3. 「持ち家=資産形成」の意味が変わってきた。保険的な感覚の人が増加
住宅購入における価値観の変化は、「資産形成」の考え方にも及んでいます。
リノベるが2026年6月に発表した「リノベる。ユーザーレポート」によると、住宅購入を検討する理由として「家賃がもったいないから」と回答した割合は41.8%から57.0%に、「資産形成のため」は13.0%から24.2%に増加しました。
それぞれ2021年比で1.36倍、約1.86倍となっています。
こうした変化からは、住居費を単なる支出として捉えるのではなく、住宅を資産として考えたいという意識の強まりもうかがえます。
しかし、齋藤部長によると、その中身は従来の資産形成の考え方とは少し異なります。
「以前は、家を買って将来高く売れればいいという投資的な感覚を持つ人も多かったですが、最近は、万が一のときに備えて資産として持っていた方がいいという、保険に近い感覚で考える人も増えていると感じます」
たとえば、賃貸住宅の場合、家賃を払い続ける必要があり、将来的に働き方や収入が変化した場合でも、住居費は発生し続けます。
一方、住宅を購入すれば不動産という資産が残ります。住宅ローンの契約内容によっては団体信用生命保険が付帯するため、家族の将来を考える際の安心材料になります。
もちろん、住宅を購入すれば必ず資産価値が上がるわけではなく、住宅ローンを組めば返済義務も生じますが、長期的な住居費や将来への不安を考える際の、安心材料の一つになり得ます。
4. 「中古+リノベ」はこだわり派だけのものではない?現実志向の新たなニーズ
中古マンションとリノベーションの組み合わせも、以前とは位置付けが変わりつつあります。
かつてリノベーションというと、デザインや設備まで細かく決め、自分のこだわりを全面的に住まいへ反映させたい人の選択肢というイメージがありました。
現在も、時間や費用をかけて理想の住まいを追求するニーズは根強くあります。一方で近年は、すべてを自分で選ぶのではなく、プロが厳選した仕様をベースに、暮らしに直結する部分だけに集中したいというニーズも広がっています。
リノベるでも、こうしたニーズに対応するため、2024年にセレクテッドリノベーションサービス「The R. by RENOVERU」をリリースしました。
同サービスは、住宅設備や内装の仕様をプロが厳選する一方、利用者は自由度の高い間取りづくりに集中できるのが特徴です。打ち合わせ回数を抑え、面積に応じた工事費の目安を明確にすることで、選択や予算に対する負担・不安の軽減を目指しています。
リノベるによると、「The R. by RENOVERU」の完工件数は前年比2.4倍となり、累計100戸を超えています。
時間や費用をかけても理想の住まいを追求したい人にはフルオーダー型、自分にとって重要なことだけに集中したい人にはセレクテッド型というように、選択肢が広がっています。
「すべてを自由に選べること」が、必ずしも豊かさとは限りません。情報や選択肢が増えた時代だからこそ、あえて「選ばない」ことで、本当に大切なことに集中する。こうした住まいづくりの形も、「メンパ」重視の価値観を象徴する変化の一つといえそうです。
5. 「一番得する家」より「納得して暮らせる家」へ
住宅価格や金利の先行きが見通しにくい時代では、いかに多くの情報を取得したとしても、それが「正解」につながるとは限りません。むしろ選択肢が増えたからこそ、自分自身が何を大切にしたいのかを考える必要性は高まっています。
住宅を購入する際、資産価値は多くの人にとって重要な判断材料の一つですが、「将来、住宅の価値がどのように変化するか」という視点は、未来にならないと分からない不確実性の高いもので、心理的な負担が常につきまといます。
一方、「自分らしい暮らしができているか」「将来への備えになっているか」という視点は、現在の生活や自分自身の価値観に照らして考えやすく、長期的な安心感にもつながりやすいでしょう。「中古マンション+リノベ」は、まさにそうしたメンパ重視の考え方が当てはまりやすい選択肢になっているようです。
6. トレンドウォッチャーのひとこと
不動産経済研究所が2026年1月に発表した調査によると、2025年の首都圏新築分譲マンションの発売戸数は2万1962戸で、1973年の調査開始以来、最少となりました。
一方、中古マンションの成約件数は4万9114件で、新築マンションの発売戸数の約2.2倍となりました。
リノベるのユーザーレポートで興味深かったのが、「中古と並行して新築を探している」という層が減少し、「中古マンションが第1希望」という層が増えていることです。
リノベるのユーザーを見る限り、特に若い世代にとって、中古マンションは住まい選びの有力な選択肢として定着しつつあるようです。
参考資料
- リノベる株式会社
- 「リノべる。」
- 「The R. by RENOVERU」
- リノベる株式会社リリース「中古が新築の2.2倍に。実需層は「中古一択」へAIの普及でメンパ志向が住まい選びの新潮流に/リノベる。ユーザーレポート」
- 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025 年のまとめ」
大蔵 大輔


