4. 残る2つの特例

特例は44年以上の加入だけではありません。

4.1 障害の状態にあることを申し出た方

障害厚生年金の1級から3級に該当する障害の程度にあることを申し出た方も、報酬比例部分の受給開始年齢から定額部分をあわせて受給できます。こちらも被保険者資格を喪失しているときに限られます。

日本年金機構によると、申出月の翌月分から特例受給開始となります。ただし障害年金を受給中の方については、報酬比例部分の受給開始年齢にさかのぼって特例受給開始となるとされています。申し出が必要な点は押さえておきたいところです。

4.2 坑内員または船員だった期間が15年以上ある方

厚生年金保険の被保険者期間のうち、坑内員または船員であった期間が15年以上ある方も特例の対象です。

この特例については、昭和21年4月1日以前に生まれた方は55歳から受給できるとされています。昭和21年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた方の受給開始年齢は、生年月日に応じて56歳から64歳まで段階的に引き上げられています。

5. 請求しないと受け取れない

手続きの面も見ておきます。

5.1 65歳の年金とは別に請求する

特別支給の老齢厚生年金は、受給開始年齢に達したときに請求手続きが必要です。65歳から受け取る老齢厚生年金とは別の請求になります。

受給開始年齢が近づくと、日本年金機構から年金請求書が送られます。届いたまま手をつけずにいると、受け取れるはずの年金が始まりません。

5.2 繰下げによる増額はない

65歳から受け取る老齢年金には、66歳から75歳までの間に繰り下げて増額された年金を受け取る繰下げ受給があります。特別支給の老齢厚生年金は、この繰下げの対象として案内されていません。

請求を遅らせても額が増える性質のものではないため、受け取れる時期が来たら手続きをしておきたいところです。

6. 退職したときに年金額が見直される

働き続けた場合の扱いにも触れておきます。

6.1 44年の特例は退職が条件

44年以上の特例と障害の状態による特例は、いずれも被保険者資格を喪失しているときに限られます。在職中は報酬比例部分だけを受け取り、退職してから定額部分が加わるという流れになります。

日本年金機構には、44年以上厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金の受給者が退職などで被保険者でなくなったときの手続きの案内も置かれています。該当しそうな方は、退職の前に確認しておくと動きやすくなります。

7. まとめにかえて

特別支給の老齢厚生年金は、受給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げるために設けられた制度です。対象は男性が昭和36年4月1日以前、女性が昭和41年4月1日以前に生まれた方で、受給資格期間10年と厚生年金保険等への1年以上の加入が必要です。

対象となる生年月日の方(本来は報酬比例部分のみの受給となる世代)であっても、厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある方や障害の状態にあることを申し出た方などは、報酬比例部分に加えて定額部分もあわせて受給できる特例があります。

自分の受給開始年齢と加入期間は、ねんきん定期便や年金事務所で確認してみてください。

参考資料

和田 直子