が始まらず、上限や払い戻しの仕組みも、どこまでが対象なのかを確かめないと見えてきません。この記事では、老齢年金に上乗せされる2つの給付、働き方が変わる時期に関わる雇用保険の3つの給付、医療・介護・生活の負担に区切りをつける仕組み、2025年に成立した年金制度改正で示された見直しを順に整理します。そのうえで、自己負担に上限を設ける仕組みが働いた場合と働かなかった場合で、1年間の負担がどう変わるかを独自に試算します。
なお、60歳・65歳以上の方が対象となる公的給付金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 申請しなければ始まらない公的なお金|要件を満たすことと、受け取ることの違い
老齢・障害・遺族といった公的年金は、暮らしの大きな支えになる仕組みです。ただ、受給資格があるからといって、自動的に振り込みが始まるわけではない点に注意が要ります。
1.1 年金の受け取りは「年金請求書」を出すところから動き出す
受け取りを始めるには、自分自身で「年金請求書」を提出し、請求の手続きを行う必要があります。
国や自治体の給付金・補助金も同じ組み立てで、基本的には申請とセットになっています。期限に間に合わなかったり、書類が不足したりすると、受給額が減る、あるいは受け取れなくなるといった不利益が生じる可能性もあります。
1.2 制度ごとに窓口が分かれていることが、気づきにくさにつながる
ここで扱う仕組みは、年金事務所、ハローワーク、市区町村と、所管する窓口がそれぞれ異なります。ひとつの窓口ですべてを確かめられる形にはなっていないため、自分がどれに関わるのかを把握しにくい構造になっています。
60歳・65歳以上の方が対象となる公的給付金の全体像については、次の記事で網羅的に解説されています。
【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説
2. 【老齢年金】請求してはじめて加わる2つの上乗せ|加給年金と老齢年金生活者支援給付金
老齢年金を受け取っている方が一定の要件を満たす場合に、本体の年金にプラスして受け取れる仕組みが2つあります。順に見ていきます。
2.1 「加給年金」は年金版の家族手当にあたる上乗せ
加給年金は、厚生年金に20年以上加入していた方が65歳になった際、生計を維持している年下の配偶者や子どもがいる場合に加算される仕組みです。年金版の家族手当のような役割を持っています。
加給年金の支給要件として示されているもの
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
それぞれ上記のタイミングで、「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合に、年金へ上乗せされます。
ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)、退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受給する権利がある場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受給している場合には、配偶者加給年金額は支給停止されます。
2026年度に示されている加給年金の額
加給年金の年金額(2026年度の年額)は次のとおりです。
- 配偶者:24万3800円
- 1人目・2人目の子:各24万3800円
- 3人目以降の子:各8万1300円
配偶者分については、これに加えて特別加算額が支払われる場合があります。金額は老齢厚生年金を受給中の人の生年月日によって決まり、3万6000円から17万9900円までの幅があるとされています。同じ配偶者分の加算でも、受け取る額は一律ではないということです。
配偶者側の年金へ引き継がれる「振替加算」
配偶者が65歳を迎えると、加給年金そのものはそこで終わります。ただし、一定の要件にあてはまる場合には、今度は配偶者自身の老齢基礎年金の側に「振替加算」という名前で一定額が加わる組み立てになっています。加算が消えるのか、形を変えて続くのかは要件次第です。
2.2 「老齢年金生活者支援給付金」は所得が基準を下回る場合の上乗せ
老齢年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金を受給している方のうち、所得や世帯収入が一定の基準を下回る場合に、生活の底上げを目的として支給されるものです。年金本体とは別の法律に基づいて支給される給付金という位置づけになっています。
対象になる人として示されている条件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)である
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
2026年度の給付基準額と、金額の決まり方
2026年度、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円で、前年度より3.2%増額されました。この基準額をもとに、保険料の納付状況等に応じて給付額が算出されます(下記①と②の合計額)。
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
※保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変わります。
3. 【雇用保険】働き方が変わる時期に関わる3つの給付|再就職手当・高年齢雇用継続給付・高年齢求職者給付金
働き続ける方が気になる、就労に関連する給付金や手当についても見ていきます。シニアの就労を支援する仕組みは整いつつありますが、一般的には60歳を境に収入が下がる傾向があります(※)。また、就職活動や就労の継続が、若い頃と同じようにスムーズに進む方ばかりではないでしょう。
※国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による年齢階層別の平均給与:50歳代後半男性735万円、女性356万円、60歳代前半男性604万円・女性294万円、60歳代後半男性472万円・女性240万円
3.1 早期に再就職した65歳未満の方に向けた「再就職手当」
再就職手当は、早期の再就職を促す目的で設けられた手当で、「失業から再就職まで」「失業から事業開始まで」の期間が短いほど支給額が多くなる組み立てになっています。
再就職手当の支給要件として示されているもの
- 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
支給残日数によって変わる給付率
- 手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なります。(1円未満の端数は切り捨て)
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の60%」
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「支給残日数の70%」
なお、再就職手当を受け取り再就職先で6カ月以上雇用され、かつ再就職先での6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも少ない場合は、「就業促進定着手当」の対象となります。
3.2 「高年齢雇用継続給付」が関わるのは60歳から65歳未満で働き続ける期間
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が就労を続ける際、賃金が60歳到達時よりも減少した場合に支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付の支給要件として示されているもの
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
支給率は段階的に見直されている
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%
老齢年金を受給しながら、厚生年金に加入して高年齢雇用継続給付を受け取る場合には、在職による年金の支給停止に加え、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する金額が支給停止となる点に留意しておく必要があります。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は6%
3.3 「高年齢求職者給付金」が関わるのは65歳以上での離職
高年齢求職者給付金は、65歳以上で失業の状態になった方に支給されるものです。
高年齢求職者給付金の支給要件として示されているもの
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
- 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
- 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す
被保険者であった期間で変わる支給日数
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
なお、65歳未満が受け取る失業手当は4週間に一度ずつ失業認定を受けてから給付されるのに対し、この高年齢求職者給付金は一括で支給されます。
3.4 手続きの順番しだいで受給総額が変わりうる60歳代前半
65歳未満に支給される「特別支給の老齢厚生年金」は、ハローワークで手続きをして雇用保険の基本手当(失業手当)を受給すると、全額支給停止となります。止まるのは、求職の申込みを行った日の属する月の翌月から、失業給付の受給期間が経過する月と所定給付日数を受け終わる月のうち早いほうの月までの期間です。失業手当の日額より年金の方が高かった場合には、結果的に受給総額が目減りするケースもあり得ます。
一方、65歳到達日以後に退職した場合は「高年齢求職者給付金」となりますが、65歳以降の老齢年金は雇用保険の給付と調整されないため、同時に満額受給できます。65歳未満での受給とは扱いが大きく異なる部分です。
4. 【医療・介護・生活】家計の負担に区切りをつける4つの仕組みと、その外側にある費用
医療費と介護費用は、年齢が上がるほど家計に占める比重が増していく支出です。公的医療保険や介護保険の側には、そうした出費に対して、自己負担に上限を置く仕組みや、あとから払い戻す仕組みが設けられています。ただし、それぞれの上限が何を対象にしているのかは制度ごとに異なります。
4.1 ひと月の医療費に上限をかける「高額療養費制度」
月の初めから終わりまでにかかった医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じて定められた「自己負担限度額」を超えた場合に、超えた金額があとから払い戻される仕組みです。
限度額は所得の区分によって、下記のように示されています。
一般的な所得層(70歳未満・年収約370万〜約510万円)の場合、ひと月の自己負担限度額の基本は「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」となります。
どの区分に該当するかは、年齢・所得・加入している公的医療保険によって一人ひとり異なります。区分や金額を自分で判断せず、加入している公的医療保険の窓口や市区町村で確かめる前提でお読みください。
気をつけたいのは、事前の手続きをしていないと、退院時に窓口でいったん大きな金額を立て替える形になり、払い戻しを受けられるのが3〜4ヶ月後になるという点です。2026年現在は、マイナ保険証を使うか、あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受けておくことで、窓口での支払いをはじめから上限額の範囲に収める形にできるとされています。
4.2 「高額介護サービス費」が上限をかけるのは介護サービスの自己負担
介護保険サービスを利用して支払った1ヶ月の自己負担額(1割〜3割)の合計が、所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。
ここで見落とされやすいのは、「介護施設での食費・居住費(部屋代)・日常生活費」や「特定福祉用具購入費・住宅改修費」は、この計算対象から完全に除外されるという点です。
「高額介護サービス費があるから、特別養護老人ホームに入っても月額数万円で済む」という読み方のまま資金を見積もっていると、対象外となる食費や居住費が毎月10万円以上のしかかり、用意した資金では足りなくなることがあります。上限があるのは介護サービスの自己負担分であって、生活にかかる費用のすべてではない、という区別が要ります。
4.3 医療と介護を年単位で合算する「高額医療・高額介護合算療養費制度」
毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間について、医療費と介護費用の自己負担額を世帯でまとめて足し合わせ、基準額を上回った分の払い戻しを受けられる仕組みです。ひと月単位ではなく年単位で見る点が、これまでの2つと異なります。
集計の単位が年ごとになるぶん、ふだんの意識には上りにくいのですが、支給の対象となる世帯には、原則として医療保険者から案内が送られてきます。ただし、「75歳になり後期高齢者医療制度に移行した」「退職して会社の健康保険から国民健康保険に切り替わった」といった保険の異動が計算期間の途中で起きると、データがつながらないために案内が届かず、過去の保険者へ自分で申請して合算手続きを取らないかぎり、時効(2年)を迎えて権利が失われる場合があると説明されています。案内が届かないこと自体は、対象外である証明にはならないということです。
4.4 「臨時給付金・自治体の支援」と住民税非課税世帯の判定
政府や自治体が、物価高騰への対策という位置づけで、住民税非課税世帯に7万円や10万円の臨時給付金を支給する場合があります。財源にあてられるのはその時々の補正予算や地方交付金で、常に用意されているものではなく一時的なものという性格です。
判定で見落とされやすいのが、「住民税が課税されている方(別居の家族などを含む)の税法上の扶養親族等のみで構成されている世帯」の扱いです。世帯分離をして住民票の上では非課税の単身世帯になっていても、この場合は給付の対象外(不該当)とされます。住民票にどう記載されているかではなく、税法上の扶養がどうなっているかが、判定を左右するということです。
住民税非課税世帯にあたる収入の基準や、対象となる優遇の中身についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイド
5. 年金制度改正法で示された見直し|遺族厚生年金の男女差と、在職老齢年金の基準額
「年金制度改正法」は2025年6月に成立しました。その大きな狙いのひとつに挙げられているのが、多様化した働き方や家族構成に年金制度を合わせていくことです。具体的な中身としては、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関わる社会保険の加入要件の拡大と、遺族年金についての見直しが盛り込まれています。
5.1 男女差をなくす方向で進む「遺族厚生年金」の見直し
遺族厚生年金の現行の組み立てには、受給者が男性か女性かによって、次のような差が置かれていました。
現行の遺族厚生年金の組み立て
- 女性
- 30歳未満で死別:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別:給付なし
- 55歳以上で死別:60歳から無期給付
この男女差を解消するための見直しについては、2028年4月からの施行が予定されているとされています。
2028年4月から施行が予定されている仕組み
どういう方が「原則5年間の有期給付」にあたるのかという要件は、男女それぞれについて細かく定められています。
- 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です。(※既に遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません。)
- 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です。
- こどもがいる場合:18歳年度末までのこどもがいる場合は、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。
5.2 拡充が示された有期給付と継続給付の中身
支えが要る状況に置かれた方への給付についても、どの程度の金額になるのか、どういう要件を満たす必要があるのかが具体的に示されています。
- 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
- 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、概ね月額20〜30万円を超えると全額支給停止となります。
今回の改正には、遺族基礎年金の見直しも同時に盛り込まれています。これまで同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースについても、2028年4月からは、こども自身が単独で遺族基礎年金を受け取れる形になるとされています。
5.3 減額の基準額が引き上げられた「在職老齢年金」
「在職老齢年金」は、働きながら年金を受け取ると年金が減額される仕組みです。これについては就労意欲を阻害しているとの指摘があり、減額される基準額が65万円へ引き上げられました。
これらは施行の時期が先の内容を含みます。制度の内容は改正されることがあり、要件や金額は人によって変わるため、最新の内容は年金事務所など所管の窓口でご確認ください。
6. 制度でも契約でも、仕組みを確かめてから決めるという順番は変わらない
ここまで、公的な制度のなかで申請や確認が要るものを見てきました。年金の上乗せ、雇用保険の給付、医療・介護の上限、臨時の給付金と、管轄も手続きもそれぞれ異なりますが、共通しているのは、その仕組みがどこまでを対象にしているのかを確かめないと、自分にとって何が起きるのかが見えてこない、という点です。
この順番は、公的な制度に限った話ではありません。自分で契約する保険や、これから始めようとする運用のものについても、決める前に確かめておける事柄があります。受け取るのはいつなのか、受け取る形はどうなっているのか、途中でやめたときにどう扱われるのか、費用はどこで発生するのか。こうした点は、契約する前に渡される書面のどこかには書かれていても、意識して確かめない限り目に入ってきません。
公的な給付との違いとして押さえておきたいのは、金額が決まっているのか、そのときの状況によって変わるのかという点です。運用の仕組みが組み込まれたものには価格変動リスクがあり、値動きや為替の動きによって受け取る額が変わり、元本割れとなる可能性もあります。上限や基準額が定められている公的な制度とは、そこが大きく異なります。
確かめる先は、公的な制度であれば年金事務所・ハローワーク・市区町村といった所管の窓口です。自分で契約するものであれば、契約前に渡される書面や、契約先の窓口ということになります。どちらも、確かめてから決めるという順番は同じで、確かめる先が違うだけだと整理できます。
7. 手続きの前後で挙がりやすい3つの疑問
ここでは、公的な給付の手続きに関して相談の場で挙がりやすい質問を3つに絞って整理します。どれも当てはまるかどうかはその人の状況によって異なりますので、最終的な判断は所管の窓口で確かめていただくものとしてお読みください。
7.1 配偶者の社会保険の扶養には、失業手当を受け取っている間も入れるのか
分かれ目になるのは、失業手当(基本手当)の「日額」がいくらかという点です。失業手当は非課税であるため所得税の計算には入りませんが、健康保険の扶養審査では収入として厳格にカウントされます。日額が60歳未満で3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上で5000円(年収換算180万円未満)を超えていると、手当を受給している期間中は配偶者の扶養に入ることができず、自分で国民健康保険に加入して保険料を納める形になります。
7.2 給付金の案内が役所から届かない場合、対象外と考えてよいのか
案内が届くかどうかと、対象かどうかは別の話です。年金生活者支援給付金のようにハガキが送られてくるものもある一方、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当などは、いずれも自己申告(申請主義)の仕組みになっています。条件にあてはまっていても、役所の側から知らせが来ることはありません。年金事務所やハローワークへ自分で足を運び、対象になるのかどうかを尋ねるところから手続きが動き出します。
7.3 失業手当と特別支給の老齢厚生年金は、どちらを選んだほうがよいのか
ご自身の年金額と、失業手当の日額・給付日数を並べて計算してみないことには、どちらとも言えません。現役時代の給与が高く失業手当の日額も高くなる方であれば、ハローワークで手続きをしたほうが多くなります。逆に、給与が低めで年金加入歴が長い方の場合は、失業手当を受けずに年金を受け取り続けたほうが総額で上回ることもあります。退職の前に最寄りの年金事務所で年金見込額を出してもらい、ハローワークの失業手当計算ツール等で試算してみる、という進め方があります。
8. 【独自試算】自己負担に上限を設ける仕組みが働いた場合と、働かなかった場合で、1年間の負担はどう変わるか
ここまで見てきたとおり、医療費には、ひと月の自己負担に上限を設ける高額療養費制度があります。では、その上限が働いた場合と、手続きをせずに働かなかった場合とで、1年間の負担の見え方はどう変わるのでしょうか。ここでは、この記事で引用した記事にある金額だけを使って、その差の出方を確かめてみます。
前提は次のとおりです。どの所得区分に該当するか、限度額がいくらになるかは、年齢・所得・加入している公的医療保険によって人それぞれ変わります。ここではあくまで「仮に該当した場合」という置き方で計算しています。制度の内容は改正されることがあり、区分や金額は人によって変わるため、最新の内容は加入している公的医療保険の窓口や市区町村でご確認ください。
- 限度額は、引用した記述にある「一般的な所得層(70歳未満・年収約370万〜約510万円)の場合、ひと月の自己負担限度額の基本は『約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%』」をそのまま使う
- ひと月の医療費は、この記述に出てくる28万6000円を起点に、その2倍・5倍・10倍にあたる金額を並べる
- 上限が働いた場合の1年間の負担は、上記のひと月の限度額が12カ月とも続いたものとして計算する(実際にこの水準が1年間続く状況を想定したものではなく、上限がどこまで効くかを見るための置き方)
- 税金・社会保険料や、月をまたぐ扱いは考えない。介護費用は別に扱う
ケース1:ひと月の医療費が28万6000円だった場合
- ひと月の限度額 = 約8万5800円(28万6000円を超えた分がないため、加算は生じない)
- 12カ月分に直すと 約102万9600円
ケース2:ひと月の医療費が57万2000円(起点の2倍)だった場合
- 超えた分28万6000円の1%=2860円 → ひと月の限度額は 約8万8660円
- 12カ月分に直すと 約106万3920円
ケース3:ひと月の医療費が143万円(起点の5倍)だった場合
- 超えた分114万4000円の1%=1万1440円 → ひと月の限度額は 約9万7240円
- 12カ月分に直すと 約116万6880円
ケース4:ひと月の医療費が286万円(起点の10倍)だった場合
- 超えた分257万4000円の1%=2万5740円 → ひと月の限度額は 約11万1540円
- 12カ月分に直すと 約133万8480円
この4つのケースで動いているのは、ひと月の医療費だけです。28万6000円から286万円へと10倍になっていますが、上限が働いている場合の1年間の負担は、約102万9600円から約133万8480円へ、約30万8880円増えたにとどまりました。医療費が10倍になっても、上限のなかでの増え方は超えた分の1%にしか反映されない組み立てになっているためです。
一方、この上限が働かなかった場合、つまり払い戻しの手続きをしなかった場合には、窓口で支払った額と限度額との差額がそのまま負担として残ります。その差は、医療費が大きい月ほど開いていきます。引用元となる記事では、事前の手続きをしていないと退院時に窓口で大きな金額を立て替える形になり、払い戻しを受けられるのは3〜4ヶ月後になると説明されています。上限が働くかどうかは、金額そのものよりも、手続きをしているかどうかで決まる部分があるということです。
あわせて見ておきたいのが、上限の外側にある費用です。高額介護サービス費の説明にあったとおり、介護施設での食費・居住費・日常生活費や、特定福祉用具購入費・住宅改修費は、上限の計算対象から除外されます。対象外の食費や居住費は毎月10万円以上加算されることがあるとされており、単純に12カ月分に直せば年120万円以上が上限とは別に積み上がる計算になります。ケース1で見た「上限が働いた場合の1年間の医療費負担 約102万9600円」と並べると、上限の内側にあるか外側にあるかで、1年の負担の見え方が大きく変わることが分かります。
この試算は一定の条件を置いた目安であり、実際の限度額や負担額、そもそもどの区分に該当するかは、一人ひとり異なります。所得区分・限度額・自己負担の割合のいずれについても、この記事の内容だけで判断できるものではありません。制度の内容は改正されることがあり、区分や金額は人によって変わるため、最新の内容は加入している公的医療保険の窓口や市区町村でご確認ください。


