2026年4月から、離婚したときに厚生年金を分け合う「年金分割」の請求期限が、2年から5年に延びました。夫の扶養に入っていた期間がある方にとって、老後の受取額に直接かかわる改正です。

その背景には、共働きが当たり前になり、専業主婦などの第3号被保険者が減り続けているという変化があります。この記事では厚生年金の受給額の実態と第3号被保険者のいまを確かめたうえで、年金分割の仕組みと新しい期限を整理します。

なお、2026年度の年金額や平均受給額、第3号被保険者の動向に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
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【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
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ココがポイント
  • 厚生年金で月30万円以上を受け取る人はごく一部。平均は月15万289円で男女差は約5万8000円
  • 第3号被保険者は約641万人。女性は5年連続で減り、共働きが標準になってきた
  • 離婚時の年金分割は2026年4月から請求期限が5年に。第3号だった期間は請求すれば2分の1

1. 月30万円を超える人はごく一部、厚生年金の平均は月15万289円

まず、いま実際に支払われている厚生年金の水準を確かめておきます。ニュースで見る「標準的な夫婦」の金額と、一人ひとりが受け取る額はかなり違います。

夫婦2人分の標準的な年金額は月額23万7279円となりますが、実際には1人で月30万円以上を受け取る人もいます。厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円。受給額ごとの受給権者数をみると、月30万円以上を受け取っている人はごく一部にとどまります。

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

注目したいのは男女の開きです。男性16万9967円に対して女性は11万1413円で、月5万8000円ほどの差があります。厚生年金は現役時代の報酬と加入期間で決まるため、働き方の履歴がそのまま金額に出ます。結婚や出産で仕事を離れた期間、扶養に入っていた期間は、この2階部分が積み上がりません。世帯としては足りているように見えても、どちらか一人になったときに残る額は人によって大きく違います。この構造を頭に置いて、次は「扶養に入る」という選択がいまどれくらい選ばれているのかを見ていきます。

2. 保険料を負担せずに加入扱いになる第3号被保険者は約641万人まで減った

会社員や公務員に扶養されている配偶者は、国民年金の第3号被保険者になります。その人数がいま減り続けています。

国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金(公務員などが加入していた旧共済年金を含む)に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件を満たす人が対象です。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をみると、女性の第3号被保険者の人数は5年連続で減少していることがわかります。
第3号被保険者の総数:約641万人
男性:約13万人(+3.1%)
女性:約628万人(▲6.7%)

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

641万人のうち628万人が女性です。前年からの動きを見ると、女性が6.7%減った一方で男性は3.1%増えています。全体としては、扶養に入るという選択が確実に減ってきているということです。この区分の特徴は、本人が保険料を納めなくても国民年金に加入した扱いになる点です。手続きも本人ではなく配偶者の勤務先を通して行われるため、自分がいま何号なのかを意識していない方も少なくありません。ただ、基礎年金は積み上がっても、厚生年金の上乗せは増えません。将来の受取額を考えるうえで、この違いは押さえておきたいところです。

3. 出産後も働き続ける人が5割を超えた、家事育児の時間は妻が夫の約4倍

第3号被保険者が減っている背景を、もう少し細かく見ておきます。出産を機に仕事を辞めるという流れは、すでに主流ではなくなりました。

かつては第1子出産を機に離職する「出産退職」が一般的でしたが、2015〜19年のデータでは53.8%が仕事を継続しており、過半数を超えました。
しかし、仕事を辞めずに済んでも、育児との両立のために「パート・派遣」といった非正規雇用を選択するケースが依然として多いのが実情です。

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

働き続ける人が過半数になったのは大きな変化です。ただ、続けられたとしても、雇用の形が変わることが多いという指摘もあわせて示されています。パートや派遣で働く場合、厚生年金に加入していても報酬に応じた上乗せは小さくなります。「辞めなかったから年金は大丈夫」とは言い切れないわけです。では、なぜ働き方を落とすことになるのか。その手前にある家庭の事情も数字で示されています。

令和7年版「厚生労働白書・日本の1日」の調査では、6歳未満の子どもがいる家庭において、夫の家事・育児時間が1日平均「1時間54分」であるのに対し、妻は「7時間28分」。

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

1日で5時間半以上の差があります。この時間を確保するために勤務時間を短くすれば、報酬は下がり、厚生年金の上乗せも小さくなります。つまり、年金の男女差は制度の中だけで生まれているのではなく、家庭内の時間配分の結果でもあるということです。ここを個人の努力で埋めるのは簡単ではありません。だからこそ、制度の側に用意されている仕組みを知っておくことが大事になります。次の章で、そのひとつを見ていきましょう。

和田 直子

ここまで、厚生年金の受給額の実態と、第3号被保険者が減り続けている状況、そして家庭内の時間配分の偏りを見てきました。

男女で月5万8000円という差は、制度が意図してつくったものではなく、働き方の積み上がりの結果でした。

では、扶養に入っていた期間は取り戻せないのでしょうか。次の章で、婚姻期間中の厚生年金を分け合う仕組みと、2026年に延びた請求期限を確認しておきましょう。