6. 60代・70代以上に多い「引き継ぐ側が分からない」ケース。ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈が伝えたいこと

日頃のご相談では、ご自身の資産をどう次の世代へ渡すかというお話をうかがう機会が増えています。渡す段になって初めて中身を確認するのでは、家族の負担が大きくなります。

6.1 60代・70代以上に多いお悩み相談は「引き継ぐ側が分からない」

配偶者から引き継いだ資産を、内容を十分に把握しないまま持ち続けているケースは少なくありません。管理を家族の誰かに任せきりになっていると、次に渡すときの手がかりも残りません。次のような声を耳にします。

70代のお客様(ご相談者)
夫から引き継いだ株式がありますが、中身は娘に任せきりで、私自身はよく分かっていません。年金が主な収入なので資産は大事にしたいのですが、この先どうしておくのがよいのかも判断がつきません。

もめる原因の多くは、金額の大小ではなく「分からない」ことにあります。生前のうちに把握できる形にしておくことが、いちばんの備えになります。

6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈が回答】相続で家族がもめないために生前にしておく3つの解決策

松本 真奈

「引き継いだ資産をどうすればいいのか」「自分の資産をどうやって残すか」こういった不安を感じている方は多い一方で、どうしても後回しにしてしまう内容かと思います。

ですが、実際にその資産移される場合は使う場合、引き継ぐ際には税金や相続に関する問題が多発しやすい局面です。
せっかくご家族や周りの人のために準備した資産だとしても、こういったトラブルに繋がる可能性はあります。

ご自身ができるだけ健康で元気なうちに、こういった資産の行く末についても早めに考えておくとよいでしょう。
ルールや条件を理解しておくことによって、家族にもわかりやすい資産移動ができると良いですね。

準備は、分け方を決める前に、中身を明らかにするところから始めます。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

6.3 ポイント1:資産の一覧をつくる

一つ目は、「資産の一覧をつくる」ことです。どの金融機関に何があるのか、保険はどこと契約しているのか。相続の場面で最も手間がかかるのは資産を探す作業なので、一覧があるだけで家族の負担は大きく減ります。

6.4 ポイント2:分けやすい形に整えておく

二つ目は、「分けやすい形に整えておく」ことです。不動産や現物のように分割しにくい資産が多いと、分け方でもめやすくなります。保険金として受け取れる形にしておくなど、分けやすさを意識して資産の形を見直しておくと選択肢が増えます。

6.5 ポイント3:考えを言葉にして残しておく

三つ目は、「考えを言葉にして残しておく」ことです。誰に何を渡したいのかを、元気なうちに家族へ伝えておく。口頭だけでなく形に残しておけば、後から解釈が分かれる余地が小さくなります。

なお、相続税の基礎控除や保険金の非課税枠、遺言の要件などはご家庭の状況によって扱いが異なり、税制改正もあります。ご自身の場合にどのような方法が適しているかは、税理士や司法書士などの専門家、税務署にご確認ください。株式や投資信託には元本割れの可能性があります。

7. まとめにかえて

70歳代・二人以上世帯の貯蓄は、平均2416万円に対して中央値1178万円でした。分布を見ると1000万円未満が44.1%、2000万円以上が37.5%で、その間の1000万円台から2000万円未満は17.8%にとどまります。同じ年代のなかで資産状況が大きく分かれているのが実態です。

年金額も同様です。厚生年金の平均は15万289円ですが、男性16万9967円と女性11万1413円では5万8554円の差があり、分布も1万円未満から30万円以上まで広がります。一方、納付月数だけで決まる国民年金は5万9310円で、男女差は4013円にとどまり、6万円台に人が集中していました。

そして65歳以上の夫婦のみ無職世帯は、毎月約4万2000円が不足し、10年で約500万円を貯蓄から取り崩す計算になります。中央値の世帯であれば、20年で貯蓄の大部分が使われる水準です。

これらはいずれも平均や中央値であり、そのまま自分に当てはまるものではありません。まずはねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を確認し、ご自身の支出と並べてみてください。そのうえで、資産の引き継ぎを考える段階にあるなら、何をどこに持っているかを一覧にしておくことが、家族の負担を軽くする最初の一歩になります。

参考資料