4. 70歳代に多い「資産がどこにどれだけあるのか分からない」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が伝えたいこと

70歳代の方からご相談を受けるとき、話題になるのは貯蓄額そのものよりも「自分の資産がどこにどれだけあるのか分からない」という不安です。まずは全体像をつかむことが、その後の判断をぐっと楽にしてくれます。

4.1 70歳代に多いお悩み相談は「資産の置き場所を把握できていない」

収入が年金中心になるころには、長年のあいだに銀行・証券会社・保険会社と取引先が増え、ほとんど使っていない口座や、加入した内容を覚えていない商品が手元に残りがちです。

70歳代のお客様(ご相談者)
年金だけの収入なので、少しでも楽しみが持てるようにお金に働いてもらいたいとは思っています。ただ、株式は夫から引き継いだままで運用は家族に任せきりですし、保険もいくつか入っているものの内容を覚えていません。運用は怖いので、一人で決める勇気がないのです。

このような悩みを抱えるお客様は多くいらっしゃいます。多くの場合、一緒に手元の資産を確認していくと、物価上昇のなかで資産が実質的に目減りしていく現状と、年金以外の収入源が必要だという課題がはっきりし、運用への関心が高まります。判断できなかったのは知識不足ではなく、情報が散らばっていたからです。

4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が回答】使っていない口座を整理し、資産の全体像をつかむことから始める

菅原 美優
まずは、資産の状況を把握することが大切です。使ってない口座と手元の書類を一度に集めて整理してみましょう。残す資産を目的別に分けて役割を決めることにより、管理もしやすくなります。

当面の生活資金などはすぐに引き出せる口座へ残しておき、長期的に物価上昇に負けないようにお金を育てていく方法も考えてみると良いでしょう。

また、年金以外の定期的な収入を得る手段を比べ、ご自身に合う形を選ぶことが、将来への安心にもつながります。本記事が、現状の整理と今後の資産管理方法についての参考となれば幸いです。

資産の全体像をつかむ作業は、難しい知識よりも手順が大切です。使っていない口座を整理し、残すものの役割を決める。この順番で進めると、必要な判断はおのずと絞られていきます。

4.3 ポイント1:使っていない口座と手元の書類を一度に集める

一つ目は、「使っていない口座と手元の書類を一度に集める」ことです。通帳やキャッシュカード、保険証券、証券会社からの取引報告書をテーブルに並べ、残高がほとんど動いていない口座や、目的が思い出せない商品に印をつけます。これだけで、把握すべき数はかなり減ります。

4.4 ポイント2:残す資産を目的別に分けて役割を決める

二つ目は、「残す資産を目的別に分けて役割を決める」ことです。当面の生活や医療にすぐ使うお金、値動きを避けて守るお金、物価上昇に負けないよう育てるお金の三つに分けます。役割が決まると、どの口座にいくら置くべきかが見え、口座をまとめる判断もしやすくなります。

4.5 ポイント3:年金以外の定期的な収入を得る手段を比べる

三つ目は、「年金以外の定期的な収入を得る手段を比べる」ことです。すでに加入している保険と、債券などの運用商品では、受け取り方や税金の扱いが異なります。保障が重複していないかを確認したうえで、ご自身のリスク許容度に合う形を選ぶと、無理のない上乗せ収入につながります。

なお、債券や投資信託は預貯金と異なり元本が保証されず、価格変動や為替の影響で受け取り額が減ることもあります。外貨建ての商品や途中解約時の費用にも注意が必要です。整理の目的は増やすことではなく、まず把握して選べる状態にすることだとお考えください。

5. まとめにかえて

70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2416万円、中央値は1178万円で、世帯間の差は決して小さくありません。厚生年金・国民年金の平均月額を組み合わせても夫婦二人分で月22万7549円にとどまり、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では毎月4万2434円の赤字となり、年間で約51万円を貯蓄から取り崩している計算になります。中央値の1178万円なら、単純計算で約23年分にあたります。

こうした数字を自分ごととして考えるには、まず手元の資産がどこにいくらあるのかを確認することが出発点です。使っていない口座を整理し、資産を正確に把握する。適切に進めれば、取り崩しのペースと貯蓄額が釣り合っているかを落ち着いて確認できるようになります。

参考資料

菅原 美優