3. 請求できる期間が5年に延びた
ここからは、年金分割の期限と手続きの話に移ります。
3.1 令和8年4月1日が境目になる
分割請求の期限は、原則として、離婚をしたときや婚姻の取り消しをしたときなどに該当した日の翌日から起算して5年以内です。令和8年4月1日前に離婚等をした場合は2年以内になります。
事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者の資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるときも、同じように期限の対象になります。なお、按分割合を決めるための情報提供の請求も、この期限内に行う必要があります。
3.2 期限には特例もある
裁判の手続きが絡む場合には特例が設けられています。離婚から5年を経過するまでに審判の申立てを行い、本来の請求期限が経過した後に審判が確定した場合などは、その日の翌日から6カ月経過するまでは請求できます。
調停の申立てをした場合や、按分割合に関する附帯処分を求める申立てをした場合も同じ扱いです。また、按分割合を決めた後、分割の手続き前に当事者の一方が亡くなった場合は、死亡日から1カ月以内に限り請求が認められます。
4. 手続きは年金事務所で2段階になる
実際の流れも押さえておきましょう。
4.1 まず情報通知書を請求する
按分割合を決めるには、分割の対象となる期間と、その期間における当事者それぞれの標準報酬月額・標準賞与額、按分割合を定めることができる範囲を把握しておく必要があります。そのために、当事者双方または一方からの請求により、情報通知書が提供されます。
この請求は、離婚の前でも後でも行えます。「年金分割のための情報提供請求書」に、基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにできる書類と、婚姻期間を明らかにできる戸籍謄本などを添えて年金事務所に提出します。
4.2 次に標準報酬改定請求書を出す
合意分割の請求そのものは、離婚をした後に行います。「標準報酬改定請求書」に、先ほどの書類に加えて、二人の生存を証明できる書類と、年金分割の割合を明らかにできる書類を添えて提出することになります。
割合を明らかにできる書類は、公正証書の謄本や抄本、公証人の認証を受けた私署証書、または「年金分割の合意書」などです。合意書による場合は、二人がそろって年金事務所に持参する必要があります。裁判の手続きで割合を定めたときは、審判書の謄本と確定証明書などを添えます。
5. 【元自治体職員の実感】離婚のときは保険の手続きも並行する
年金の手続きと同時に、自治体の窓口でも動くことがあります。
5.1 健康保険から国民健康保険に移ることがある
配偶者の健康保険の被扶養者になっていた人は、離婚によってその資格を失います。ほかの健康保険に入らない場合は、国民健康保険に加入する届出が必要になります。
保険料の計算を担当していた頃、年金の相談と保険の相談で窓口が分かれていることに戸惑う方にお会いしました。年金分割は年金事務所、国民健康保険は市区町村というように、受け付ける先が違います。
5.2 世帯が分かれると保険料の判定も変わる
国民健康保険料の均等割の軽減は、世帯の所得を基準に判定されます。世帯の構成が変われば、判定に使われる所得の範囲も変わることになります。
ただし、これは軽くなる方向にも重くなる方向にも動きます。世帯の状況によって結果は違いますので、実際にどうなるかは市区町村の窓口で確認していただくのが確実です。
6. まとめにかえて
離婚時の年金分割には、合意分割制度と3号分割制度があります。合意分割は平成19年4月1日以後の離婚等が対象で、当事者双方の合意または裁判手続きにより按分割合を定めることが必要です。3号分割は平成20年5月1日以後の離婚等が対象で、相手方の合意は要りません。
分割されるのは厚生年金の報酬比例部分に限られ、老齢基礎年金には影響しません。分割を受けても、自身の受給資格期間を満たし、支給開始年齢に到達していなければ受け取れないという点も押さえておきたいところです。
請求の期限は原則5年以内に延びましたが、令和8年4月1日前に離婚等をした場合は2年以内のままです。自分がどちらに当てはまるのか、また按分割合をどう定めるのかについては、年金事務所で相談してみてください。
参考資料
太田 彩子