2026年度の年金額は、標準的な夫婦世帯で月額4495円のアップとなり、6月支給分から改定後の金額が反映されています。2026年の次の定期支払日は10月15日(木)です。

もっとも、実際に受け取れる金額は人によって大きく異なります。とくに男女の差は大きく、その背景には現役時代の「働き方」の違いがあります。

本記事では、厚生年金の受給額のリアルを確認したうえで、5年連続で減少している「第3号被保険者」のデータから、女性の年金額に差が生まれる構造を読み解いていきます。

鶴田 綾
年金の話題では「平均でいくらもらえるか」に注目が集まりがちですが、平均額は全体をならした数字にすぎません。厚生年金は現役時代の収入と加入期間で決まるため、同じ年齢でも受給額には大きな幅があります。とくに男女差は制度そのものというより、働き方の積み重ねの結果として表れます。まずは分布と、その背景にある構造の両方を見ていただくのがおすすめです。

なお、2026年度の年金額や平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
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ココがポイント
  • 厚生年金で月30万円以上を受け取る人は全体の約0.12%。平均月額は全体15万289円、男性16万9967円、女性11万1413円
  • 第3号被保険者は約641万人。うち女性が約628万人を占め、前年比6.7%減と5年連続で減少している
  • 第1子出産後も53.8%が就業を継続する時代に。ただし6歳未満の子がいる家庭の家事・育児時間は妻7時間28分に対し夫1時間54分

1. 厚生年金で「月30万円超え」は約0.12%、男女の平均額には5万8000円超の開き

年金額の改定というニュースに触れると、実際にどのくらいの金額を受け取っている人がいるのかが気になるところです。

厚生年金のリアルな受給額については、LIMOの記事「【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説」から要点を引用して確認しておきましょう。

夫婦2人分の標準的な年金額は月額23万7279円となり、年金は2カ月ごとに支給されるため、1回あたりの振込額は47万4558円です。

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

厚生年金受給者のうち、月額30万円以上を受け取っている人は全体の約0.12%にとどまります。

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

注目したいのは、男性16万9967円に対して女性11万1413円という差です。その差は月額で5万8554円、年額に直すと約70万円にのぼります。

厚生年金は現役時代の報酬と加入期間で決まる仕組みですから、この差は制度上の男女差ではなく、働き方の積み重ねが数字となって表れたものだといえます。

鶴田 綾
月30万円以上を受け取る人が約0.12%という数字は、1000人に1人程度という水準です。ニュースやSNSでは高額受給の事例が目立ちやすいのですが、それは分布のごく端にある例外だと捉えておいたほうが、老後の計画は現実的になります。むしろ意識したいのは男女の平均差のほうで、月5万8554円という開きは、20年間受け取り続けると1400万円を超える差になります。

2. 岐路に立つ「第3号被保険者」5年連続で減少、背景に共働き世帯の増加

国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金(公務員などが加入していた旧共済年金を含む)に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件を満たす人が対象です。

令和6年度末時点では約641万人が該当しています。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をみると、女性の第3号被保険者の人数は5年連続で減少していることがわかります。

第3号被保険者の総数:約641万人

  • 男性:約13万人(+3.1%)
  • 女性:約628万人(▲6.7%)

第3号被保険者の大きな特徴は、本人が保険料を負担しなくても国民年金に加入している扱いになる点です。これは厚生年金制度全体でその費用を負担する仕組みになっているためで、配偶者個人の保険料が上乗せされるわけではありません。加入手続きも本人ではなく、配偶者の勤務先を通じて行われます。

ただし、保険料負担がない代わりに、この期間は2階部分の厚生年金が積み上がりません。第3号被保険者であった期間が長いほど、将来の年金は1階部分の老齢基礎年金が中心になります。

第3号被保険者の大半が女性である背景には、日本の就業構造が影響しています。厚生年金・国民年金の平均受給額にも、その差がはっきりと表れています。

2.1 「出産退職」から「継続就業」へ。第1子出産をめぐる女性の就業変化

厚生労働省が公表する「令和7年版厚生労働白書」をみると、第1子出産をめぐる女性の就業変化が見えてきます。

かつては第1子出産を機に離職する「出産退職」が一般的でしたが、2015〜19年のデータでは53.8%が仕事を継続しており、過半数を超えました。

しかし、仕事を辞めずに済んでも、育児との両立のために「パート・派遣」といった非正規雇用を選択するケースが依然として多いのが実情です。これが結果として、将来受け取る厚生年金額の低迷や、第3号被保険者にとどまる要因の一つとなっています。

3. 育児・家事負担は妻が夫の「4倍」。共働きの理想と現実のギャップ

共働き世帯が増えたとはいえ、家庭内のタスク分担には依然として大きな偏りがあります。令和7年版「厚生労働白書・日本の1日」の調査では、6歳未満の子どもがいる家庭において、夫の家事・育児時間が1日平均「1時間54分」であるのに対し、妻は「7時間28分」。

妻が夫の約4倍もの時間を家庭に割いているという現実は、女性がキャリアを維持し、将来の年金額を増やす(=厚生年金に長く加入する)上での大きな障壁となっています。年金制度の議論だけでなく、こうした「家庭内の働き方改革」が進まない限り、女性の老後資金格差を埋めるのは容易ではないでしょう。

3.1 【試算】第3号被保険者のまま20年と、厚生年金に加入して働いた20年では受給額はどう変わる?

第3号被保険者の期間は保険料負担がない一方で、2階部分は積み上がりません。同じ20年間を「第3号被保険者で過ごした場合」と「厚生年金に加入して働いた場合」で、将来の年金額がどれだけ変わるのかを試算してみましょう(2003年4月以降の給付乗率5.481/1000で計算、賞与は考慮せず、円未満四捨五入)。

  • 第3号被保険者として20年:上乗せされる老齢厚生年金は0円(老齢基礎年金の対象期間にはなる)
  • 標準報酬月額10万円で20年(240カ月)加入:年額約13万1544円(月額約1万962円)の上乗せ
  • 標準報酬月額15万円で20年(240カ月)加入:年額約19万7316円(月額約1万6443円)の上乗せ

月額1万円前後というと小さく見えるかもしれませんが、65歳から20年間受け取り続けた場合の累計は、標準報酬月額10万円のケースで約263万円、15万円のケースで約395万円になる計算です。しかも老齢年金は生涯にわたって受け取れるため、長生きするほど差は開いていきます。

あくまで一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は加入記録や賞与の有無によって変わります。働き方を変えると社会保険料の負担や手取りも変わるため、目先の手取りと将来の年金の両方を見比べて判断することが大切です。

4. まとめにかえて

厚生年金で月30万円以上を受け取る人は全体の約0.12%にとどまり、平均月額は男性16万9967円、女性11万1413円と、月5万8554円の開きがあります。

この差は制度上の男女差ではなく、出産・育児期の働き方の積み重ねが数字として表れたものです。第1子出産後も53.8%が就業を継続する時代になった一方で、家事・育児時間は妻が夫の約4倍という現実が、キャリアの継続を難しくしています。

第3号被保険者が5年連続で減少しているのは、共働きが標準になりつつあることの表れでもあります。働き方を選ぶ際は、目先の手取りだけでなく、その選択が将来の年金にどう跳ね返るのかまで含めて考えておきたいところです。