転職やパート・アルバイトから正社員への切り替え、働く時間を増やすかどうかなど、働き方を見直すタイミングで気になるのが「厚生年金に加入するかどうか」ではないでしょうか。

厚生年金は国民年金と比べて保険料が高い分、将来受け取れる年金額も上乗せされる仕組みです。しかも、保険料を比べるときは年金だけでなく健康保険料もあわせて考える必要があり、単純に「片方が安い」とは言い切れません。さらに、2026年10月には社会保険への加入基準そのものが変わり、「加入するかどうかを自分で選べる」場面は少しずつ限られていく見通しです。

この記事では、平均月額や保険料(健康保険料を含む)を比較しながら、厚生年金に加入するメリットとデメリットを整理します。

※本記事では以下の記事より一部データを引用しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
ココがポイント
  • 厚生年金の平均月額は15万289円、国民年金は5万9310円と大きな差がある
  • 年金の保険料だけなら厚生年金の方が安いケースもあるが、健康保険料も含めた本人負担の総額で比べると、会社負担がある社会保険の方が家計にやさしいケースが多い
  • 2026年10月に「106万円の壁」の賃金要件が撤廃予定。働き方次第という前提は変わらないが、「加入を避ける」選択がしづらくなる方向にある

1. 老後の年金月額、平均はいくら?

実際に年金を受け取っている全受給権者(60歳~90歳以降)の年金月額を、厚生労働省の統計から確認します。

厚生年金《平均月額の男女差・個人差》1/5

厚生年金《平均月額の男女差・個人差》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

1.1 厚生年金(国民年金を含む)の平均月額

  • 全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

国民年金《平均月額の男女差・個人差》2/5

国民年金《平均月額の男女差・個人差》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

1.2 国民年金の平均月額

  • 全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

 

2. 保険料を比較する

受け取る年金額に差がある一方で、現役時代に支払う保険料にも大きな違いがあります。ここでは、標準報酬月額(給与を一定の幅で区分した金額)が15万円程度のケースを例に、厚生年金と国民年金の保険料を比べてみます。

保険料を比較する(例:標準報酬月額15万円のケース)3/5

保険料を比較する(例:標準報酬月額15万円のケース)

出所:日本年金機構「厚生年金保険料額表」「国民年金保険料の変遷」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金保険料は、標準報酬月額に18.3%をかけた金額を、会社と本人が半分ずつ負担する「労使折半」というしくみです。標準報酬月額が15万円のケースでは、保険料の総額は2万7450円で、本人が負担するのは1万3725円、残りの1万3725円は会社が負担してくれます。つまり、給与から差し引かれる金額の裏側で、同額を会社が上乗せして払ってくれているというわけです。

一方、国民年金保険料は、収入の多い・少ないにかかわらず全国一律の金額です。令和8年度は月額1万7920円で、会社などの負担はなく全額が自己負担になります。単純に本人が支払う金額だけを比べると、標準報酬月額15万円の厚生年金(1万3725円)よりも、国民年金(1万7920円)の方が高いケースもあるのです。

ただし、これはあくまで「年金」の保険料だけを比べた場合の話です。実際には、厚生年金に加入すると健康保険(協会けんぽなど)にも同時に加入するため、健康保険料も本人負担として発生します。一方、国民年金だけに加入している方(自営業・フリーランスなど)は、年金とは別に「国民健康保険料」を自分で納める必要があります。この医療保険分もあわせて比べてみないと、本当の負担額は見えてきません。

健康保険料も含めると、本人負担の総額はどうなる?4/5

健康保険料も含めると、本人負担の総額はどうなる?

出所:日本年金機構「厚生年金保険料額表」「国民年金保険料の変遷」、全国健康保険協会「令和8年度保険料率」の公表情報をもとにLIMO編集部作成

標準報酬月額15万円のケースで見ると、会社員(厚生年金+健康保険)の本人負担は、厚生年金1万3725円と健康保険(協会けんぽ全国平均9.90%、労使折半)約7425円を合わせて2万1150円です。

これに対して、自営業・フリーランスなど(国民年金+国民健康保険)は、国民年金1万7920円に加えて国民健康保険料がかかります。国民健康保険料は所得や自治体によって金額が大きく異なり、月数千円〜1万数千円程度になるケースが多いとされています。仮にこの目安を単純に足すと、自営業・フリーランス等の本人負担は月2万円台後半〜3万円台前半に達する可能性があり、会社員の2万1150円を上回る場合が少なくありません。

つまり、「厚生年金の方が保険料が高い」というイメージだけで判断するのは早計です。健康保険料まで含めた本人負担の総額で見ると、保険料の半分を会社が負担してくれる社会保険(厚生年金+健康保険)の方が、家計への負担が軽くなるケースが多いのです。もちろん、国民健康保険料は世帯構成や前年の所得によって大きく変わるため、一律に「どちらが得か」を断定することはできません。ご自身の場合の国民健康保険料は、お住まいの市区町村の窓口で確認することをおすすめします。

国民年金保険料は、ここ数年上昇傾向にある5/5

国民年金保険料は、ここ数年上昇傾向にある

出所:日本年金機構「国民年金保険料の変遷」をもとにLIMO編集部作成

さらに、国民年金保険料は毎年度、賃金や物価の動向にあわせて見直されており、令和3年度の1万6610円から令和8年度の1万7920円まで、ここ数年は上昇傾向が続いています。今後も同様の傾向が続くのであれば、全額自己負担の重みは一段と増していく可能性があります。

和田 直子

「厚生年金の方が保険料が高い」というイメージを持っている方も多いのですが、本人が実際に負担する金額だけで見ると、必ずしもそうとは限りません。会社が保険料の半分を負担してくれる分、本人の負担が国民年金よりも軽くなるケースもあります。

ご自身の給与から実際にいくら引かれているか、給与明細やねんきん定期便で確認してみると、イメージと実際の負担額のギャップに気づくこともあるかもしれません。