2. 2つの部分から成り立っている
次に、中身の構成を見ていきます。
2.1 報酬比例部分と定額部分
特別支給の老齢厚生年金には、報酬比例部分と定額部分があります。生年月日と性別に応じて、それぞれ受給開始年齢が異なります。
報酬比例部分は現役時代の報酬と加入期間で決まる部分、定額部分は加入期間に応じて決まる部分です。65歳になると、報酬比例部分は老齢厚生年金に、定額部分は老齢基礎年金に切り替わっていきます。
2.2 働いていると止まることがある
在職中の人は、報酬によって年金額が支給停止となる場合があります。在職老齢年金の仕組みが、特別支給の老齢厚生年金にも当てはまります。
受け取れる年齢に達していても、働き方によっては全額または一部が止まることになります。金額の見通しを立てるときは、この点も含めて考えたいところです。
生年月日が1日違うだけで扱いが変わる制度です。自分は対象外だと思い込む前に、記録を見て確かめていただきたいところです。
3. 3つの特例がある
生年月日だけで決まらない部分もあります。
3.1 44年以上加入した人
日本年金機構によると、昭和24年、女性は昭和29年4月2日以後に生まれた人でも、厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある場合は特例の対象になります。
この特例に当てはまると、報酬比例部分の受給開始年齢から、報酬比例部分と定額部分を合わせた特別支給の老齢厚生年金を受給できます。ただし被保険者資格を喪失している、つまり退職していることが条件です。
3.2 障害の状態にある人と坑内員・船員
障害厚生年金の1級から3級に該当する障害の程度にあることを申し出た人も、同じ特例の対象です。こちらも被保険者資格を喪失していることが条件になります。申出月の翌月分から特例受給開始となりますが、障害年金を受給中の人は報酬比例部分の受給開始年齢にさかのぼって開始されます。
もうひとつが、厚生年金保険の被保険者期間のうち坑内員または船員であった期間が15年以上ある人です。昭和21年4月1日以前生まれの人は55歳から受給でき、昭和21年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた人の受給開始年齢は、生年月日に応じて56歳から64歳まで段階的に引き上げられています。
4. 44年の特例は退職が条件になる
長く働いてきた人ほど、判断が必要になる部分です。
4.1 在職のままでは適用されない
44年以上の特例も障害の特例も、被保険者資格を喪失しているときに限られます。働き続けている間は、定額部分は加わりません。
退職すれば定額部分が加わりますが、その分の給与はなくなります。どちらが有利かは報酬の水準によって変わりますので、試算をしたうえで判断したいところです。
4.2 44年は528月にあたる
44年は月数にすると528月です。20歳から働き始めた場合、64歳まで途切れずに厚生年金に加入していれば届く長さになります。
転職や休職で空白があると届きません。自分の加入期間が何月あるかは、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。
5. 対象となる世代は限られている
この制度は経過措置です。
5.1 女性は昭和41年4月1日以前生まれまで
対象になるのは、男性が昭和36年4月1日以前生まれ、女性が昭和41年4月1日以前生まれの人です。これより後に生まれた人には、特別支給の老齢厚生年金はありません。
段階的な引き上げのために設けられた制度ですので、いずれ役割を終えることになります。自分より少し年上の人が60歳代前半で年金を受け取っていても、自分は同じようにいかない場合があります。
5.2 請求手続きは自分で行う
受給開始年齢に達すると、日本年金機構から年金請求書が送られてきます。要件を満たしていても、請求しなければ支給は始まりません。
対象かどうか、いつから受け取れるかは生年月日と性別で決まります。判断に迷うときは、年金事務所や街角の年金相談センターで確認してみてください。
6. まとめにかえて
特別支給の老齢厚生年金は、受給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げるために設けられた制度です。対象は男性が昭和36年4月1日以前生まれ、女性が昭和41年4月1日以前生まれの人になります。
要件は5つあり、老齢基礎年金の受給資格期間10年に加えて、厚生年金保険等に1年以上加入していたことが必要です。報酬比例部分と定額部分があり、受給開始年齢はそれぞれ異なります。
厚生年金保険の被保険者期間が44年以上ある人などには特例がありますが、退職していることが条件です。在職中は支給停止となる場合もありますので、年金事務所で試算を依頼してみてください。
参考資料
村岸 理美
