近年、不動産価格の高騰や借入金利の上昇により、住宅ローンの組み方にも変化が生じています。金融機関によっては50年ローンのような超長期商品も取り扱っており、返済期間を長くすることで毎月の返済負担を抑える方法も広がっています。

しかし、定年退職後も住宅ローンの残高を抱えることは、経済的・精神的にも負担が大きいものです。ここでは、年代別の住宅ローン残高平均額から、住宅ローンを組むときに考えたいポイントについて解説します。

1. 【住宅ローン】年代別の平均残高「70歳代で平均474万円超」

金融経済教育推進機構の調査によると、20歳代~70歳代の二人以上世帯における住宅ローン残高の平均額は下記のとおりです。

二人以上世帯「年代別住宅ローンの平均残高」1/2

二人以上世帯「年代別住宅ローンの平均残高」

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯)」をもとにLIMO編集部作成

  • 20歳代:919万円
  • 30歳代:1916万円
  • 40歳代:1651万円
  • 50歳代:1117万円
  • 60歳代:697万円
  • 70歳代:474万円

上記結果を見ると、年齢が上がるとともに住宅ローン残高が減少する傾向にあります。しかし、注目したいのが60歳代~70歳代の住宅ローン残高についてです。

「住宅ローンは定年退職までに返済し終えるもの」というイメージがあるかもしれませんが、実際は60歳代~70歳代でも住宅ローンの返済を続ける世帯が一定数あることが分かります。

借入額の増加に伴い、毎月の返済額を抑えるために返済期間を長期化させる人が増えていることから、今後はさらに老後に住宅ローン残高を抱える人が増えていくかもしれません。

きちんと住宅ローンを返済していくためには、借入時に考えておきたいポイントがいくつかあります。続いての章でくわしく紹介していきましょう。

2. 【住宅ローン】組むときに《考慮すべきポイント3選》元銀行員が解説

住宅ローンは数十年かけて返済を行っていきますが、きちんと返済を続けていくためには、あらゆるリスクを考慮しておく必要があります。

ここでは、特に考えておきたい具体的なポイントを3つ紹介していきましょう。

2.1 ポイント(1)収入が変動するリスクを考慮する

住宅ローン返済中に結婚や子どもの誕生、親の介護などで収入が変動することも珍しくありません。病気やケガで働けなくなってしまうこともあるでしょう。

もし今の収入が続くことを前提に住宅ローンを組むと、収入が減少したときに家計に大きな負担がかかります。きちんと返済を続けるためには、余裕を持った借入額に設定することが重要です。

また、近年ではペアローンで住宅ローンを組む世帯も珍しくありません。ペアローンは借入可能額を増やせるメリットがあるものの、どちらか一方の収入が減少したり、なくなったりするリスクには注意が必要です。

ペアローンを借り入れる際は、1人の収入でも返済していけるかをよく検討するようにしましょう。

2.2 ポイント(2)繰り上げ返済を充てにした計画を立てない

住宅ローンを組む際、「余裕があるときに繰り上げ返済すれば定年までに返し終えるだろう」「退職金で繰り上げ返済すれば大丈夫」と考える人も少なくありません。

しかし、住宅ローンの返済中は子供の教育費の増大や住宅の修繕、急な病気などまとまった支出が発生します。思うように貯蓄ができなければ繰り上げ返済も難しくなり、結果として当初の見通しよりも返済期間が長期化してしまいます。

また、繰り上げ返済に充てられるだけの退職金がもらえるとは限りません。老後資金の備えとして手元に残すことも考えると、退職金をあてにした返済計画を立てるのはリスクが高いといえるでしょう。

2.3 ポイント(3)定年退職後も働くことを前提にしない

最近では、定年退職後も働き続ける人も珍しくありません。定年後も働くことは素晴らしいことですが、それを「前提」とした返済計画を立てることはリスクを伴います。

病気やケガによって働けなくなるリスクがあるうえに、思うような再就職先が見つからずに十分な収入を得られない可能性もあるためです。定年退職後に返済ができない状況になれば、せっかく手に入れたマイホームを手放すという、悲しい結果を招く恐れもあります。

安心してセカンドライフを迎えるためにも、住宅ローンはなるべく定年退職前の安定した収入があるうちに完済する計画を立てることが大切です。

3. 【住宅ローン】月々の負担を抑える「残価設定型住宅ローン」といった新たな選択肢も

住宅価格の高騰を受けて、新たに「残価設定型住宅ローン」が登場する話も出てきています。残価設定型住宅ローンとは、将来の住宅の売却想定価格を「残価」としてあらかじめ差し引き、残りの金額を返済する仕組みです。

これにより月々の返済負担を抑えられるメリットがあり、今後の住宅ローンの新たな選択肢となるかもしれません。

50年ローンやペアローン、残価設定型住宅ローンなど、ひとくちに住宅ローンといってもさまざまな借り方があります。自分のライフプランにはどのような借り方が合っているか、よく検討するようにしましょう。

4. 【住宅ローン】長期のライフプランを立てたうえでローンの組み方を考えよう

住宅ローンの返済は、家計に大きな影響を与える支出です。近年では定年退職後も働き続ける人が増えているものの、現役時代に比べて収入が減少しやすい老後に住宅ローン残高を抱えるのは不安も大きいでしょう。

大切なのは、長期のライフプランをしっかりと立てたうえで住宅ローンの組み方を考えることです。「退職金で何とかなるだろう」「老後もそれなりの収入が得られるだろう」といった楽観的なプランではなく、「もし収入が減少したら?」「もし再就職先が見つからなかったら?」といったリスクを十分に踏まえた計画を立てるようにしてください。

参考資料

椿 慧理