仕事の悩み第1位は「給与が低い」こと。それなのに、約7割の人が「管理職にはなりたくない」と考えていることがわかりました。
ヒューマンホールディングス株式会社が公表した調査により、働き盛り世代の多くが「収入は上げたいが、出世はしたくない」という大きな矛盾(ジレンマ)を抱えている実態が浮き彫りになった形です。
単純に給与を上げるなら「昇進」が近道に思えますが、なぜ彼らはあえて出世の道を避けるのでしょうか。
この記事では、厚生労働省のデータをもとに中間管理職(部長・課長・係長)の平均的な年収相場を算出。さらに、20歳代の頃に思い描いていた「理想の年収」と「現実」の間に横たわる、残酷なギャップについて掘り下げていきます。
1. 部長と課長の年収はいくら?中間管理職の給与相場を役職別に比較
昇進による年収アップを目指すうえで、中間管理職の給与水準は気になるところです。
ここでは、厚生労働省が公表した「令和6年賃金構造基本統計調査 役職別」を参考に、部長・課長・係長の平均的な賃金を見ていきましょう。
1.1 男性の役職別賃金(部長・課長・係長)
- 部長級:63万6400円
- 課長級:52万2400円
- 係長級:39万6300円
1.2 女性の役職別賃金(部長・課長・係長)
- 部長級:54万9900円
- 課長級:45万8100円
- 係長級:35万4000円
1.3 男女計で見る役職別賃金(部長・課長・係長)
- 部長級:62万7200円
- 課長級:51万2000円
- 係長級:38万5900円
いずれの役職も、地位が上がるにつれて賃金は上昇しており、前年の調査結果よりも増加傾向にあります。
仮に賞与が夏と冬にそれぞれ月給の2カ月分、年間で4カ月分支給されると仮定した場合、年収の目安は以下のようになります。
1.4 ボーナス込みの年収目安(中間管理職)
- 部長:1003万円程度
- 課長:819万円程度
- 係長:617万円程度
2. なぜ40歳代は管理職を避けるのか?7割が「スペシャリスト」を選ぶ背景
ヒューマンホールディングス株式会社が2025年5月29日に公表した「40歳のキャリア実態と『なりたい自分』意識調査2025」では、1985年生まれの男女1000名を対象にキャリアに関する意識が調査されました。
この調査結果を見ると、「スペシャリスト志向」を持つ人が74.0%にのぼることがわかります(「スペシャリスト」19.5%と「どちらかといえばスペシャリスト」54.5%の合計)。
管理職志向とスペシャリスト志向2/3
出所:ヒューマンホールディングス株式会社「思っていた40歳と違う!? 働き盛り世代のホンネを調査|転職意向6割超、管理職よりスペシャリスト、年収は想定を下回る傾向」
スペシャリストを志向する主な理由として、以下のような声が挙がっています。
- 管理職に向いていないから
- 管理職になりたくないから
- 専門性を高めたいから
特に「管理職に向いていない」という自己認識が、最も多い理由として挙げられました。
一方で、同じくヒューマンホールディングス株式会社の調査では、「仕事に関する悩み」のトップが「給与が低い」であることも明らかになっています。
この調査は40歳という節目を迎える世代を対象としており、15年以上の社会人経験を積む中で、キャリアや収入に関する悩みを抱えている実態がうかがえます。
3. 40歳の現実年収、20歳代の理想と100万円以上の乖離も
ヒューマンホールディングス株式会社の「40歳のキャリア実態と『なりたい自分』意識調査2025」では、「20歳代のときに想定していた40歳時点での年収額」についても尋ねています。
その結果、最も多かった回答は「500万円~600万円未満」で25.8%を占め、次いで「400万円~500万円未満」(19.8%)、「600万円~700万円未満」(12.7%)と続きました。
20代のときに想定していた40歳時点の年収額3/3
出所:ヒューマンホールディングス株式会社「思っていた40歳と違う!? 働き盛り世代のホンネを調査|転職意向6割超、管理職よりスペシャリスト、年収は想定を下回る傾向」
しかし、実際の現在の年収で最も多かったのは「300万円~400万円未満」(21.9%)という回答でした。その後に「200万円~300万円未満」(16.6%)、「500万円~600万円未満」(16.1%)が続きます。
この結果から、多くの人が20歳代の頃に思い描いていた理想の年収と現実との間に、100万円から200万円ほどのギャップを感じていることがわかります。
日本の平均年収は長らく400万円台で推移していますが、近年の急激な物価上昇により、収入の伸び悩みはより深刻な問題となっています。
では、管理職を避ける傾向がある中で、キャリアをどのように考えればよいのでしょうか。
4. 年収アップだけではない、キャリア選択の軸。給与と働きがいを考える
ここまで、中間管理職の平均年収や、40歳代のキャリアに対する考え方について見てきました。
単純に「給与を上げたい」と考えるなら、昇進を目指すことは有効な選択肢の一つといえるでしょう。
しかし、調査結果が示すように、管理職ではなく専門性を追求するスペシャリストの道を望む人も多くいます。実際、管理職を目指したくないと考える人は少なくありません。
ミイダス株式会社が経営者・役員と中間管理職を対象に実施した「マネジメントに関する経営者・中間管理職の比較調査」によると、中間管理職が抱える悩みとして、次のような点が挙げられています。
- 部下と経営者の間で板挟みになる:44.0%
- マネジメント業務が膨大:37.5%
- 部下への適切な指導方法/伝え方が分からない:33.0%
- ワークライフバランスの維持/推進が難しい:30.5%
加えて、管理職になると残業代が支給されないケースが一般的です。業務量が増えれば、昇進しても時間あたりの給与は実質的に上がらない可能性も考えられます。
多くの人が感じているように、管理職という役割には適性があります。
給与面だけでなく、自身のやりがいやワークライフバランスといった要素も踏まえ、総合的な視点で今後のキャリアを検討することが大切です。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
- ヒューマンホールディングス株式会社「思っていた40歳と違う!? 働き盛り世代のホンネを調査|転職意向6割超、管理職よりスペシャリスト、年収は想定を下回る傾向」
- ミイダス株式会社「【経営者・中間管理職に聞く現代のマネジメント】経営者・中間管理職ともに、この10年で「マネジメント業務の変化」を実感 経営者が中間管理職に求める役割、第1位は?」
- ミイダス株式会社
太田 彩子