「日本の平均年収は478万円」ーそう聞くと、自分の数字と見比べる方もいるでしょう。
ただ、平均という数字は、人がいちばん集まっているところを指しているとは限りません。実際、この調査でもっとも人数が多い年収帯は、478万円より下にあります。
しかも、その山の位置は男女で違います。平均だけを鵜呑みにするのではなく、金額帯別に詳しくみて実態をまず知ることは、その後の自分の行動を決めるためにも大切なことです。
今回は国税庁の最新の調査から、平均年収478万円の中身と、給与階級ごとに人がどう分かれているのかを順にみていきましょう。
- 1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円。前年比3.9%増で4年連続の増加、金額は過去最高
- 人数がもっとも多いのは「300万円超400万円以下」の826万人(構成比16.1%)。平均の478万円より下の帯
- 男性の最多は「400万円超500万円以下」16.9%、女性の最多は「200万円超300万円以下」19.0%で、山が2つぶんずれている
1. 日本の平均年収478万円の中身。伸び率3.9%は平成3年分調査以来の大きさ
まず、どんな調査なのかを確認します。国税庁の民間給与実態統計調査は、統計法に基づく基幹統計です。昭和24年分から始まり、今回が76回目にあたります。
民間の給与所得者数は6,077万人で、前年比9万人(0.2%)の増加でした。このうち1年を通じて勤務した給与所得者は5,137万人です。
この5,137万人の平均給与が478万円でした。前年比3.9%の増加で、4年連続の増加となり、金額としては過去最高です。
注目したいのは、その伸び方です。前年比3.9%増という伸びは、平成3年分調査の5.0%増以来の大きさだと国税庁は説明しています。
男女別にみると、男性が587万円(前年比3.2%増)、女性が333万円(同5.5%増)でした。伸び率でみれば女性のほうが大きくなっています。
内訳も押さえておきましょう。平均給料・手当は403万円(前年比3.8%増)、平均賞与は75万円(同4.5%増)です。
賞与のほうは2年ぶりの増加でした。給料も賞与も上がった年だった、ということになります。
2. 【日本の年収】人数がいちばん多いのは「300万円超400万円以下」の826万人
ここからが本題です。478万円という平均を、人数の分布と重ねてみます。
1年を通じて勤務した給与所得者5,137万人を給与階級別にみると、300万円超400万円以下の人が826万人(構成比16.1%)でもっとも多くなっています。
次いで多いのが400万円超500万円以下で787万人(同15.3%)でした。
人がいちばん集まっているのは、平均より1つ下の帯1/2
出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」第16表、同「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」をもとにLIMO編集部作成
給与階級別の分布は100万円以下から2500万円超まで、14の区分に分かれています。
下から順にみていくと、100万円以下が393万4000人(構成比7.7%)、100万円超200万円以下が570万7000人(同11.1%)、200万円超300万円以下が676万7000人(同13.2%)。
そして300万円超400万円以下の825万8000人(同16.1%)が山の頂上です。ここが記事の冒頭で触れた826万人にあたります。
そこから400万円超500万円以下が787万人(同15.3%)、500万円超600万円以下が605万9000人(同11.8%)、600万円超700万円以下が390万7000人(同7.6%)と下がっていきます。
平均の478万円が入るのは400万円超500万円以下の帯です。ところが人数がもっとも多いのは、その1つ下の帯でした。
このように平均という1つの数字と、人がいちばん集まっている場所は、必ずしも重なりません。
3. 男性の年収と女性の年収でもボリュームゾーンは異なる
次に、同じ分布を男女に分けてみます。
男性は、400万円超500万円以下が493万1000人(構成比16.9%)でもっとも多くなっています。次いで500万円超600万円以下が429万人(同14.7%)でした。
その下は300万円超400万円以下が417万5000人(同14.3%)、上は600万円超700万円以下が301万9000人(同10.3%)です。男性の分布は400万円台を頂点に、左右になだらかに広がる形になっています。
女性をみると様子が変わります。200万円超300万円以下が421万1000人(同19.0%)でもっとも多く、次いで300万円超400万円以下が408万2000人(同18.5%)でした。
その下の100万円超200万円以下も407万2000人(同18.4%)と多く、この3つの帯だけで女性の半分以上を占めています。
男性の山は400万円超500万円以下、女性の山は200万円超300万円以下。区分にして2つぶんの開きです。
平均給与でみても、男性587万円に対して女性は333万円でした。男女計の478万円という数字は、この2つの山の間にある数字だといえます。
ご自身の位置を確かめるときは、男女計の478万円だけでなく、同じ性別の分布と見比べてみると実感に近づくのではないでしょうか。
4. 「年収1000万円を超える人」はどの帯もごくわずかだった
分布の上のほうもみておきます。ここは平均を押し上げている側です。
男女計でみると、700万円超800万円以下が271万人(構成比5.3%)、800万円超900万円以下が174万1000人(同3.4%)、900万円超1000万円以下が120万8000人(同2.4%)でした。
1000万円を超えると、さらに少なくなります。1000万円超1500万円以下が230万6000人(同4.5%)、1500万円超2000万円以下が57万6000人(同1.1%)です。
2000万円超2500万円以下は14万7000人(同0.3%)、2500万円超も17万4000人(同0.3%)にとどまりました。
1000万円を超える帯は、どれも構成比が数%以下です。それでも金額が大きいぶん、平均を押し上げる力は働いていると考えられます。平均が「真ん中」にならない理由は、この形にあります。
5. 平均年収478万円をみるときに気をつけたいこと3つ
最後に平均年収を考えるうえでの注意点を挙げておきます。
1つ目は対象です。478万円は「1年を通じて勤務した給与所得者」5,137万人の平均で、年の途中で入社した方や退職した方は入っていません。また、給与所得者のみとなっています。
2つ目は雇用形態です。平均年収は正社員(正職員)と正社員(正職員)以外をあわせた平均となりますので、働いた時間の違いも含んだ数字になります。より詳しく見るには、正社員と正社員以外の年収を把握することが大切です。
3つ目は、年収は上記の雇用形態もですが、年齢、業種、職種、会社規模、役職…などによって異なるということです。あくまで全体の平均であり、鵜呑みにしないことが大切。一方で、なかなか他の人には聞けないことですし、キャリアを考える上では目安として知っておくことは大切でしょう。
6. 平均年収を「知った後」にとりたい行動
今回は、国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査から、平均年収478万円の中身を分布の面からみてきました。平均と比べて一喜一憂するよりも、分布のどこにいるかを見るほうが、実感に近い読み方ができるのではないでしょうか。
また、年齢や業種、会社規模などに区切って、同資料を参考にするのも一つ。自分の年齢の平均はいくらか、別の業種、職種だったら平均いくらなのかが確認できます。
キャリアプランは年収だけで決めるものではありません。ただ一般的な年収データを知ることで、「新たな選択肢や可能性」を考えるきっかにもなるでしょう。昔に比べて現代は職種は増えましたし、業種もさまざまな内容があります。日常生活を過ごしているとつい狭くなりがちな視野を、平均的なデータは広げてくれる場合もあるのです。
年収は今の生活にも、そして給与所得者であれば基本的に老後の年金生活にも影響しますから、キャリアを考える一つとして着目し、気になる部分があれば他の情報も調べてみてください。
7. 元証券会社社員の執筆者コメント
参考資料
宮野 茉莉子
