2. 秋に届く「扶養親族等申告書」と年金の税金

公的年金は、税金の世界では「雑所得」として扱われます。一定額を超えると所得税が源泉徴収され、受け取る前に差し引かれます。年金生活が続く70歳代にとって、この税金のしくみは毎年の手取りに直結します。

2.1 年金から税金が引かれる・引かれないの境目

年金にかかる所得税には、源泉徴収の基準となる金額があります。令和8年度の税制改正で基礎控除が引き上げられ、令和8年分からは65歳以上の方が214万円、65歳未満の方が164万円に変わりました。これを下回る場合は、原則として年金から所得税は源泉徴収されません。

なお令和8年分については、11月の支払いまでは改正前の基準で源泉徴収され、12月の支払い時に改正後の基準で1年分の精算が行われます。

同じ「年金生活」でも、受け取る額によって、税金が引かれる人と引かれない人が出てきます。夫婦それぞれの年金がこの境目のどちら側にあるのかを知っておくと、世帯の手取りの見通しが立てやすくなります。

年金から差し引かれるお金の内訳や、額面と手取りの違いについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

2.2 申告書を出す・出さないで手取りが変わる

源泉徴収の対象になる方のもとには、毎年秋(9〜10月ごろ)に「扶養親族等申告書」が届きます。これは、配偶者控除や各種の控除を年金の源泉徴収に反映させるための書類で、夫婦それぞれに届きます。

申告書を提出すると、控除が反映されて源泉徴収される税額が抑えられます。反対に出し忘れると、控除が受けられず税額が高くなることがあります。毎年のことなので、届いたら早めに記入して返すことを習慣にしておきたいところです。

あわせて、令和8年度の税制改正では、扶養控除などの対象となる扶養親族等の所得要件が62万円に引き上げられました。個人住民税の各種控除を受ける場合も、日本年金機構へ扶養親族等申告書を提出することとされています。

3. 編集部からのアドバイス

70歳代・二人以上世帯の貯蓄は、平均2416万円・中央値1178万円でした。2000万円以上の世帯が4割近くにのぼり、貯蓄のない世帯は比較的少なめです。年金の手取りを守りながら、この蓄えを長持ちさせるために、今日からできることを3つお伝えします。

一つ目は、秋に届く「扶養親族等申告書」を、夫婦それぞれ、届いたその週のうちに書いて返すことです。毎年のことなので、後回しにする習慣がつくと手取りが目減りしやすくなります。

二つ目は、夫婦二人分の年金の「額面」と「手取り」を分けて把握することです。額面から税金や社会保険料が引かれた後の金額が、実際に使えるお金です。

三つ目は、取り崩しのペースを見直すことです。蓄えの厚い世帯が多い年代ですが、使い方を決めずにいると不安が残ります。1年にいくらまで取り崩すかの上限を、夫婦で決めておきましょう。

LIMO編集部貯蓄解説班

年金を受け取り始めると、資産をどう増やすかよりも、毎年の手取りをどう守るかのほうが家計に効いてきます。年金は額面のままもらえるわけではなく、税金や社会保険料が引かれるためです。

秋に届く申告書を夫婦それぞれ出すだけで手取りが変わるように、毎年の小さな手続きの積み重ねが、暮らしのゆとりを左右します。

70歳代は蓄えの厚い世帯が多い一方、使い方を決めかねている場合も少なくありません。手取りを正しくつかみ、取り崩しの上限を決めておけば、安心して使えるお金の範囲が見えてきます。医療や介護の費用が増える時期に備え、手元の現金にゆとりを持たせておくことも大切です。

まずは、今年届いた申告書を夫婦で確かめることから始めてみてください。控除がきちんと反映されているかを見るだけでも、無駄な目減りを防げます。記入方法や控除の要件でご不明な点は、年金事務所やお住まいの自治体の窓口にご確認ください。

4. まとめにかえて

今回は、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額(2416万円)と中央値(1178万円)を確認しました。2000万円以上の世帯が4割近くにのぼり、貯蓄のない世帯は比較的少ない年代です。

あわせて、秋に届く「扶養親族等申告書」と年金の税金のしくみをみてきました。年金は雑所得として源泉徴収の対象になり、令和8年分からは65歳以上214万円・65歳未満164万円が一つの境目です。

今日からできることは3つです。まず、扶養親族等申告書を夫婦それぞれ早めに提出すること。次に、夫婦二人分の年金の額面と手取りを分けて把握すること。

そして、貯蓄を1年にいくらまで取り崩すかの上限を夫婦で決めておくこと。毎年の手続きを味方につけて、蓄えを長持ちさせる家計を、この秋から整えていきましょう。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班