4. 確かめるのは残高より「完済予定年齢」

残高の金額そのものより、それを何歳までに返し終える契約になっているかのほうが重要です。

4.1 借入時の年齢が後になって効いてくる

35年返済で組んだ場合、40歳で借りていれば完済は75歳です。返済期間を長くとると月々の負担は軽くなりますが、その分だけ完済年齢が後ろにずれます。

50歳代のいま、完済予定が何歳になっているか。返済予定表か金融機関のアプリで確認できます。そこが定年後にかかっているなら、収入が下がった状態で返し続ける前提の計画になっているということです。

4.2 定年後の返済原資をどこに置くか

定年後も返済が続く場合、原資は年金か、退職金か、その後の勤労収入かのいずれかになります。どれを充てるかで、準備すべきものが変わります。

退職金を充てる想定なら、その金額の見込みを勤務先の制度で確認しておく必要があります。再雇用での収入を見込むなら、その水準がいくらになるかを早めに把握しておきたいところです。

5. 繰上返済は「額」より「どちらを縮めるか」

筆者は銀行と信託銀行で、資産運用アドバイザーとして延べ1000名以上のお客様のご相談を受けてきました。50歳代の方から繰上返済のご相談を受けることは、とても多くありました。

5.1 期間短縮と返済額軽減で効果が変わる

繰上返済には、返済期間を縮める方法と、毎月の返済額を下げる方法があります。同じ金額を入れても、利息の軽減効果が大きいのは期間短縮のほうです。

ただし、毎月の負担を軽くしたい事情があるなら返済額軽減が向いています。定年後も返済が続く見込みなら、まず期間短縮で完済年齢を定年前に寄せられないかを検討する、という順序で考えていました。

5.2 手元資金を削ってまで返さない

繰上返済に回して手元の預貯金が薄くなると、急な支出のときに困ります。教育費の最後の山、親の介護、住宅の修繕。50歳代はこうした支出が重なりやすい時期です。

生活費の半年から1年分は動かせるお金として残したうえで、余った分を返済に回す。この順番を崩さないほうが、結果として安全でした。

5.3 住宅ローン控除が残っている期間は要注意

住宅ローン控除の適用期間中は、繰上返済で残高を減らすと控除額も減ります。控除で戻ってくる金額と、繰上返済で減る利息のどちらが大きいかは、残りの控除期間と金利によって変わります。

また、返済期間が10年未満になると控除の対象から外れます。期間短縮型の繰上返済をするときは、この点を確認してから実行してください。

6. この分布の分母は借入がある世帯に限られる

今回の数字を自分に当てはめるときの注意点を挙げておきます。

6.1 分母は「借入金額を回答した世帯」

平均1117万円・中央値1000万円という数字の母数は、50歳代のうち借入金があり、かつ金額を回答した228世帯です。50歳代の全世帯ではありません。

50歳代で借入金がある世帯自体が22.3%ですので、「50歳代の半数に1000万円以上のローンがある」と読むと大きく外れます。

6.2 無回答が25.4%ある

分布の表では無回答が25.4%あり、ここには残高ゼロも含まれます。金額帯ごとの割合は、この無回答を含んだうえでの数字です。

6.3 借入の目的には住宅以外も混ざる

借入金がある世帯のうち住宅関連は46.9%で、残りは生活資金や教育費などです。「借入金がある世帯=住宅ローンがある世帯」ではない点にご注意ください。

7. 50歳代のうちに確かめる3つのこと

平均と比べるより、自分の契約内容を開くほうが先です。

7.1 完済予定年齢と残りの返済回数を出す

返済予定表を見て、最後の返済が何歳のときかを確認します。定年後にかかっているなら、そこから逆算して手を打つ期間がどれだけ残っているかも分かります。

7.2 定年時点の残高を計算する

返済予定表には各回の残高が記載されています。定年を迎える月の行を見れば、そのとき残っている金額が分かります。退職金でまかなえるかどうかは、この金額と比べて判断します。

7.3 金利のタイプと見直し時期を確認する

変動金利で借りている場合、金利が上がれば返済額も変わります。見直しのルールが契約でどうなっているかを確かめておいてください。

借り換えや繰上返済を具体的に検討する段階になったら、手数料や保証料の扱いも含めて金融機関に試算を依頼するのが確実です。団体信用生命保険は完済すると効力を失いますので、その点もあわせて相談してみてください。

8. まとめにかえて

50歳代の二人以上世帯で住宅ローン残高がある世帯の平均は1117万円、中央値は1000万円でした。1000万円以上が49.6%、2000万円以上も20.2%あります。

年代別に見ると40歳代1651万円、50歳代1117万円、60歳代697万円と、10年で400万円から500万円ずつ減っていく形です。それでも60歳代には平均697万円、中央値300万円が残っていました。

50歳代は、返済計画をまだ組み替えられる時期です。完済予定年齢と定年時点の残高を出すところから始めてみてください。

参考資料

和田 直子