5. 相談できる人はいる。ただし実際に相談したかは別
ストレスを抱えたとき、誰かに話せているのかも見ておきます。
ストレスについて相談できる人がいる労働者の割合は94.8%。ほとんどの人に、相談先そのものは存在しています。
相談できる相手(複数回答)の内訳は次のとおりです。
- 家族・友人:74.8%
- 上司:63.8%
- 同僚:62.5%
- 人事労務担当者:10.7%
- 産業医:7.1%
一方、相談できる人がいる労働者のうち、実際に相談したことがある人の割合は71.2%。前年の74.7%から下がっています。
相談先はあるのに、3割近くは実際には相談していない。この差は小さくありません。
「相談できる人はいない」と答えた人の割合は全体で3.6%ですが、40〜49歳では5.2%、60歳以上では6.0%と高くなります。
なお、社内の相談先として挙がる「人事労務担当者」は10.7%、「産業医」は7.1%にとどまります。制度としての窓口は用意されていても、選択肢として意識されにくいのが実情のようです。
6. 会社側の備えは、規模によって大きく違う
会社側の状況も確認します。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.0%でした。ただし、事業所規模で差が大きく開きます。
- 労働者数50人以上:93.7%
- 労働者数30〜49人:72.0%
- 労働者数10〜29人:54.6%
さらに、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所のうち、ストレスチェックを実施している事業所の割合は64.0%。こちらも50人以上で89.8%、10〜29人で55.9%と差があります。
背景には制度の設計があります。ストレスチェックは労働者数50人以上の事業場で実施が義務とされてきた一方、50人未満は努力義務にとどまっていました。
この点は、すでに制度が変わることが決まっています。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)により、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務づけられました。厚生労働省は、令和10(2028)年4月1日から義務化されるとしています。
ただし、具体的な実施方法や社内での運用ルールは、今後示される省令・指針によって詰められていきます。自社にいつから何が求められるのかは、必ず所管の労働局や社内の人事・労務部門にご確認ください。
7. 「限界かもしれない」と感じたときに
数字を並べてきましたが、統計は個人の状態を判断するものではありません。
眠れない日が続く、朝に起き上がれない、食欲が落ちた、以前は平気だった業務量に手がつかない。こうした変化が続いているなら、それは意志や性格の問題ではなく、心身からの信号として扱うべきものです。
相談先としては、社内の産業医や保健師、人事・労務部門のほか、各都道府県に設置されている産業保健総合支援センター(独立行政法人労働者健康安全機構)や、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」で案内されている相談窓口があります。医療機関の受診が必要かどうかも含め、専門家に判断を委ねるのが確実です。
なお、休職や配置転換、降職などの取り扱いは、会社ごとの就業規則によって条件が異なります。制度上どのような選択肢があるのかは、勤務先の人事・労務部門に確認してください。
8. まとめにかえて
今回は、厚生労働省の調査から仕事のストレスの内訳を確認しました。
強い不安・悩み・ストレスがある労働者は67.5%
内容別では「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%で最多
「役割・地位の変化等(昇進・昇格、配置転換等)」は40〜49歳で22.6%と全年代最高
ストレスを相談できる人がいる人は94.8%、実際に相談したことがある人は71.2%
なお、令和6年調査では設問の形式が令和5年調査から変更されており、令和5年以前の数値と単純に比較することはできません。過去の記事や資料と数字が一致しない場合は、調査年をご確認ください。
中間管理職のしんどさは、個人の資質の問題として語られがちです。ただ、40代で「昇進・昇格、配置転換等」が跳ね上がるという数字は、それが構造的に発生していることを示しています。数字を知っておくことは、自分を責めすぎないための材料にもなりそうです。
9. 【執筆者コメント】数字を知っておくことと、発散方法を持っておくこと
私自身、現在は管理職として働いています。大変だと感じる部分は確かに多いのですが、その立場でなければ見えないものや得られるものも同じくらいあると感じており、しんどさだけで語られるのは少し違うようにも思っています。
そのうえで今回の数字で目を引いたのが、「相談できる人がいる」94.8%に対して「実際に相談したことがある」が71.2%という差でした。相談先がないわけではなく、相談していない。心当たりのある方は少なくないのではないでしょうか。
「人事労務担当者」が10.7%、「産業医」が7.1%という低さも意外でした。制度としての窓口は用意されているのに、選択肢として上がってきていない。担当者が誰かは分かっていても、普段の業務でやりとりのない相手には相談を切り出しにくい、という面はあるのかもしれません。
40代で「役割・地位の変化等」が22.6%と全年代で最も高くなる点も印象に残りました。昇進や配置転換は、一般にはよい知らせとして扱われます。それがストレス要因の項目に、特定の年代だけ突出する形で表れるのは、構造的なものなのだろうと感じました。
個人的には、日々の負荷とつきあううえで、自分なりの発散方法を持っておくことも大切だと感じています。私の場合はラーメンとサウナで、ずいぶんベタな部類ですが、方法そのものは人それぞれあるのだと思います。そのうえで、それでは追いつかないと感じるときは、本文で触れた相談先を頼るほうが確実です。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」
- 厚生労働省「令和7(2025)年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」
- 厚生労働省「令和7(2025)年『労働安全衛生調査(実態調査)』の結果を公表します」
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」
- 厚生労働省「令和6(2024)年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」
- 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
中沢 新