12. 40歳代に多い「手元にあるまとまった資金の置き場所を決めきれない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・神田 翔平が伝えたいこと

勤務先の制度と、自分で契約した仕組みと、手元の資金。準備の入り口がいくつも並んだ状態になると、どこから手をつければよいのか決めきれなくなることがあります。ここでは、ファイナンシャルアドバイザーが日頃の面談でよく受けるご相談のひとつを、個人が特定されないよう内容を一般化したうえで取り上げます。

12.1 40歳代に多いお悩み相談は「手元にあるまとまった資金の置き場所を決めきれない」

40歳代(ご相談者)
勤務先の年金制度を利用していて、保障を兼ねた積立の契約もしています。そこに加えて、手元にまとまった資金があるのですが、その置き場所を決めかねています。このまま置いておくのがよいのか、それとも何かに回したほうがよいのか。物価が上がっていくことへの備えという意味でも、いまのままでよいのかが分かりません。

準備の入り口が複数あるご家庭ほど、手元の資金をどう扱うか決めきれないという声をよくうかがいます。すでに動いているものがあるだけに、新しく何かを足すべきなのか、それとも足す必要がないのかという判断が難しくなるためです。

12.2 【ファイナンシャルアドバイザー・神田 翔平が回答】勤務先の制度で賄えている部分を先に確かめ、引き出しの自由度で分けて考え、税制上の利点は受け取り時とセットで見る

神田 翔平

選択肢が多い分、自分にどれが合っているのか判断が出来ないというお悩みは実際にお客様からもよくお伺いするお悩みの一つです。
実際に世の中の金融商品は仕組みが複雑で、なかなか判断が難しいと感じてしまうのも無理はないかと思います。

まずは、細部から考えていくのではなく大枠の仕組みを作るところから考えていきましょう。

「どの制度を先に使うかを決めなければいけない」と考える前に、今既に使っている仕組みがどのような目的を達成できる手段なのか、また取り崩していくことを考えたときに使う時期を分けて手段を分散させるなどとしてあげることで、順番を落ち着いて決められる進め方になります。

12.3 ポイント1:勤務先の制度で何が賄えているかを先に確かめる

順番を考える前に確かめておきたいのが、すでに動いているものの中身です。相談の場では、新しく何を始めるかという話から入ると、いま持っているものが二重に見えてしまう、という整理に行き着くことが少なくありません。勤務先に年金の制度がある場合、その仕組みによって将来受け取れる見込みの部分がすでにできあがっています。どの制度なのか、拠出しているのは会社なのか自分なのか、上限まで使っているのか。この3点を確かめるだけでも、全体像の輪郭がかなり見えてきます。保障を兼ねた積立の契約についても同じで、それが保障のためのものなのか、資金を貯めるためのものなのか、あるいは両方なのかによって、手元の資金に持たせる役割は変わります。値動きの小さいものが向く局面もあれば、時間をかけて値動きを受け入れる部分が必要になる局面もあります。まずは、いま何がどれだけ賄えているのかを並べるところからになります。

12.4 ポイント2:引き出しの自由度が高いものと、老後まで動かせないものを分けて考える

次に置きたいのが、引き出しの自由度という物差しです。制度には、必要になったときに解約や売却で資金にできるものと、原則として一定の年齢まで引き出せないものがあります。この2つは性格が違いますので、同じ物差しの上に並べて比べても順番は決まりません。1ページ目の試算でも、税制上の取り扱いを前提から外して同じ金額を積んだ場合、20年後の到達額は置き場所によらず同じでした。差が出たのは、途中で引き出しが必要になった場面のほうです。10年目に150万円が必要になった場合、自由度の高い側に置いていれば残高から賄えますが、半分ずつに分けていた場合は自由度の高い側の残高が約200万円ほどとなり、必要な額がそれを超えると足りなくなります。老後まで動かせないものには、途中で使わずに済むという利点もありますので、どちらが良いという話ではありません。手元の資金についても、当面動かさない部分と、いつでも動かせる状態にしておく部分を先に分けておくと、その先の配分の話に進みやすくなります。物価が上がっていくことへの備えを考える場合も、値動きを受け入れる部分をどこに置くかという形で整理できます。ただし、値動きのある資産には元本割れとなる可能性がありますので、いつ使う予定の資金なのかを合わせて見ておくことになります。

12.5 ポイント3:税制上の利点は、受け取り時の扱いとセットで見る

最後に見ておきたいのが、税制上の取り扱いです。相談の場では、拠出したときや運用しているときの利点だけが話題になりやすいのですが、受け取るときにどう扱われるかまで含めないと、全体の姿は見えてきません。制度によっては、拠出したときに所得から差し引ける代わりに、受け取るときには別の扱いが用意されているものがあります。逆に、拠出時の扱いはない代わりに、受け取るときの扱いが軽い仕組みもあります。入り口と出口の両方を並べてはじめて、その制度が自分にとってどれだけ効くのかが分かる、という順序になります。受け取り方の選び方によっても結果は変わりますし、そのときの収入の状況や他の制度との組み合わせにも左右されます。ここは一般論で言い切れる部分ではありません。加入できる条件や拠出できる上限額、受け取るときの課税の扱いは改正されることがありますので、勤務先の担当部署や公的機関の情報でご確認ください。あわせて、資産全体を図にして眺めてみると、どこが厚くてどこが薄いのかが見えやすくなります。

順番の決め方に唯一の正解はなく、勤務先の制度の内容やご家庭の状況によって答えは変わります。具体的な進め方については、いまの配分を確かめながら専門家とご一緒に整理していただければと思います。

13. まとめにかえて

住民税は均等割と所得割の2層構造で、世帯の全員にそのどちらも生じない状態が「住民税非課税世帯」にあたります。判定の入り口は、生活保護の受給、対象となる方で前年所得が一定以下である場合、そして前年所得が自治体の定める基準額を下回る場合の3つです。3つ目の基準額は市区町村が定めるため、境界にあたる金額は地域によって変わります。

年代別に見ると、30歳代から50歳代では9割近くが課税世帯である一方、80歳以上では52.4%まで下がります。公的年金を受給する世帯のうち、収入のすべてを年金で賄っている世帯は43.4%でした。高齢期になるほど非課税に近づくのは、収入の中心が年金へ移ることと、公的年金等控除や遺族年金の取り扱いが重なるためです。

境界のすぐ近くにいる場合は、額面ではなく手取りで家計をとらえておくと、収入を増やした結果として負担が上回るという事態を避けやすくなります。また、住民税は前年の所得で決まりますので、退職した年の翌年は現役時代の水準で計算された税と保険料が続きます。この時間差を織り込んでおくことも、家計を守るうえでの備えになります。

1ページ目の試算では、税制上の取り扱いを前提から外した場合、同じ金額を積めば20年後の到達額はどこに置いても約980万円で同じでした。差が出たのは、途中で引き出しが必要になった場面のほうです。制度を使う順番を考える際は、到達額よりも、いつ動かす可能性があるのかという時間の見通しが手がかりになります。なお、値動きのある資産には元本割れとなる可能性があります。加入条件や拠出限度額、受け取り時の課税の扱いは改正されることがありますので、勤務先の担当部署や公的機関の情報でご確認ください。住民税の非課税基準も自治体ごとに異なりますので、判定の詳細はお住まいの市区町村でご確認のうえで進めていただければと思います。

参考資料