4. なぜ企業は「月見」に乗りたがるのか

では、なぜこれほど多くの企業が月見商戦に参入するのでしょうか。

大きな理由の一つとして考えられるのが、既存商品をベースに季節限定商品を作りやすいことです。

分かりやすいのが卵です。

ハンバーガーに卵を組み合わせれば月見バーガー、つくねと卵を組み合わせれば月見つくね、麺に卵を組み合わせれば月見麺。

スイーツでも、カスタードや卵黄などを「満月」に見立てることができます。

実際にローソンの商品を見ると、卵黄風具材や半熟たまご風具材などを使い、弁当からポテトサラダ、麺、パン、スイーツまで「月見」に仕立てています。

「月見」というテーマ自体が、さまざまな商品に応用しやすいのです。

しかも消費者にとっても、「月見」と聞けば、満月、卵、秋、十五夜といったイメージを連想しやすいでしょう。

企業側からすると、一から新しい季節イベントを説明しなくても、「月見」という言葉によって秋限定の商品であることを伝えやすくなります。

もう一つの強みが、「期間限定」と組み合わせやすいことです。

月見商品は秋の一定期間だけ販売されるケースが多く、「今年も食べたい」「期間限定だから試してみたい」という購入理由を作りやすいと考えられます。

企業にとっては、期間限定商品によって季節ごとの新商品需要を取り込めるわけです。

5. 「月見」は店舗全体を季節仕様にできる

月見商戦のもう一つの特徴は、複数の商品カテゴリーを横断して展開できることです。

例えばローソンでは、

  • 弁当
  • おにぎり
  • 調理麺
  • パン
  • 惣菜
  • スイーツ

など、幅広い商品が月見になります。

すると消費者は「月見商品を買う」という目的で来店した際に、弁当だけでなく、惣菜やスイーツなどにも目を向けることができます。

企業にとっては、特定のヒット商品だけに頼るのではなく、「月見」という共通テーマで複数の商品をまとめて訴求できるわけです。

特に、取り扱いカテゴリーが多いコンビニとは相性のよいテーマといえそうです。

6. 各社は「月見+α」で差別化

一方で、月見商品がここまで増えると、企業側には「似た商品が増える」という課題も出てきます。

単純に卵を組み合わせただけでは、競合商品との差別化が難しくなるからです。

そこで各社は、「月見+α」の組み合わせで独自性を出しています。

マクドナルドなら牛すき焼き、KFCならチキン、モスならチーズソースとフォカッチャ、ピザハットならすき焼き肉とピザ、ペッパーランチなら2種類のハンバーグ、ファーストキッチンならおもちとたまご。

つまり、月見そのものが差別化要因なのではなく、「何を月見にするのか」が競争になりつつあります。

月見商戦が広がるほど、各社は「月見であること」だけではなく、「その企業だから食べてみたい」と思わせる月見を作る必要がありそうです。

7. トレンドウォッチャーのひとこと

大蔵 大輔

月見商戦の面白さは、「月見」という同じテーマを使いながら、企業ごとにまったく違う商品へ変身させていることです。

マクドナルドが35年かけて「秋になったら月見」という習慣を育て、それを現在ではさまざまな企業が自社の商品へ取り込んでいます。

しかも月見は、ハロウィンのように特定のキャラクターや装飾に頼る必要がなく、卵や丸い食材などを使って比較的自由に表現できます。

だからこそ、ハンバーガーからピザ、ハンバーグ、ドリア、コンビニ弁当、スイーツまで広がったのでしょう。

今後は「月見をやるかどうか」ではなく、「どんな月見なら食べてみたいと思わせられるか」が、各社の腕の見せどころになりそうです。

参考資料

大蔵 大輔