新NISAを始めるにあたり、「オルカン(全世界株式)とS&P500(米国株式)のどちらを選ぶべきか」と悩んでいませんか?

どちらも圧倒的な人気を誇るインデックスファンドですが、なんとなく流行りで選んでしまうと、ご自身の投資スタイルと合わず、将来の相場変動時に後悔してしまうかもしれません。

この記事では、オルカンとS&P500の短期・中期・長期にわたるリアルな運用実績を徹底比較。似ているようで異なる両者のパフォーマンスに、なぜ差が出るのかを「構成比率」や「地域分散」といった中身の違いから紐解きます。あわせて、見落とされがちな「為替リスク」が両ファンドに与える影響の大きさも試算します。

神田 翔平
30代・40代の方から「オルカン一本で大丈夫か、S&P500と迷っている」というご相談を非常によく受けます。この記事では実績データの比較に加えて、見落とされがちな為替リスクの影響を数字で試算します。

なお、本記事は過去に公開したオルカン・S&P500比較記事の実績データを最新化し、為替リスクの試算を新たに加えた記事です。引用・参照元は下記の記事および各運用会社の公表資料です。

「オルカン」or「S&P500」どちらに投資するか悩む…過去の運用実績はどちらが良かった?パフォーマンスを比較して見てみる!
「オルカン」or「S&P500」どちらに投資するか悩む…過去の運用実績はどちらが良かった?パフォーマンスを比較して見てみる!

1. 「オルカン」と「S&P500」の運用実績を徹底比較!短期・中期・長期リターンで見る違いとは

それでは早速、2026年8月31日時点における両ファンドの運用パフォーマンスを比較していきましょう。

1.1 eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の基準価額と純資産総額の動向

三菱UFJアセットマネジメントの資料によると、2026年8月31日時点における「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の運用実績は、以下のようになっています。

  • 設定日:2018年10月31日
  • 基準価額:3万8905円(前月末比+1384円)
  • 純資産総額:13兆8964億円
  • 設定来のトータルリターン:+289.1%
  • 過去3年間のリターン:+92.0%
  • 過去1年間のリターン:+33.1%
  • 過去6カ月間のリターン:+12.6%
  • 過去1カ月間のリターン:+3.7%

1.2 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の基準価額と純資産総額の動向

次に、同じく2026年8月31日時点における「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の運用実績を確認します。

  • 設定日:2018年7月3日
  • 基準価額:4万5408円(前月末比+1458円)
  • 純資産総額:12兆9779億円
  • 設定来のトータルリターン:+354.1%
  • 過去3年間のリターン:+93.1%
  • 過去1年間のリターン:+30.4%
  • 過去6カ月間のリターン:+15.2%
  • 過去1カ月間のリターン:+3.3%

オルカンとS&P500の基準価額・純資産総額の比較1/2

オルカンとS&P500の基準価額・純資産総額の比較

出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート」「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート」(いずれも2026年8月31日時点)をもとにLIMO編集部作成

1.3 【期間別】オルカンとS&P500のリターンを比較検証

短期(直近1年)のリターン比較:オルカンが優勢

まず直近1年間のリターンを見てみると、オルカンがS&P500を上回る結果となりました。

  • オルカン:+33.1%
  • S&P500:+30.4%

中期(直近3年)のリターン比較:S&P500が優勢

次に直近3年間のリターンで比較すると、今度はS&P500がオルカンを上回っています。

  • オルカン:+92.0%
  • S&P500:+93.1%

長期(設定来)のリターン比較:S&P500が優勢

両ファンドは設定日が約3カ月異なるため単純比較はできませんが、設定来のトータルリターンではS&P500がオルカンを上回る結果です。

  • オルカン:+289.1%
  • S&P500:+354.1%

※両ファンドとも運用期間が10年未満のため、本記事では設定来(約8年)を長期として扱います。

2. オルカンとS&P500、パフォーマンスに差がつく理由はその「中身」にあった

「全世界株式」と「米国株式」という名前から、全く異なる投資先をイメージするかもしれません。しかし、実は両ファンドの「中身」は非常に似ています。

では、なぜ運用実績に差が生まれるのでしょうか。その鍵は、構成銘柄の「比率」と「投資対象地域の広さ」に隠されています。

2.1 構成上位銘柄はほぼ同じ?両ファンドに共通する「成長エンジン」

最初に注目したいのが、両ファンドの組入上位銘柄です。

2026年8月31日時点で、両ファンドともに組入上位5銘柄は以下の通り共通しています。

オルカンの組入上位10銘柄(2026年8月31日時点)

  1. NVIDIA CORP(アメリカ / 情報技術):4.7%
  2. APPLE INC(アメリカ / 情報技術):4.4%
  3. MICROSOFT CORP(アメリカ / 情報技術):3.4%
  4. AMAZON.COM INC(アメリカ / 一般消費財・サービス):2.4%
  5. ALPHABET INC-CL A(アメリカ / コミュニケーション・サービス):1.8%
  6. TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾 / 情報技術):1.8%
  7. ALPHABET INC-CL C(アメリカ / コミュニケーション・サービス):1.6%
  8. BROADCOM INC(アメリカ / 情報技術):1.6%
  9. META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ / コミュニケーション・サービス):1.2%
  10. MICRON TECHNOLOGY INC(アメリカ / 情報技術):1.0%

S&P500の組入上位10銘柄(2026年8月31日時点)

  1. NVIDIA CORP アメリカ 半導体・半導体製造装置 7.9%
  2. APPLE INC アメリカ テクノロジ・ハードウェア・機器 7.0%
  3. MICROSOFT CORP アメリカ ソフトウェア・サービス 5.7%
  4. AMAZON.COM INC アメリカ 一般消費財・サービス流通・小売り 3.9%
  5. ALPHABET INC-CL A アメリカ メディア・娯楽 2.9%
  6. BROADCOM INC アメリカ 半導体・半導体製造装置 2.6%
  7. ALPHABET INC-CL C アメリカ メディア・娯楽 2.5%
  8. META PLATFORMS INC-CLASS A アメリカ メディア・娯楽 1.9%
  9. MICRON TECHNOLOGY INC アメリカ 半導体・半導体製造装置 1.6%
  10. TESLA INC アメリカ 自動車・自動車部品 1.5%

このように、世界経済をリードする巨大IT企業群、いわゆる「ビッグテック」が両ファンドの中核を担っています。つまり、どちらのファンドに投資しても、世界トップクラスの企業の成長から恩恵を受けられる点は共通しているといえるでしょう。

2.2 パフォーマンスを左右する「構成比率」の違いとは

共通の銘柄を組み入れているにもかかわらずリターンに差が生じる最大の要因は、それぞれの銘柄が占める「比率」にあります。

S&P500:米国優良企業への集中投資

S&P500は米国の主要企業約500社のみで構成されているため、NVIDIAやAppleといった上位企業の組入比率が非常に高くなります。米国のハイテク株が好調な局面(例えば過去3年間)では、この米国株への「集中度」が、高いリターンを生み出す原動力となりました。

オルカン:米国を中核としたグローバル分散投資

一方、オルカンも構成の約6割(アメリカ62.8%)は米国株ですが、残りの4割弱には日本(5.0%)や台湾、イギリス、カナダなど、欧州・新興国を含む幅広い国・地域が含まれています。そのため、NVIDIAのようなトップ銘柄の比率はS&P500と比較して低く抑えられることになります。

2.3 分散投資の効果:「米国以外」の国々がパフォーマンスの鍵を握る場面も

直近1年間のリターンでオルカンがS&P500を上回ったのは、この「米国以外の4割弱」の分散効果が発揮された結果といえます。

例えば、米国のハイテク銘柄の成長が鈍化する一方で、日本株や欧州株が相対的に好調な局面では、米国株に集中投資しているS&P500よりも、広く分散投資を行っているオルカンの方が優れたパフォーマンスを示すことがあります。

つまり、「今後最も成長するのは米国だ」と考えるならS&P500、米国を成長の中心と捉えつつも「他の国や地域が成長した際の恩恵も取りこぼしたくない」と考えるならオルカン、という見方ができるでしょう。

2.4 見落とされがちな「為替リスク」、円高が進んだらどうなる?

「構成比率」以外にもう一つ、両ファンドの違いを考えるうえで見落とされがちなポイントがあります。それが「為替リスク」です。オルカンもS&P500も円建てで購入できますが、投資先の資産そのものは米ドルなど外貨建てであるため、為替の変動が基準価額に影響します。

本文中で確認した通り、S&P500はほぼ100%が米国株、オルカンは約63%が米国株(残り4割弱はその他通貨建て資産)です。この米国株(米ドル建て資産)の比率の違いが、円高が進んだ場合の目減り幅の差につながります。

試しに、その他通貨建て資産の対円変動を考慮しない単純化したモデルで、「対ドルで円が10%上昇(円高)した」と仮定して試算してみましょう。

【前提】S&P500の米国株比率100%、オルカンの米国株比率63%として、米ドル建て資産の円換算価値が為替変動分そのまま増減すると仮定した単純化モデル

【円換算リターンへの影響】
S&P500:−10%×100% = 約−10ポイント
オルカン:−10%×63% = 約−6.3ポイント

【直近1年リターンに当てはめると】
S&P500:+30.4% − 10pt = 約+20.4%
オルカン:+33.1% − 6.3pt = 約+26.8%

この単純化モデルでは、同じ10%の円高でも、米国株比率が高いS&P500の方がオルカンよりおよそ3.7ポイント大きく目減りする計算になります。直近1年でオルカンがS&P500を上回った差(2.7ポイント)に、この為替の目減り差が上乗せされる形になるため、円高局面では両ファンドの差がさらに広がりやすいと言えます。

なお、これはその他通貨建て資産の値動きを考慮しない単純化した試算であり、実際にはユーロや新興国通貨など他の為替変動も影響するため、あくまで為替リスクの大きさをイメージするための目安としてご覧ください。円安局面では逆に、米国株比率の高いS&P500の方が押し上げ効果を受けやすくなります。

3. 長期的な視点で自分に合った選択を

最終的にオルカンとS&P500のどちらがより良い選択だったのかは、20年、30年といった長期的な視点でなければ判断できません。

今回の試算で確認した通り、両ファンドの実績差には「構成比率」に加えて「為替リスクへの感応度」も影響しています。米国株比率が高いほど、為替変動(特に円高)の影響を強く受けやすくなる点は、銘柄選びの判断材料の一つとして押さえておきたいポイントです。

重要なのは、短期的な市場の変動や為替の動きに惑わされることなく、長期的な視点で資産の成長を見守る姿勢です。

和田 直子

手軽に分散投資ができ、なおかつ低い運用コストで始められるインデックスファンド。その中でも人気を二分する「オルカン」と「S&P500」ですが、本記事での比較を通じてそれぞれの特徴が見えてきたかと思います。

両者には「世界トップクラスの企業の成長から恩恵を受けられる(組入上位銘柄はほぼ同じ)」という共通点があります。その一方で、「米国優良企業への集中投資」か、「米国を中核としたグローバルな分散投資」かという大きな違いがあり、その構成比率の差分こそが運用成果の違いを生み出しています。

実務でご相談を受けていて感じるのは、この構成比率の違いが「リターンの差」だけでなく「為替変動への感応度の差」にもそのまま直結しているという点が意外と知られていないことです。米国株比率が高い商品ほど、円高局面での目減りも大きくなりやすい。逆に円安局面では押し上げ効果も大きくなる、という表裏一体の関係にあります。

投資の世界では、こうした資産の構成比率や配分のことを「アロケーション」と呼びます。投資初心者やこれから投資を始める方こそ、リターンの大小だけでなく、このアロケーションと為替感応度の考え方をあわせて押さえておくことで、相場が変動したときの安心感へとつながるはずです。

アセットアロケーション(資産配分)の深い考え方については、LIMOを運営する株式会社モニクルリサーチ代表取締役であり、元機関投資家の泉田良輔氏が監修した記事「機関投資家は「個別株」を最後に選ぶ?プロが実践する資産配分の思考法」が非常に参考になります。プロがどのように資産配分を考えているのかを知ることができる良記事ですので、ぜひあわせて読んでいただき、あなただけの強固な資産形成の第一歩を踏み出してください。