5. 「このまま預金だけで大丈夫?」住宅ローンを抱える40歳代の悩みに、ファイナンシャルアドバイザー・鶴田綾が答えます
将来に向けた資産形成を考えるとき、長年コツコツと貯蓄を続けてきた方ほど「本当にこのまま預金だけで大丈夫なのだろうか」と迷いを抱えやすいものです。とくに住宅ローンを抱えながら子育て期にある40歳代からは、こうした声が多く聞かれます。
5.1 【お悩み】財形貯蓄・繰り上げ返済・資産運用、どこにどうお金を配分すればいいのか分からない

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・鶴田綾が回答】資産の役割を整理し、インフレと金利のバランスを見極める
「住宅ローンは借金だから、少しでも早く返したい」と考える方は多いと思います。ただ、判断の軸になるのは気持ちよりも数字で、同じ資金を繰り上げ返済に充てた場合と運用に回した場合とで、どちらの利回りが高いのかという比較です。ローンの金利が1%台で、投資で期待できる利回りがそれを上回るのであれば、運用に回したほうが将来的に手元に残る資産は多くなる計算になります。
加えて考えたいのが物価の動きです。仮に物価が年2%上がると、今100万円で買えるものは1年後に102万円出さなければ買えなくなり、実質的に2万円の手出しが必要になります。この目減りを打ち消すには、投資信託や株式、債券などで運用し、物価上昇率を上回るペースで資産を増やしていく必要があります。
とはいえ、投資には元本割れのリスクがつきものです。はじめての方は、IFAなど投資の専門家に相談しながら、リスクを抑えつつインフレや金利上昇に備えられる資産の持ち方を一緒に整理していくところから始めるのが安心だと思います。
5.3 ポイント1:預貯金だけで持つことは、インフレ下ではリスクになり得る
まず見直したいのは、資産を預貯金だけで持ち続けることの実質的なリスクです。元本が保証されている貯蓄が最も安全だと考える方は多いのですが、インフレ下ではお金の額面が変わらなくても、実質的な購買力は低下していきます。円建ての預金だけで資産を持つこと自体がリスクになり得るという視点は、これからの資産形成に欠かせない前提といえるでしょう。預金と積立投資で20年後の資産額がどれだけ変わるかは、【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?でも具体的に比較されています。
5.4 ポイント2:繰り上げ返済と運用は、金利と利回りを比較して判断する
次に悩ましいのが、手元の資金を繰り上げ返済に回すか、運用に回すかという選択です。金利上昇を心配して返済を急ぎたくなる気持ちは自然ですが、住宅ローンの金利よりも期待できる運用利回りのほうが高いのであれば、無理に繰り上げ返済を優先しないという判断もあり得ます。手元資金を大きく減らしてまで返済を急ぐのではなく、金利と利回りの差を冷静に比較して配分を決めることが大切です。
5.5 ポイント3:積立投資でタイミングのリスクを分散する
過去の投資で元本割れを経験し、運用に踏み出せないという方も少なくありません。こうした場合に有効なのが、購入するタイミングを分散させる考え方です。積立投資は毎月同じタイミングで一定額を買い付けていくため、価格の上下を平均していく効果が期待できます。「今が高いのか安いのか」を当てにいく必要がないぶん、続けやすい方法だといえるでしょう。
5.6 ポイント4:現役時代は複利で増やし、老後は単利で受け取る
そのうえで、将来を見据えた資産の持ち方も整理しておきたいポイントです。現役世代のうちは複利を活かして資産を育て、老後は年金のように定期的に取り崩して受け取る。このようにライフステージで役割を分けると、資産を大きく育てる時期と、収入として受け取る時期とで適した手法が違うことが見えてきます。
5.7 【試算】年2%の物価上昇が20年続くと、1000万円の預金の価値はどうなる?
インフレによる目減りは実感しにくいものですが、数字にすると輪郭がはっきりします。手元の1000万円を金利をほぼ考慮しない預金のまま20年間置いた場合と、年3%で運用できた場合を、年2%の物価上昇が続く前提で比較してみましょう(複利計算、万円未満四捨五入)。
- 預金のまま20年:額面は1000万円のままだが、20年後の物価水準で見た価値は約673万円(約327万円分の購買力が失われる計算)
- 年3%で20年運用:額面は約1806万円。20年後の物価水準で見た価値は約1215万円
同じ1000万円でも、20年後の「買えるものの量」で比べると差は約542万円分にのぼる計算です。年3%という利回りはあくまで仮定であり、運用成果を保証するものではありませんが、「何もしないこと」にもリスクがあることは押さえておきたいところです。
投資は怖い、あるいは借金は早く返すのが正解だと決めつける前に、手元の資金の役割と金利のバランスを一つずつ整理してみる。それが、将来に向けた資産形成の出発点になります。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年版厚生労働白書・第2部-第1章 働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など」
- 厚生労働省「令和7年版厚生労働白書・日本の1日」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 政府広報オンライン「年金の手続。国民年金の第3号被保険者のかたへ。」
- LIMO「【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説」
- LIMO「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」
- LIMO「【月3万円×20年】預金と新NISAの資産差はいくら?『利回り5%の積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金』シミュレーションで徹底比較 インフレリスクを踏まえ、『複利効果』のインパクトを解き明かす」
鶴田 綾
