来月10月15日は今年4回目の年金支給日があります。そして今月はシルバーウィークもあり、支給日までの家計管理に思いをめぐらす方もいるかもしれません。公的年金には「年金生活者支援給付金」という上乗せの仕組みもあり、2026年度の金額が示されています。
筆者はファイナンシャルアドバイザーですが、現役世代からのご相談では、手元にある資金をどこまで運用に回してよいのか迷う、という声をよくうかがいます。数年以内に使う予定があるお金まで一緒に回してしまい、いざ使う段になって金額が読めなくなる。相談の場では、こうした形に行き着くケースが少なくありません。
この記事では、老後の収入を下支えする年金生活者支援給付金について、2026年度に区分ごとに定められた給付額と、対象になる人、請求の手続きを整理します。そのうえで、近く使う予定のあるお金と当分使わないお金をどう区分すればよいかを見ていきます。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容や年金の平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準を下回る年金生活者への支援として2019年に始まった制度。2カ月に一度、公的年金に上乗せする形で支給されます。
- 2026年度の月額は区分によって異なり、老齢年金生活者支援給付基準額が5620円、障害が1級7025円・2級5620円、遺族が5620円。老齢については、この基準額をもとに保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算されます。
- 対象になるかどうかは前年の所得と世帯の課税状況で決まり、受け取るには請求の手続きが要ります。要件を満たしても自動的に上乗せされるわけではありません。
1. 資金を区分する土台になる数字|公的年金の受取額は加入状況で変わる
近く使う予定のあるお金と、当分使わないお金をどう分けるか。この区分を考えるとき、判断の土台になるのが、老後にどれだけの収入が見込めるかという見通しです。まずは公的年金の水準から確かめていきます。
平均的な金額については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用します。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。
年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
厚生年金の額は、現役時代の報酬と、その制度に加入していた期間で決まります。国民年金だけの場合は、保険料を納めた月数が金額を左右します。同じ年齢であっても受け取る額が横並びにならないのは、こうした仕組みによるものです。
ここで押さえておきたいのは、この土台の高さによって、自分で用意する部分の大きさが変わるという点です。土台が高い人ほど自分で備える部分は小さく、低い人ほど大きくなります。そして、その自分で備える部分をどこまで値動きのある形で持つのかという判断が、手元の資金を区分するという話につながっていきます。
2. 2カ月に一度まとめて支給される給付金|老齢・障害・遺族で異なる金額
ここからは、公的年金に上乗せされる仕組みを見ていきます。年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準を下回る年金生活者への支援として、2019年に始まりました。2カ月に一度、公的年金に上乗せされる形で支給されます。
支給は2カ月に一度です。要件を満たした場合に、公的年金に上乗せされる形で届きます。相談の場では、ご自身の年金の見込み額は確かめていても、この上乗せの仕組みまでは把握されていないという方が少なくありません。老後に入ってくる金額を見積もるうえでは、こうした部分があることも押さえておきたいところです。
受け取っている年金の種類に応じて、給付金は次の3つに区分されます。それぞれに支給要件と支給額(基準額)が設けられています。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2.1 区分ごとに定められた2026年度の金額
2026年度の給付金額については、前年度から3.2%引き上げられることが示されています。区分ごとに見ると次のようになります。
【2026年度】
- 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5620円
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
このうち老齢年金生活者支援給付金は、基準額がそのまま振り込まれるわけではありません。基準額をもとに、保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算される仕組みになっています。
ここに挙げた金額は、いずれもひと月あたりの水準です。支給は2カ月に一度ですので、支給日には2カ月分がまとめて年金に上乗せされます。基準額どおりに受け取れる場合、1回あたりでは約1万1000円、1年分では約6万7000円という計算になります。
なお、「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円です。基準額と、実際に受け取っている人の平均との間には開きがあります。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。
3. 対象になるかどうかを分けるもの|前年の所得と世帯の課税状況
続いて、どのような人が対象になるのかを区分ごとに確かめます。
障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金については、対象となる年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受け取っていることに加えて、前年の所得が479万4000円以下であることが要件になります。
この判定に用いる所得には、障害年金や遺族年金といった非課税の収入は算入されません。また、扶養親族などの人数に応じて、所得の基準額は引き上げられる仕組みになっています。
一方、老齢年金生活者支援給付金には、本人の所得以外の要件がいくつか加わります。
3.1 老齢の給付金に加わる要件と、判定のしかた
老齢年金生活者支援給付金を受け取れるのは、次の要件をすべて満たす人に限られます。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下
老齢の場合も、判定にあたって障害年金・遺族年金等の非課税収入は算入されません。世帯の全員が市町村民税非課税であることが要件に含まれている点も、見落とされやすい部分です。本人の所得だけを見て判定できるものではない、という意味になります。
所得が基準を上回った場合の「補足的老齢年金生活者支援給付金」
基準をわずかに超えたために対象から外れる人と、ぎりぎりで対象になる人との間で扱いに差がつきすぎないよう、超えた側には「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みが用意されています。
対象となるのは、昭和31年4月2日以後に生まれた方であれば80万9000円を超えて90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方であれば80万6700円を超えて90万6700円以下という所得の範囲にあたる場合です。
給付額は、所得が増えるにつれて小さくなります。基準を超えた時点で支給がまるごと途切れるのではなく、段階的に減っていく設計です。
4. 手続きをして初めて動き出す給付金|届いた書類の提出が要る
この給付金は、要件を満たせば自動的に年金へ上乗せされる、というものではありません。受け取るには、こちらから請求の手続きを行う必要があります。
すでに年金を受け取っている方が、所得が下がったことで新たに対象となった場合には、毎年9月1日以降、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られます。
4.1 年金を受け取っている人と、これから65歳になる人とで違う届き方
※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
これから65歳を迎える方の場合は、届き方が変わります。誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書へ同封される形で給付金の請求書が届きます。必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とあわせて提出する流れです。
4.2 初回の提出後はどうなるか|継続の判定と、金額を知らせる通知書
この給付金は、一度請求書を提出しておけば、支給要件を満たしているかぎり2年目以降の手続きは要りません。そのまま継続して受け取れる仕組みです。
継続して支給されるかどうかは、前年の所得に基づいて判定されます。その結果が反映されるのは毎年10月分(12月支給分)からで、そこから1年間続きます。対象から外れた場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。
その年度(4月分から)にいくら支給されるかは、毎年6月上旬に届く「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」と「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確かめられます。
年金にまつわる制度には、こうして請求してはじめて動き出すものが少なくありません。制度の要件や手続きの様式は改正で変わることがありますので、提出の期限や必要な書類については、日本年金機構やお近くの年金事務所、お住まいの市区町村の窓口など、関連する部署にご確認ください。
年金に関して届く書類は、給付金の請求書だけではありません。8月から送付が始まった「意向確認書」の手続きと注意点についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【年金】8月から送付開始「意向確認書」の簡易書留《届く人・届かない人》の条件とは?公金受取口座の登録手続きと注意点を解説
5. 【独自試算】3年後に使う予定のお金を運用に回した場合と、分けて預金に置いた場合
受け取る側の仕組みを確かめたところで、手元の資金の話に戻します。近く使う予定のあるお金まで運用に回してよいのかという迷いは、値上がりした場合の姿ばかりが思い浮かびやすく、使う時期に値下がりしていた場合の姿がつかみにくいところに理由があります。ここでは、使う時期を3年後と決めた資金について、3つの置き方を1つの試算として比べてみます。
前提は次のとおりです。
- 対象の資金:200万円。うち100万円は3年後に使う予定があり、残り100万円は当分使う予定がない
- 運用に回した部分の想定利回り:年4%。月あたりの利回りは年利を12で割るのではなく、1.04の12分の1乗から1を引いた約0.3274%を使用
- 期間は3年(36カ月)。途中の引き出し・追加はしないものとする
- 預金に置いた部分は金額が変わらないものとし、利息は考慮しない
- 税金・手数料・物価の変動は考慮しない
この前提で、値下がりが起きなかった場合の3年後の金額は次のようになります。
- ケースA:200万円すべてを運用に回す → 約224万円
- ケースB:200万円すべてを預金に置く → 200万円
- ケースC:3年後に使う100万円を預金に、残り100万円を運用に回す → 合計で約212万円
ここだけを見ると、多く回したケースAが最も大きくなります。次に、使う直前に価格が2割下がっていた場合を同じ前提で置き直します。
- ケースA:約179万円
- ケースB:200万円
- ケースC:合計で約189万円
順番が入れ替わりました。ケースAは、使う予定のあった100万円の側も値下がりの影響を受けるため、3年前の元手を下回っています。ケースCは、使う予定の100万円を預金に分けておいたぶん、下がったのは運用に回した側だけにとどまりました。ケースAとケースCの差は約10万円です。
ここで見ておきたいのは、上下どちらの表も同じ利回り・同じ期間の試算だという点です。違うのは、使う時期が決まっているお金を値動きのある形で持っていたかどうか、それだけです。値上がりの局面ではその差はほとんど気になりませんが、使う時期に値下がりが重なると差として表に出てきます。
ただし、値下がりは起きるとは限りません。3年後に価格が上がっている可能性もありますし、下がる幅が2割より小さいことも大きいこともあります。ここで置いた2割という数字は、下がったときの姿を見るために仮に決めたものであり、そうなると見込んでいるわけではありません。
この試算は、どの置き方を選ぶべきかを示すものではありません。使う時期が動く可能性がある資金なのか、時期も金額もほぼ決まっている資金なのかによって、適した置き方は変わります。ここで示したのは、使う時期を決めてから置き場所を決めるという順番に、どのくらいの意味があるかという1つの目安です。
※上記は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。実際の運用では価格が変動し、元本割れとなる可能性があります。税金・手数料は考慮していません。金額はいずれも概算です。



