4. 「オルカン一本だけで大丈夫?」新NISAの分散と為替リスクについて、ファイナンシャルアドバイザー・神田翔平に聞く
新NISAを始めるとき、まず候補に挙がるのが全世界株式に広く分散するタイプのインデックスファンドです。日頃のご相談でも「とりあえずオルカン(全世界株式型の投資信託の通称)一本にしておけば大丈夫でしょうか」というご質問をいただく機会がとても多くあります。ここでは、新NISAでの銘柄選びについて相談に訪れた40代の方の一事例をもとに、ファイナンシャルアドバイザーの神田翔平さんに伺った考え方を紹介します。
4.1 一本にまとめれば、それだけで分散できている?
NISA口座を開設したばかりの時期は、毎月いくらを、どの銘柄に積み立てるのかで迷われる方が多いです。とくに教育費と老後資金を同時に準備する時期にあたる方は、失敗したくないという気持ちが強くなりやすく、相談の場では次のような声をうかがいます。

「広く分散された商品を一本」という選び方そのものが誤りというわけではありません。ただ、この一事例では、一本にまとめても思うほど分散が効かない場面があると知ったことで、受け止め方が変わっていきました。値動きの性質が異なる資産を組み合わせるという選択肢に関心を持たれたことが転機です。
4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・神田翔平が回答】決めたいのは「良い商品かどうか」より「何を分散しているか」
筆者もよくお客様から「オルカンだけで投資し続けているが問題ないか」といったご相談を受けることが多々あります。
もちろん、投資方針と手段がマッチしているのであれば問題はありませんが、よくわからないまま選択しているのであれば再考の余地はあります。
例えば、すべての運用リスクをカバーできるようにオルカン一本で運用しているのであれば、その限りではありません。
投資信託はある一定の運用方針に基づいて投資銘柄を選定していますが、どうしても資産配分に偏りが出てしまう場合があります。まずは、自分の保有投資信託の銘柄の細部まで確認したうえで、ちゃんと意向にあった選択が取れているのかを確かめましょう。
私がご相談の場でお伝えしているのは、特定の商品を否定することでも推奨することでもなく、「その商品が何を分散しているのか」を確認したうえで組み合わせを考える、という順番です。以下の三つの順序でお話しすることが多くあります。
4.3 ポイント1:「広く分散」と書いてあれば、中身も分散されている?
まず取りかかりたいのは、保有している商品の中身を確認することです。全世界株式に連動するタイプの商品は、投資先の国や銘柄の数が多い一方で、時価総額の大きい米国の成長株の比重が高くなりやすいという特徴があります。銘柄数の多さと、資金がどこに配分されているかは別の話だということです。まずは目論見書や運用報告書などの商品資料で国別・銘柄別の構成比を確認し、自分がどこに偏って投資しているのかを把握するところから始めてみてください。
4.4 ポイント2:本数を増やせば、それで分散になっている?
次に考えるのが、値動きの性質が違うものを組み合わせられないか、という点です。成長株が中心の商品を主軸にするのであれば、それとは値動きのタイプが異なる資産を加えることで、組み合わせ全体としての分散が働きやすくなります。逆に言えば、同じ性質の商品を二本持っても、本数が増えただけで分散が進んだことにはなりません。何本持っているかではなく、異なる性質を持たせられているかが分散の考え方です。ただし、組み合わせても値動きは残りますし、下落局面では複数の資産が同時に値下がりすることもあります。分散は損失を防ぐ仕組みではなく、値動きの振れ方をならすことを期待する考え方だとご理解ください。
4.5 ポイント3:最初から完璧な配分を決めないといけない?
三つ目は、金額の配分は無理のない範囲から始め、あとから調整するという点です。積立額や配分は途中で変更できるため、最初から完璧な形を目指す必要はありません。関心のあるテーマ型のファンドを少額だけ加えるなど、主軸を崩さない範囲で試していくこともできます。決めきれずに始められないままでいるより、小さく始めて後から整えていくほうが現実的な場合もあります。
一方で、銘柄を増やせばリスクがなくなるわけではありません。株式で運用する商品はいずれも元本割れの可能性があり、投資した資金が積み立てた金額を下回ることがあります。また、投資先が海外中心になる商品では為替の影響も受けます。現地通貨ベースで値上がりしていても、円高が進んだ局面では円換算での評価額が投資した金額を下回ることがあり、その逆も起こります。信託報酬などのコストも含めて、ご自身が納得して続けられる形に整えることが大切です。
なお、NISAをはじめとする各種制度の取り扱いは改正されることがあるため、非課税で保有できる金額や期間、口座の取り扱いなどは、実際に検討される際に金融機関や金融庁の公表内容など最新の情報をご確認ください。また、必要となる資金の額や時期、どこまで値動きを受け入れられるかは一人ひとり異なります。ここで紹介した考え方をご自身に当てはめる際は、商品の内容や手数料もあわせて確認したうえで、個別に専門家へご相談ください。
5. 【投資に関するご注意】
本記事は、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資には元本を割り込むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任において行われるようお願いいたします。本記事中の為替リスクの試算は、その他通貨建て資産の値動きを考慮しない単純化したモデルによる目安であり、実際の運用成果を示すものではありません。
