2026年の年金支給日カレンダーが公表され、2026年度の年金額改定の内容もあわせて確定しました。日本の公的年金には、老齢年金のほか、ケガや病気で生活が制限された場合に受け取れる「障害年金」、一家の生計の担い手にまさかのことがあった場合に受け取れる「遺族年金」という、3つの保障機能があります。「年金」と聞くと、リタイア後に受け取る「老齢年金」をイメージする人が多いかもしれません。
本記事では、公的年金の「2階建て」の仕組みと2026年の支給日、2026年度の年金額改定の内容、そして厚生労働省が示す「多様なライフコースに応じた年金額」の5パターンを確認していきます。
なお、年金の支給日や2026年度の改定内容に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 公的年金は「2階建て構造」で、原則2カ月に一度、偶数月15日(前後する場合あり)に支給される
- 2026年度は国民年金+1.9%・厚生年金+2.0%の改定で、厚生年金の夫婦モデルは23万7279円に
- 厚生労働省の「多様なライフコース」5パターンでは、厚生年金中心か国民年金中心かで年金額に大きな差が出る
1. 公的年金の仕組みは「2階建て」|国民年金と厚生年金の違いと2026年の年金支給日
年金制度は「国民年金+厚生年金」の2階建て構造と呼ばれ、1階部分の「国民年金(基礎年金)」と2階部分の「厚生年金」から成り立ちます。現役時代の働き方や過ごし方が、将来の年金水準を大きく左右する性質を持っています。ここでは、「国民年金」と「厚生年金」の基本とあわせて、それぞれの「老齢年金の受給額」についても整理しておきましょう。
1.1 1階部分《国民年金》|20歳以上60歳未満の全員が加入、2026年度の保険料は月1万7920円
- 加入対象者:原則として日本に居住する20歳から60歳未満の全員(職業や国籍は問わない)
- 年金保険料:全員一律、ただし年度ごとに改定あり(※1)
- 老齢年金の受給額:保険料を全期間(480カ月)納付すれば、65歳以降で満額(※2)の老齢基礎年金を受給できる
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
1.2 2階部分《厚生年金》|会社員・公務員が加入、保険料は収入に応じて変わる
- 加入対象者:会社員や公務員、またパート等で特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たした人(国民年金に上乗せで加入)
- 年金保険料:収入に応じて(上限あり)変わる(※4)
- 老齢年金の受給額:加入期間や納付した保険料により個人差が出る
このように、国民年金と厚生年金では、加入対象となる人、年金保険料の決まり方、老齢年金額の計算方法などが異なります。そのため、現役時代の年金加入履歴により、実際に受け取る老齢年金額にはおのずと個人差が出てくるのです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
1.3 【2026年の年金支給日カレンダー】偶数月15日が基本、次の支給日は10月15日
公的年金は、原則として「偶数月の15日(※5)」に、支給月の前々月分と前月分の2カ月分を合算して支給されます(後払い方式)。2026年の「年金支給日」と「支給対象」の年金は以下の通りです。
- 2026年2月13日(金):2025年12月・2026年1月分
- 2026年4月15日(水):2月・3月分
- 2026年6月15日(月): 4月・5月分
- 2026年8月14日(金): 6月・7月分
- 2026年10月15日(木): 8月・9月分
- 2026年12月15日(火): 10月・11月分
※5 「15日」が土日・祝日の場合は直前の平日に前倒しされる
2. 2026年度の年金額改定|国民年金1.9%・厚生年金2.0%の引き上げ、6月支給分から反映
2026年度の年金額は、前年度から基礎年金(国民年金部分)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分を含む)が2.0%引き上げとなります。改定後の年金額は、4月・5月分をまとめて支給する6月支給分から反映されます。
2.1 2026年度の年金額例|国民年金の満額は月7万608円、厚生年金の夫婦2人分は23万7279円
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚生労働省は今回の年金改定の公表にあたり、「多様なライフコースに応じた年金額」として現役時代の働き方や収入ごとの年金額例を提示しています。
3. 「多様なライフコース」で年金額はどう変わる?厚生労働省が示す5パターンは月6万3513円〜17万6793円
年金加入期間や収入により、どのように年金額が変わっていくのでしょうか。厚生労働省は、2026年度の年金額改定内容とともに、現役時代の年金加入状況や年収ごとの年金額例を、「多様なライフコースに応じた年金額」として公表しました。具体的には、「2026年度に65歳になる人の場合」の年金額の概算が、公的年金加入履歴の類型・男女別に「合計5パターン」提示されています。
3.1 パターン①【男性・厚生年金期間中心】年金月額17万6793円|厚生年金期間39.8年・平均収入50万9000円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円(賞与含む月額換算。以下同じ)
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
3.2 パターン②【男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心】年金月額6万3513円|厚生年金期間は7.6年のみ
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
3.3 パターン③【女性・厚生年金期間中心】年金月額13万4640円|厚生年金期間33.4年・平均収入35万6000円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
3.4 パターン④【女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心】年金月額6万1771円|厚生年金期間は6.5年のみ
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
3.5 パターン⑤【女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心】年金月額7万8249円|基礎年金6万9016円が中心
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
上記はあくまでも年金額の例ですが、厚生年金の加入期間が長く、収入が高いほど、老後に受け取る年金額は多くなる傾向が見られます。また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたのかが、年金水準に大きな影響を与えていることも見て取れます。
4. 【独自シミュレーション】共働き夫婦(パターン①+③)の世帯年金は月31万1433円・年373万7196円
厚生労働省の「多様なライフコース」パターン①(男性・厚生年金期間中心、17万6793円)とパターン③(女性・厚生年金期間中心、13万4640円)を組み合わせ、共働き夫婦世帯を仮定して試算してみます。
- 世帯の年金月額:17万6793円+13万4640円=31万1433円
- 年額換算:31万1433円×12カ月=373万7196円
共働きで厚生年金の加入期間が長い世帯ほど、世帯全体の年金額も高くなる傾向がうかがえます。あくまで公表されたモデルケースを組み合わせた一例であり、実際の受給額は加入状況によって異なります。
5. 厚生年金・国民年金の平均月額はいくら?厚生年金15万289円・国民年金5万9310円(男女別・全年齢)
老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況により人それぞれです。ここでは、60歳~90歳以上のすべての受給権者について、厚生年金と国民年金の受給額分布を見ていきます。
5.1 厚生年金の平均月額|全体15万289円、男性16万9967円・女性11万1413円
厚生年金の平均年金月額は、全体では15万289円でした。男女別は下記のとおりです。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
厚生年金の年金月額階級ごとの受給者数|最多は「10万円以上11万円未満」の111万2828人
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均年金月額は、全体で見ると15万円台ですが男女差があり、男性16万円台、女性10万円台となっています。また、月額1万円未満となる人から、25万円を超える高額受給者まで幅広い層に分布しており、個人差が大きいことがわかります。
5.2 国民年金の平均月額|全体5万9310円、男性6万1595円・女性5万7582円
国民年金の平均年金月額は、全体では5万9310円でした。男女別は下記のとおりです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の年金月額階級ごとの受給者数|最多は「6万円以上7万円未満」の1715万5059人
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均年金月額は、男女ともに5万円台、ボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」です。多くの人が満額に近い年金額を受け取る一方で、月額1万円未満となる人も一定数存在しています。
6. 【独自シミュレーション】自営業+専業主婦世帯(パターン②+⑤)の世帯年金は月14万1762円、共働きとの差は月約17万円
厚生労働省の「多様なライフコース」パターン②(男性・国民年金第1号中心、6万3513円)とパターン⑤(女性・国民年金第3号中心、7万8249円)を組み合わせ、自営業に近い夫と専業主婦だった妻の世帯を仮定して試算してみます。
- 世帯の年金月額:6万3513円+7万8249円=14万1762円
- 年額換算:14万1762円×12カ月=170万1144円
共働きで厚生年金加入期間が長い世帯(パターン①+③の組み合わせ、月額31万1433円)と比べると、世帯合計で月17万円近い差が生まれる計算になります。あくまで公表されたモデルケースを組み合わせた一例であり、実際の受給額は加入状況によって異なります。
7. 【監修者コメント・安達さやか】加入していた制度の違いが、年金額の差として表れる
この記事では、公的年金の2階建ての仕組みと2026年の支給日、2026年度の年金額改定、そして厚生労働省が示す「多様なライフコースに応じた年金額」の5パターンをご紹介しました。厚生年金の加入期間の長さが年金額を左右することが、5つのパターンから読み取れます。
なお、国民年金(第1号・第3号)の期間が中心となるパターン②・④・⑤では、年金月額は6万円台から7万円台です。厚生年金の平均年金月額が男性16万9967円、女性11万1413円ですので、どちらの制度に長く加入していたかが、そのまま金額の差として表れています。
かつて証券会社でファイナンシャルアドバイザーとしてご相談を受けていた頃、富裕層の方の多くはご自身の年金見込額を把握したうえで資産運用に取り組んでいる傾向にありました。
公的年金という土台の水準が分かったうえで、NISAやiDeCoといった税制優遇制度の活用について検討するのもよいでしょう。ただし、資産運用には価格変動リスクや元本割れの可能性があります。
ご自身の年金の加入履歴や見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。2026年度は増額改定となりましたが、医療や介護の保険料も見直される時期にあたりますので、額面の増加分と手取りの増加分は分けて見ておくようにしましょう。



